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SDGs 障害とゲーム

バリアフリーeスポーツはなぜおもしろいのか?障害者スポーツコーチの視点

はじめまして。藁科侑希(わらしなゆうき)と申します。私は現在、東京経済大学で教員(特任講師)として、教育・研究現場にて活動中です。全学共通教育センターに所属し、主に健康・スポーツに関する座学や実習、体育実技を担当しています。専門は「スポーツ医学」です。いわゆるケガをしたらどうするか・ケガをしないためにどんな予防やトレーニングをするか、を扱う分野です。

また、障害者スポーツの現場でもトレーナーやコーチとして活動していて、パラバドミントン競技を専門にパーソナルコーチをしております。選手や学びたい人にとって、最良のアドバイザーであることをモットーに、肩書きにとらわれない現場目線のサポートを心がけています。

筆者はTwitterInstagramでトレーニング動画を投稿しています

今回はありがたいことに、ePARAへの連載をする機会をいただきました。障害者スポーツに関わるサポーターとして、そして教育者・研究者の視点から、「ゲーム×障害×スポーツ」の魅力について考えていきたいと思います。

まずは、「ゲームっ子」だった自身が衝撃を受けたePARAの記事を振り返ることから。

執筆するきっかけ~ePARAとの出会い~

ePARAの記事はとてもおもしろい

ePARAの読者の方はご存知でしょうが、ePARAの記事はとても個性的です。どの記事も、チャレンジ精神に溢れ、自分を受け入れた上で目の前のことに全力で挑戦しています。

そもそもは、知人からePARAの話題を聞いた際に受けたこんな質問から興味を持ちました。

手を使わないでぷよぷよやれると思う?
目が見えなくてもパワプロやってる人がいるよ
全盲で「マインクラフト」に挑戦している人もいるよ
乙武さんがぷよぷよ対決してるから見てみて

まず真っ先に思ったのは、「どうやって?」です。どれも方法が全く思いつきませんでした。

  • 指でコントローラーを操作しないで、どうやって操作するのだろう。
  • ぷよぷよという時間制限がある中、膨大な視覚情報を処理するゲームで、手を使わないとすると他の部位でどれだけ精密な動きをするのだろう。
  • 目が見えなくとも、パワプロやマインクラフトをやるのにはどうするのだろう。
  • 乙武さんがぷよぷよ?五体満足の健常者である自分からは想像がつかない…

こういった衝撃を受け、ePARAの記事を読ませていただくと、「なるほど!」「すごい!」と感心するとともに、ここは創意工夫の挑戦をする先駆者がひしめいている場所なんだと、この世界に一気に引き込まれました。

特に、先日行われた第1回 ePARA CHAMPIONSHIP 後半戦 で、盲目の方2名が「鉄拳7」を戦っている様子はとても興味深かったです。仮面少女の猪狩さんのコメントにもあったように、「どうやってやっているのか?」という素直な疑問に共感しました。なにより盲目の選手がやっているとは思えないスピーディな展開は圧巻でした。オンラインでコミュニケーションをとっているサポーターの方との連携もさることながら、選手は耳から入る情報を選別・判断する能力が高いのだろうということもうかがえました。

また、ePARAの早川公先生の記事「障害とゲームとSDGs」もとても興味深かったこともきっかけです。文化人類学の視点から障害・ゲーム・SDGsと現代社会を解説している内容に、一見関わり合いのない要素がこんなにも繋がっているのかと感銘し、何度も読ませていただきました。自分にはない視点での気づきを得た感覚がありました。そして、私も早川さんと同じくゲームは新しい世界へ連れて行ってくれる魔法の端末だと思っていた1人です。

ゲームとの関わり

私はゲームをはじめ、アニメ・漫画・ラノベなど多くのものにはまってきました。今もアニメを見ない日はないくらいですし、ゲームは自分の今の根本を作ってくれたものと思っています。

スーパーファミコンでは、スーパーマリオ(ワールド・RPG・コレクション)やドラクエⅢ、ゴエモンシリーズ、星のカービィシリーズ、マニアックなところで言えばパネルでポンをひたすらやっていました。

スーパーファミコン用ソフト、パネルでポンの画像
「パネルでポン」画像は任天堂より 「パネルでポン」紹介動画

ゲームボーイでは、ポケモン(赤・緑から青・黄も入手しました)にはどハマりしていました。そこから、Nintendo 64のスマブラやプレステのFFT(ファイナルファンタジータクティクス)、聖剣伝説LOM(レジェンドオブマナ)、テイルズオブエターニアなど、様々なゲームにのめり込みました。

