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障害とゲーム

聞こえない・聞こえにくくても楽しむこと~”ありのままの自分”をモットーに表現者”かのけん”が描く未来図とは【後編】

みなさんこんにちは、再び納豆が大好物な「かのけん」です。前編ではかのけんが何者か、また僕の聴覚とアイデンティティについて語ってきました。後編ではやっと本題のゲームとの関わりと、ePARAで実現したい未来についてお伝えします!

聴覚障害者?ろう者?難聴?聞こえない・聞こえにくいって? ~”ありのままの自分”をモットーに表現者”かのけん”が描く未来図とは【前編】

※2022年1月追記 2021年12月31日に放送された NHK「第72回紅白歌合戦」内で、かのけんは「マツケンサンバⅡ」でダンサーのひとりとして出演しました。

聴覚障害かのけんとゲーム

私とゲームの出会いは、実は幼少時の頃なんですね。というのも父親が大がつくほどのゲーム好きで、色んな機種を買っていたんですよ。カセットも本棚数段にズラーっと並べてあったほど多くのゲームカセットもありまして。
私が幼少時の頃はプレイステーション初代でしょうか、「爆走!デコトラ伝説〜男一匹夢街道〜」「スーパードンキーコング3 謎のクレミス島(スーファミ)」この辺りを当時よくプレイしてたのを今でも覚えてます。デコトラのクラクションがボイスで「どかんかボケェ!!!」をボタン連打して連発してました...

スーパーファミコン「キングコング3謎のクレミス島」のソフトのジャケット写真。
プレイステーション「爆走!デコトラ伝説〜男一匹夢街道〜」のジャケット写真。

スプラトゥーンとの出会い

もちろん他にもたくさんゲームはプレイしているのですが、ここしばらくずっとやっているのが「スプラトゥーン」なんですね。1が発売されたのは大学生時代の頃でしょうか。私の周りにやっている人が何人もいたので「それ何ー?」と体験したのがきっかけですね。

これまでにシューティング系のゲームはほとんど経験がなく、当時ちょっと種類は違えど(FPS/TPS)グラセフや荒野行動などが流行っていたのですが、なんというかすごくリアルすぎて触れてなかったんですよね(伝われ〜)。見るのは好きだったのですが、自分でプレイするにはこう身構えちゃうというか。だからこそ可愛いキャラクターが撃ち合いをする、キルをとる、弾はインクなどといったこれらの新鮮さ・目新しさのある要素に惹かれてどハマりしてしまったんです。とても親しみやすかったといいますか。

スプラトゥーンのプレイヤー情報画面。ガチエリア、ガチヤグラ、ガチオコバトル、ガチアサリの全てX達成。ランクは92。
オールX達成済みのかのけん

                                

ゲームの中では特にーー

さて、耳の聞こえない・聞こえにくい私が、プレー中に不便に感じることがあるか?と聞かれると、実はあんまりないんですよね
もちろん補聴器をして音を(BGMなど)楽しみながらプレイする時もあれば、補聴器をせずに無音の状態でプレイすることもよくあります。無音の状態だと○○の音(例:ボム、潜伏音)が聞こえないから不利なのでは?と思うかもしれませんが、確かに「もし聞こえてたらこれ対処できてたなぁ」と思うことはあっても「じゃあやーらない!」とはならないんですよね。

スプラトゥーンは、これはどのシューティング系ゲームおいても必要不可欠ともいえる「エイム力」そして「立ち回り」が重要となってくるゲームです。聞こえない・聞こえにくい私は特に後者は大事にしていて、「立ち回り」さえしっかり磨いていれば、予測などによって不意死(デス)は抑えることができるのです。耳では聞こえなくとも、目で状況をしっかり把握してカバーをすることができます。

立ち回りで相手の不意をつき1撃オールキルを決めたようす
立ち回りで相手の不意をつき1撃オールキルを決めたようす

でも実はひとつあるんです

耳の聞こえない・聞こえにくい私にとって実は全く歯が立たない、あるいは苦戦する試合があるんです。それはボイチャで連携力のあるチーム。
スプラトゥーンには色んな部門(コース)みたいなものがありまして、それがナワバリバトル、ガチマッチ、リーグマッチ、プライベートマッチの4つなんですね。エンジョイで楽しむ分には全然構わないのですが、勝つのが難しいケースもあります。

例えばスプラトゥーン公式が毎月末に開催するツキイチ(リーグマッチ)でランキングインを目指すとして、いざ意気込んでプレイをしたとします。
リーグマッチにはリーグパワーなるものがあり1試合勝つごとにポイントが上がっていくんですね。この数値はいわゆるチームの強さを表しているようなもので、勝てば勝つほど数値が高くなり、近いパワー帯との試合を繰り返しながらパワーを上げていくんですよ。順調に勝ちを重ねてリーグパワーも少しずつ上がっていくところまでは良いとして、パワー帯が高くなってきたところで敵の圧倒的カバー力でゴリ押される試合がだんだん増えてきます。私たちはこのようなパーフェクトなチームに出会うと「きっとあれは通話だね。」と口にすることがあります。

