ePARA CARNIVAL Fortia 座談会 心眼CUP

雪辱に向けて日々猛練習中!【Blind Fortia】-心眼CUP団体戦出場チーム紹介Part.3

去る2022年4月17日(日)、『ストリートファイターV チャンピオンエディション』で視覚情報を用いずに戦いを繰り広げるeスポーツ大会「心眼CUP powered by SYCOM」(以下、「心眼CUP」)が開催。6名の全盲プレイヤーがアツイ戦いを繰り広げた。

先天性の全盲eスポーツプレイヤーなおやの写真、ゲームのプレイ中の様子
心眼CUP個人戦を闘うBlind Fortia なおや

そして2022年5月28日(土)に開催される障害×ゲームの文化祭「ePARA CARNIVAL 2022 SPRING」では、「心眼CUP」の団体戦が開催されることが決定。前回開催された個人戦とはうってかわった新たな試みが期待されている。

5月28日START!心眼CUP powered by SYCOM 団体戦 【ストリートファイターV チャンピオンエディション】

これまで、「第2回 心眼CUP」出場チームを2チーム紹介してきたが、最後は「心眼CUP」の主催者でもあるePARAが運営強力する「Blind Fortia」のメンバーを紹介。普段の練習から個人戦での感想、団体戦に向けての意気込みをおうかがいした。

Jeniコーチのもと合同練習で腕を磨く毎日!

——言わずと知れたBlind Fortiaのメンバーですが、初めて記事を読む読者に向けて自己紹介をお願いします。

なおや選手(以下、なおや):Blind Fortiaのリーダーのなおやです。eスポーツプレイヤーでもあり、声優、ナレーターなどさまざまな活動をしています。あっ、あとFortia Twitterの中の人でもあります。使用キャラはルークです。

なおや選手イラスト

いぐぴー選手(以下、いぐぴー):いぐぴーです。普段は『フォートナイト』や『鉄拳7』をプレイしていますが、今回「心眼CUP」に参加しました。『ストリートファイターV チャンピオンエディション』では、最初キャミィを使っていましたが、いろいろ迷いに迷ってさまよった結果現在はあきらを練習中です。挑戦者の気持ちでジャンルを問わずさまざまなタイトルにチャレンジしています。

チョコタルト選手(以下、チョコタルト):チョコタルトです。昨年Blind Fortiaに参加させていただきました。格ゲーはコントローラーの使い方すらわからないという、まったくの初心者なのですが、「ゲームは未経験でも楽しめるんだよ」というのをほかの全盲の方にも伝えたくて今回「心眼CUP」に参加することになりました。

Jeniコーチ(以下、Jeni):株式会社ePARAで活動をしているJeniです。僕は進行性筋ジストロフィーの障害を持ちながらも『ストリートファイターV チャンピオンエディション』をプレイしています。もともと格闘ゲームをやっていたこともあるので、今回コーチとして各選手にアドバイスをしています。

——みなさんの使用キャラと、なぜそのキャラを選んだのかをお聞かせください。

なおや:ルークって『ストV CE』では最後に追加された新キャラなのでとりあえず使ってみようという感覚でさわってみました。実際さわってみて、コンボもわかりやすくて自分の中でハマったという感じで選びました。

いぐぴー:キャミーの時は好きな声優さんが演じていることが分かったからっていう理由だけだったけど、あきらの場合は、自分が出したいコマンドが出しやすかったのと、Vトリガー1とCAでやっぱり好きな声優が演じるキャラの声が聴けるっていうところかなあ⊡。あとはコンボの時の音のリズムがわかりやすいものが多いのも大きいかもしれません。

チョコタルト:僕の理由は単純で、英会話仲間に「チュンリーいいよ」って勧められてはじめました。チュンリーは技に勢いがあって、音がわかりやすいという部分が気に入りました。ただ、本音を言うとルークを使いたかったんですよね(笑)。個人戦ではチームメイトのなおやさんがルークを使っていたので、同キャラ対決になると分かりづらくなるのもあって、勢いのあるチュンリーにしました。団体戦のときは同キャラ対決にならないので、今からでもルークを使えるかどうか、jeniコーチと練習をしながら検討しています。基本、アニメからこういう世界が好きになったのもあるので声優さんで選びたいという気持ちがあるんですよね。ルークは声優さんがもともと好きだということ、キャラの性格も面白そうということで興味がありますね。私が当日どちらを使うか、楽しみにしていてください。

——音がわかりやすいというのはいいですね。確か、Galaxy LaboratoryのMMさんが、チュンリーの百烈脚は打撃音が多いから、ダメージ量は少なくてもびっくりしちゃうって話していましたね。

なおや:それはありますね。実際百烈脚を食らうと焦りますもん(笑)。

——なるほど。ヒット数が多いと確かにびっくりしちゃうかも。

なおや:その逆で、打撃音は少ないけど実はごっそり減っているとかもあるんですよね。ララの投げ技とか……。

——連続コンボはダメージに補正がかかりますからね。実は単発単発の方が痛かったりしますね。ちなみに、普段はどのような練習をしているのですか?