Nintendo 64専用ソフト聖剣伝説LOM(レジェンドオブマナ)のプレイ画像
「聖剣伝説 レジェンド オブ マナ」画像はINSIDEより

※記事には直接関係ないですが、shu3というゲーム実況者の方が聖剣伝説LOMのやり込み動画をシリーズでアップしています。めちゃくちゃ面白いのでぜひ。

少し前までは、ポケモンGOのために毎日散歩を1-2時間はしていた重課金勢でもありました。

障害者スポーツは「個性」と「しくみ」が魅力的

障害者スポーツとの出逢いでの第一印象は「尊敬」、そして「応援したい」へ

私が障害を持つ方と初めて関わり始めたのは、2015年に筑波大学の教員として着任した時でした。バドミントン部の後輩にあたる選手がパラアスリートだったことがきっかけで、サポートをし始めました。サポート活動を進める中で、いつも感じていたのは選手、そして関係者の方々への心からの「尊敬」の念です。生まれながらに障害を持っている方、事故などで障害を有することになった方等、理由は人それぞれです。その中で、私が関わった障害を有する方々は国内・国外を問わず、皆オープンでフランク、話していてこちらがものすごく楽しくなるようなパーソナリティをお持ちの方が多いです。また、ご自身のことを全て語っていただく機会にも恵まれ、事故の詳細や事故後のお話、リハビリの過程など様々なエピソードを共有いただきました。

「三途の川を見た。」
「自分が寝ている姿を見た。」

という方もいました。
そのような方々が、スポーツの世界でアスリートとして活動するために、並大抵ではない身体的・精神的な課題をクリアしてきているのです。だから、彼ら・彼女らの笑顔はより人の心を惹きつけもするのかなと思ってたりもしています。

どん底で、自分の中の「普通」が変わってしまった、と絶望した背景を持ちながらも、目の前で明るく競技やご自身のことを語っています。自分と周りの「普通」のギャップに苦しむときはあれど、前に進んでいます。そのひたむきで前向きな姿に敬意を表し、惚れ込んで、サポートをさせていただきたい、という思いを持ちました。

そして、アスリートたちの周りには同じ想いを持った方が大勢いました。その温かさに触れたことからも、さらにこの世界で活動を続けたい、ともに歩みたい、と思うようになっていきました。

障害者スポーツは「個性」のぶつかり合いが見られる

「障害者スポーツ自体の魅力はなんですか?」と問われることは少なくありません。私はいつも『「個性」のぶつかり合いがおもしろい』と答えています。障害者スポーツでは、必ず"クラス分け"が存在しています。「障害」と一口にいっても、その種類は様々です。程度も人によって異なります。そんな中でアスリート同士がスポーツという共通の競技の中で公平に競うためには何が必要か。それが、"クラス分け"や"ポイント制度"です。

障害者スポーツの醍醐味でもありますが、フェアネスを貫くよう、同じ種類、同程度の選手同士が競い合えるような仕組みが整っています。もちろん、そもそも競技ごとで用具やルールで様々な工夫がなされていることも特徴の一つです。進化を遂げている用具が競技パフォーマンスに大きく影響することもあります。特に車いす競技や義足を用いる競技では、技術革新とともにその戦略性が時々刻々と変化します。それにどう対応していくのか、を考えることもとても楽しい挑戦だと思っています。

また、既存の競技ルールをそのまま適応すると、障害ゆえにできないことがあったり、面白さがなくなってしまうこともあります。その中で、ルールを少し変えることによって競技性を担保して行えるようにもなっています。

このように、競技ごとの中にも独自性があって、その「個性」のぶつかり合いを感じることができることがとても魅力的と感じます。

「パラスポーツ」画像はスポーツ庁より

バリアフリーeスポーツのおもしろさを一緒に追求したい

今回この記事を書かせていただくお話も、私がゲーム好きであり、障害者スポーツに関わらせていただいている経験があることからいただきました。

バリアフリーeスポーツは、
「正解や前例のない中でどう挑戦するのか」
「どう個性を束ねながら・活かしながらチームワークを発揮するのか」
「それぞれのルールの中の最大限できることは何か」
という、障害者スポーツでの魅力をとても反映していると思います。とても興味深いですし、不可能だと思い込んだことを可能にする知恵や発想に面白さをものすごく感じています。

なにより、ゲーム自体を余すことなく全力で楽しもうとする「PLAY」の原点を感じます。

繰り返しにはなりますが、「第1回 ePARA CHAMPIONSHIP 公式生放送 後半戦「鉄拳7」(Steam版)」、圧倒されました。この戦いの様子から、不可能なことはない、という心意気とその挑戦心を目の当たりにした気がします。

今後も連載をさせていただきますが、バリアフリーeスポーツにおける挑戦やチームワーク、さらにスポーツとして「勝つ」ことに向けた戦略性や過程の重要性、eスポーツの教育的な意義や価値などについても、より深く掘り下げて記事を書かせていただこうと思っております。引き続き、よろしくお願いいたします。

バリアフリーeスポーツはなぜおもしろいのか?イメージイラスト デザイナー茶鏡
Twitter:@skgm26
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藁科侑希

東京経済大学の教員。障がい者スポーツコーチと障がい者スポーツトレーナーの資格を有し、パラバドミントン競技を専門にしたパーソナルコーチを務めている。

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