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イベントレポート

バリアを超え、旅立つ仲間たちと過ごした冬の物語 − 立修館eスポーツ部×NAOYA 交流会レポート

皆さん、こんにちは。全盲のeスポーツプレイヤー、NAOYAです。
あっという間に3月。いかがお過ごしでしょうか。

卒業シーズンの今回は、2023年11月から2024年2月にかけて行われた、立修館高等専修学校×ブラインドeスポーツプレイヤー交流会をレポートします。

初回については、立修館高等専修学校eスポーツ部顧問の板垣先生が寄稿してくださったこちらをご覧ください。
本気の戦いで生まれた「相手への敬意」~立修館eスポーツ部×NAOYA 交流会レポート

立修館高等専修学校eスポーツ部の活動の様子。7人ほどの部員がそれぞれPCに向かって練習している。

初回~距離の探り合いから始まる

開催日:2023年11月20日(月)

高いハードルを乗り越えて実現へ

板垣先生から「ストリートファイター6で部員と対戦してほしい」との連絡をいただいたのが、2023年9月のこと。格闘ゲームは高額で、学生のeスポーツ大会での採用例がほとんどないため、部が扱うタイトルとして導入することは高いハードルだったようです。その中で一人の部員が「ストリートファイター6」を購入したと聞き、私は生徒さんたちの高い熱量に感化され、企画を進めることにしました。

「距離の探り合い」から「本気の戦い」へ

迎えた当日。その数ヶ月前にフォートナイトの交流会をおこなっていたのですが、ジャンルが違うため立修館の参加部員のほとんどが入れ替わっての開催でした。

今回の交流会は、すべての回を通して、メンバーが自己紹介をする時間を設けずに、対戦に入るプレイヤーが一言話してから戦いに入る形式をとりました。そのためか、最初はゲーム上でも雑談でもお互いに距離の探り合いでした。「本気で倒しに行っていいのか?」みたいな感覚です。
ただ、回を追うごとにお互いの実力が見え始め、場も温まってきて、徐々にプレイに自由さがプラスされた対戦になっていったように感じました。

交流会の雰囲気を一気に変えたMさんの登場

対戦が続くなか、3年生のMさんの一言で、交流会の雰囲気が一気に変わりました。きっかけは、私に「どうやって分かるんですか?」と聞いてくれたこと。その質問で、このままではサウンドアクセシビリティのことが伝わらないということに気づかされたのです。

そこで、サウンドアクセシビリティを少し説明したあとで、自分の画面をDiscord上に画面共有しました。そうすれば、自分の設定のゲーム音を伝えることができるので、どのような音を聞いてプレイしているかをしっかり理解してもらえるはずです。
作戦は成功。サウンドアクセシビリティの良さが伝わったようで、「こんな機能を自分も作ってみたい」という部員のコメントが稲垣先生のレポートにあり、嬉しく思いました。

それ以外にも、Mさんや一部のメンバーが私と部員のハブ役を務めてくれました。雰囲気づくりをしてくれた部員の皆さんには、感謝しかありません。

また、Mさんはマリーザ使いで、初回はドライブパリィを多様してくるタイプでした。マリーザはアーマー性能を駆使して攻撃を受け止めながら強烈なお仕置きをする先鋒を得意としているので、ドライブパリィをする感覚でアーマー技を使われると非常に手ごわい相手になるなという印象がありました。その予想は数ヶ月後にしっかり回収されることになります。

第1回交流会寺の部員たちの様子。真剣に画面に向き合う生徒5人。

2回目~eスポーツ部員たちのプライドをかけた敬意ある逆襲

開催日:2024年1月29日(月)

逆襲、最終決戦へとつなぐ秘策

2023年の年末、「今の3年生が卒業する前にもう一度生徒たちと対戦してほしい」と、板垣先生からの申し出がありました。私も「ぜひお願いします」と快諾したのですが、一つだけ予想していたことがありました。
それは「2回目は彼らもうまくなっているし、しっかり対策して臨んでくるのではないか」ということです。勝てなくなると自分のすごさが消え、交流会としてうまく成立しなくなるのではないかという不安がなかったわけではありません。

であれば、ということで、先に2回目と3回目の交流会までスケジュールを設定し、3回目を「最終決戦」という位置づけにするかたちで板垣先生にご了承いただきました。ノリで「最終決戦」といったら面白かったらしく、板垣先生が部員にも早めに伝えていたんだとか。結果的に、「最終決戦」戦略は素晴らしく良い効果をもたらすことになります。

開始3分で逆襲を実感させたO君との出会い

2回目の交流会当日。「まずは様子を見よう」と思って臨んでいた私に対し、はるかにパワーアップしたケン使いのO君が登場。なすすべなく敗北。「本当に対策されている…」と思うには十分な初戦でした。
あとから聞くと、O君には同じケン使いでマスターまで上がった師匠がいるらしく、その方の手ほどきを受けて強くなったとのこと。予想を大きく上回るやりこみようでした。
その日の最後には、下校時間の関係で「みんな残り1試合ずつ」なのに、私からO君に「もう1試合お願いします」と言ったほどです。結局、彼には0勝4敗ほどで、一度も勝つことができませんでした。