Jeni:基本的に月曜日と水曜日が練習日になっていて、参加者の使用キャラの対策をしたり、コンボの練習をしたりしています。

——練習を拝見していた時、キャラが左右入れ替わっているのが瞬時にわかっているようにも感じました。

いぐぴー:これは『ストリートファイターV チャンピオンエディション』をプレイしていて一番うれしいポイントでもあるのですが、音声がステレオなんですよね。なので、左右が入れ替わるとすぐに音でわかるようになっています。

例えば自分が右サイドにいて、ジャンプをした時に相手を飛び越えたとしても、飛んだ瞬間に相手を飛び越えているのがわかりますしね。

▲いぐぴー選手イラスト。

——相手を飛び越える瞬間の音でそこまで情報が取れるんですね! まったく意識してませんでした。

いぐぴー:『鉄拳7』は音声がモノラルなので、そういった音での立ち位置確認はできなかったので新しい発見でもありました。

なおや:そうですね。僕は入れ替わろうとしている時には、入れ替わろうとしているコマンドを入力している感覚はありますね。

——防御面の練習はどうでしょうか?

なおや:普段プレイしている『鉄拳7』以上に投げ抜けが難しいのが課題ですね。かといってガードに徹していると、みんなしっかり投げてくるんでそこはしっかり対応できるようになりたいですね。

——確かに、投げが強いゲームでもあって投げがあるからガードが崩れるといった駆け引きがありますもんね。

いぐぴー:『鉄拳7』のようにニュートラルでオートガードになるのとは違い、『ストリートファイターV チャンピオンエディション』の場合、方向キーを入れ続けていなければガードできないという部分も難しさを感じるポイントですね。例えば、いったんガードをしてから攻めに転じようという考えで行動してしてしまうと、どんどん相手との間合いが離れてしまうんですよね。考えすぎてガードに徹するのもよくないなと最近感じています。

——なるほど。ガードはかなり高難易度な課題になりそうですね。ちなみに自主練ではどのようなことに取り組んでいますか?

いぐぴー:私はひたすらコンボ練習をしています。

——いぐぴーさんはコンボの覚え方が独特だという話もされていましたが、具体的にどんなコンボ練習をしているんですか?

 

いぐぴー:ボタンを押すタイミングと、実際にヘッドホンから聞こえてくる効果音って若干ずれているので、ボタンを押すタイミングで覚えるのか、音が聞こえてくるタイミングで覚えるのかに分かれるかと思うんですが、私は聞こえてくる音のリズムでコンボを覚えています。

——コンボ練習っていうとコマンドのリズムで覚えるイメージがありますけど、音の方なんですね。

いぐぴー:そうですね。コンボ動画で音を聞いて「このリズムが出せるようにでボタンを押すタイミングを探せばいいんだ」という感覚で練習しています。コンボ精度が高くなったら対戦に挑戦もしています。

なおや:僕はコンボ練習と対戦を半々くらいで練習していますね。コンボ練習って単純にコンボを練習するという目的のほかに、今日の自分のコンディションを確認するルーティンのような効果もあるので、まずはコンボ練習からはじめていますね。

チョコタルト:僕は格闘ゲーム自体が初心者でもあるので、まずは技の練習からしっかりしていきたいと思っています。それができるようになったら、ガードを絡めた立ち回りを覚えてきたいです。

▲チョコタルト選手イラスト。

——『ストリートファイターV チャンピオンエディション』をプレイするにあたって、実際の対戦以外に苦労している点はありますか?

いぐぴー:読み上げソフトを使ってメニューを読み取っているのですが、メニューのひとつひとつが上下左右に配置されているので、特定のメニューを選ぶのが難しいですね。どの場所にどのメニューがあるのかを覚えるまでが大変でした。

▲メニューがグラフィカルになるのは晴眼者にとってはうれしいポイントだが、一定方向にメニューがないというのは全盲プレイヤーにとっては読み取りづらいメニューになってしまう。

なおや:『鉄拳7』は方向キーを入れっぱなしにしていても、必ず端の項目でで止まりますからね。メニューがループするかしないかという点も全盲プレイヤーにとっては大事なポイントになります。

個人戦での雪辱は団体戦で果たす!

——4月17日(日)に開催された「心眼CUP」の個人戦に参加してみていかがでしたか?

なおや:僕自身の結果は3位で、Blind Fortiaの中では最高位でしたが、優勝、準優勝ともにGalaxy Laboratoryの選手に取られてしまい悔しい思いをしました。ただ、会場も配信も盛り上がって大会としては大成功だと思っています。

——なおやさんは、新しいRAZERのゲームパッドでの参加でしたが、使い勝手はどうですか?

なおや:これ、めっちゃいいですよ! 十字キーの斜めが分かりやすくなりました。このコントローラーを使うまでは昇竜拳コマンドが本当に苦手でそこがウィークポイントだったんですが、新しいコントローラーで練習して前よりは昇竜拳コマンドの技(ルークのライジングアッパー)が出しやすくなりました。心眼CUP個人戦でもいくつか決めることができて良かったです。

▲個人戦に向けて新たに導入したRAZER製のゲームパッドで戦いに挑むなおや選手。

チョコタルト:僕自身オンラインでもオフラインでもこのようなeスポーツ大会に出場するのがはじめてだったのですが、高校生までパラアスリートを目指していたころの気持ちを思い出させてくれるような大会でした。

インタビューを受けたり、配信でコメントをいただいたりといろいろな人に注目されたので、初心者なりにいい緊張感の中で戦うことができました。こういう姿を通して、多くの全盲プレイヤーの心に響いてくれたらうれしいですね。

いぐぴー:私はオンラインでの参加だったのですが、もうただただ悔しいです!