だからといって決して「聞こえない・聞こえにくいから負けた」となるわけではないのですが、ただただ連携力の高さに通話プレイの凄さといいますか、この部分においては純粋に敵わないなぁと思うこともしばしばあります。

試合上だけではないーー

ガチマッチでなかなか勝てない、あるいは集中力が切れた、得意なステージではない、などといった際には、息抜きがてら「リーグマッチ」によく行くものです。友人や身内のグループなどがあれば気にすることなくいつでもメンバーの募集を呼びかけることができますが、タイミング悪く参加者が集まらなかった時に、Twitterなどで募集案件を眺めることがあります。大体が

▷リグマ募集

▷ウデマエ◯◯

▷通話 discord(聞き専×)

このように通話を前提とした募集なんですね。聞こえない・聞こえにくいユーザーからすれば、この部分に敷居の高さを感じて気軽に参加できないといったことがあります。(聴力が)軽〜中程度の方々で少し通話ができる方がいたとしても、口元が見えない、一気に色んな人が喋るガヤガヤした状態だとうまく聴き取れない、というように満足のいくコミュニケーションが取れないといったこともあるのではないでしょうか。

もちろん全てがすべてこのような募集案件ではなく「通話なし」で募集する方々もいらっしゃるのですが、「障害あるなし関係なく誰とでも楽しくプレーできたらいいのになぁ」と学生の頃から何度も思うことがありました。

私自身は経験がないのですが、以前にTwitterで「聞こえないあんたがやるとチーム負担になるからとっととこのゲーム(Apex)止めろ」といった旨の、心ない言葉を浴びせられた聞こえない・聞こえにくいプレーヤーの嘆きつぶやきを見て、胸を傷めたこともありました。こういう方はごく一部だとは思いますが、その方のコメント欄を見て両論のコメントが多くあって、なんとも言えない気持ちになったのを今でもはっきりと覚えています。
確かにランキングインを目指しているプレーヤー、いわゆるガチ(本気)でやっている方々の言い分もわからないとは言いませんが、誰にだってゲームを平等に楽しむ権利はあります

話はスプラトゥーンに戻りますが、現在公式によるフェスティバル(イベント)はもう終了していますが、ユーザが自主的に運営し開催するイベントや試合は現在でもまだまだあります。またそれだけでなく同じ実力帯の仲間を募集しプライベートマッチ上で試合をする「対抗戦」といったものもあります。やはりこちらも通話を介して試合・交流をするものが主流であり、より高みを目指したい聞こえない・聞こえにくいプレーヤーにとっては敷居が高いものです

「みんなが楽しめる」ためにはどんなことが必要で、どんな環境整備が必要なのか、ゲーマーの友人と話し合ったり、日々ふと考えたりすることがよくあります。

だからこそ「バリアフリーeスポーツ ePARA2020」に携わった方々の関連記事を見た際に、とてもうずうずしている自分がそこにいました

ePARA×かのけん 今後の目標

「年齢・性別・時間・場所・障害の有無を問わず参加できる環境の下で行われるeスポーツ」

このePARAが掲げる「バリアフリーeスポーツ」の理念ですが、まさに理想の社会像を表していて深く感銘を受けました

私は前編で「聞こえない・聞こえにくいことは障害じゃない」と述べました。しかしながらこの社会で生きていくにあたって「障害は事実」だと思わされることもしばしばです。
それはどうしてなのでしょうか?どうしてだと思いますか?少しだけでいい、「なんでだろう?」そう考えてくれるきっかけとなるよう、当事者ならではの視点からの発信をたくさんしていきたいです。

この世界はとても広いのに自分と全く同じ人間はいません。....い、いませんよね?

ひとりひとりがみんな違う人間なのですから、その人の魅力もまた違って当然なのです。

でもそんな魅力に溢れている人が、何らかのきっかけで、それが物理的なことなのか、精神的なものなのかはわからないけれども、何かをあきらめたとしたらすごく悲しくないでしょうか。

「◯◯ができない=障害」ではなくて、そこに起こりうるもの、原因こそが「障害」だと思うんですよね。途轍もなく大きなことだとは思うのですが私は「障害」というそのものの概念を変えていきたいと思っています。

だからこそ様々なことを発信していくと同時に、とてもありがたいことにこのePARAに携わることができたのですから、障がい者eスポーツ・バリアフリーeスポーツの価値についても、はたしてそれは何なのかをしっかりと考え、その価値について積極的に発信していけたらと思っております。

そしてそれがいつしか誰かの自信や勇気になり、新たな一歩を踏みだすきっかけに繋げられたらと思っています。

ライター:かのけん
先天性感音性難聴のプロダンサー。東京パラリンピック2020開閉会式にも出演。好きなゲームはスプラトゥーン。
持ち前の明るさと積極性で私立ePARA学園でも色々なタイトルに挑戦中。

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