そして、やはりMさんも

もちろん忘れておりません。Mさんも、アーマーを駆使するマリーザ使いとして再登場しました。私の予想は的中、「やはり手ごわい…」。もともと私が使うエドモンド本田はアーマーを得意とするマリーザやザンギエフに対して相性が良くありません。私には相手のモーションが見えないので、難易度がさらに跳ね上がります。
この時はなんとかMさんを振り切ったものの、「これに加えて超必殺技を使えるようになったらもう手がつけられなくなる」と確信しました。

最終決戦~格闘ゲームで語った先に越えられたバリアがある

開催日:2024年2月19日(月)

最後までeスポーツで語りあうことを選んだ

来る最終決戦を前に、私は考えていました。
「『目が見えないのに格ゲーが強い自分』ではもういられない。でも、やるからにはお互いに何かが残る回にしたい。」

最終日は今までとは違って対戦ではなく会話中心の進め方にすることも考えました。そして、立修館eスポーツ部の部員たちには自分以外のブラインドeスポーツプレイヤーとも対戦してほしいと思い、実里さんとフミ武さんにも参加してもらうことにしました。
その一方で、eスポーツでつながった縁だから、eスポーツで語り続けるべきだという気持ちもありました。だからこそ、少なくとも前回圧倒的にやられたO君へリベンジするのを私の大きな目標にして最終決戦に臨むことを決めました。

リベンジ&リベンジ~O君との戦いは終わらない

最終決戦当日。メンバーが増え、部員のほとんどがオンラインであったこともあり、数試合が同時進行するという、本当にゲームセンターのような雰囲気で始まりました。フミ武さんの参戦により、ザンギエフが二人もいたのがなかなか印象的です。また、今回は初めて勝利条件を「2本先取」にしました。対戦が同時進行できるようになったので余裕が生まれたためです。

さて、気になるO君との対戦ですが、4試合やって2勝2敗でした。(2本先取の2勝2敗なので、とった試合数は同点じゃないかもしれませんが。)
私が2勝1敗とリードするなか、最後の最後にO君からリベンジされました。どうやら、戦いはまだ終わらないようです。

そこにあったのは、お互いに「本気で相手に勝ちたい」という純粋なeスポーツプレイヤー魂でした。これは、一度の交流会や体験イベントでは芽生えにくい感情です。3回の交流会を経ていたからこそ、私とO君はライバルのように熱く戦い続けることができたのでしょう。交流会を重ねて本当に良かったと思いました。

愛と情熱の間~Mさんとの最終決戦にふさわしいダブルKO

もちろん、この日はMさんとの最終決戦の日でもありました。そして、またしても私の予想を裏切らない展開に。Mさんが、しっかり超必殺技を使っている…。結果、最後の1試合を除いてMさんに勝つことはできませんでした。

最後の1試合も2本先取で私が2勝1敗、最後は私が1ラウンドとった状態でのダブルKOだったので、本当に紙一重な展開でした。それがまた、この交流会を支え続けてくれたMさんとの最終戦にふさわしい展開だったと思います。

交流会時の2人の生徒の様子。

ゲームはバリアを超えるよ、これからも

こうして、名残惜しい気持ちのなか、3回にわたって行われた交流会は幕を閉じました。
立修館高等専修学校には福祉科があります。部員のうち何名が福祉科に在籍しているかは分からないのですが、ここまでバリアを超えることができたのは、必然だったのかもしれません。
ただ、バリアを超える手段としてゲームを最大限に活用できたことが何より嬉しいです。

熱い戦いを共に演じてくれた仲間たちへ~NAOYAからのメッセージ

今回、私と何度も対戦していただき、ありがとうございました。最初は「目が見えないeスポーツプレイヤーってどんな感じなんだろう。どう接したらいいんだろう」と、戸惑う気持ちがあったことと思います。それは私も同じです。「どうやったら仲良くなれるかな?どんなコミュニケーションをとれば良い交流会になるかな?」と必死に考えていました。それこそ、波動拳や頭突きを決めながら考えていました(笑)。
結局、飾らずにそれぞれが持っているものを最大限に出すかたちで最高の時間にすることができました。

皆さんがこれからeスポーツやゲームの世界で活動するのかどうかは分かりませんが、もし街中やオンライン対戦、メタバース空間で視覚障害のある人を見かけた際は、今回の経験を生かして、まずは自然に話しかけてみてほしいです。それがまた良い出会いにつながるかもしれません。
ゲームを通じてバリアを超えたこの経験が、皆さんのこれからの糧になりますように。

マスクをした部員7人がカメラ目線で写っている。

謝辞

今回、交流の機会をいただき、お忙しい中何度も日程調整をしてくださった立修館高等専修学校eスポーツ部顧問の板垣先生に感謝を申し上げます。

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北村 直也(きたむら なおや)

声優、エンジニア、大の野球好き。
不可能を可能にする男というキャッチコピーのもと、誰もなしえなかった「視覚障害を持つ声優」に挑戦中。その状況を日々SNSで発信しているのだが、フォロワーから「野球の人」という印象が持たれるほど、野球ツイートも熱い!さあ、野球アニメに出よう。
Twitter:@noy_0207

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