——いぐぴーさん的にはどのような点が敗因だと感じていますか?

いぐぴー:もう全体的にですね。覚えたことをやろうという意識だけが空回りしてしまった結果ですね。あとこれは練習の時からそうなんですが、いざ対戦になると焦っちゃうっていうところが大会でさらに出てしまった感はありますね。

——やっぱりオンラインとはいえ大会となると緊張する?

いぐぴー:そうですね。緊張は一生の課題になるんじゃないかなあと思っています(笑)。自分の中でまだ改善策が見つけられていないので、とにかく場数を踏むしかないかな。

——団体戦に向けた新たな取り組みはありますか?

いぐぴー:個人戦まではあきらでVスキル1 Iを使っていたのですが、今はVスキル2を使った空中コンボをできるように練習中です。あとはスキのある攻撃を連打しすぎないようにとコーチからアドバイスを受けたので、そういう部分を意識するようにしています。

▲あきらのVスキル2を絡めた空中コンボ。タイミングが独特なので音を頼りにタイミングを計るのも非常に難しいとされるコンボだ。©CAPCOM CO., LTD. 2016, 2020 ALL RIGHTS RESERVED.

——コーチ的には個人戦を終えていかがでしたか?

Jeni:教えたことはみんなそれなりにできていたのでホッとしています。あとは選手のみなさんが活躍できる場を用意できたのが一番うれしいかな。

——団体戦に向けた新たなアドバイスもしていますか?

Jeni:はい。新しい攻め方や、新しいコンボルートでよりダメージの出るコンボを練習してもらっています。また、コンボを狙った攻撃をガードされてしまった場合は、反撃を受けてしまうので、そういったスキをVトリガーでキャンセルをして保険をかけるといった防御面の強化もしています。

ヒット確認と今までのコンボを伸ばすという方向性で練習に取り組んでいます。

——最後に、団体戦に向けてひとことお願いします。

なおや:Blind Fortiaのメンバーはまだまだ底上げが必要なんじゃないかと感じました。もうレベル30くらいあげないと、Galaxy Laboratoryのメンバーには勝てないかも……。

あともうひとつ。リアルスポーツだとどうしても障害ごとに分かれちゃったり、ルール自体が変わっちゃったりしますが、そういう区別がないのもeスポーツ大会の魅力だと思っています。工夫次第で視覚に障害がない人とも戦えるという点でeスポーツに興味を持っていたこともあるので、最終的には見えている人と大会で戦えたらうれしいです。個人戦では準決勝で負けたけど(笑)。

チョコタルト:もちろん個人戦で負けてしまったことは悔しいので次につなげていきたいという気持ちはあります。あとは、勝ち方じゃなくて楽しみ方をもうちょっと極めていけたらなあとも思います。チームのムードメーカーとしても盛り上げていきたいです!

▲個人戦で華麗な足さばきを魅せたチョコタルト選手

なおや:レベル30まであげるってときにムードーメーカーになるじゃだめじゃないかああ(笑)。

チョコタルト:じゃあ、ムードアッパーになろうかな(笑)。まあでも、ムードがいいとレベルも上がりやすいと思うので、どんどん盛り上げていきたいと思います。

——あはは、すでにムードメーカーになってるー(笑)。

いぐぴー:私はとにかく足を引っ張らないようにがんばりたいと思います。そのためにもサブキャラを考えないといけないのかなあ……。

——おおっ、団体戦でサブキャラの使用が可能になったとしたらそれはそれで期待大ですね!

いぐぴー:みんなが使わなそうなキャラをあえて覚えてビビらせたいな(笑)。

——ありがとうございました!

———

個人戦が開催される前から練習風系などを見て来て感じたのが、とにかく上達のスピードがはやいこと。普段の合同練習のほかにも、個人的に練習をしているということで、団体戦への期待も高まる。

いよいよ今週末には「心眼CUP」の団体戦が開催される。まだ個人戦を見ていない方はぜひ、YouTubeのアーカイブで観戦してみてほしい。全盲プレイヤーならではのアツい駆け引きはもちろん、より彼らの成長を団体戦で感じることができるはずだ。

また、各選手について別途記事が公開されている。より選手について知りたい方は、ぜひ下記の記事も読んでほしい。

心眼CUP 個人戦アーカイブ:

なおや選手手記:

いぐぴー選手手記:

チョコタルト選手インタビュー:

Jeniコーチ手記:

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いのかわゆう

ゲーム好きが高じて19歳でゲーム系の出版社に就職。
その後、フリーランスでライター、編集、ディレクターなど多岐にわたり活動している。
最近はまっているゲームは『VALORANT』。

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