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ePARA大会

全盲でも「鉄拳7」で戦いたい! Team-ePARAの新たな挑戦

11月22日、「第1回ePARA CHAMPIONSHIP ver:Aim High」の後半戦、格闘ゲーム部門が開催されます。今回は格闘ゲーム「鉄拳7」を用いた3on3形式で4チームによる総当たりの戦いが繰り広げられます。

Team-ePARAは10月17日開催のチームFPS/TPS部門で、4チーム中ランキング2位。ボイスチャットによる情報交換が重要なCALL OF DUTY: MOBILEに聴覚障害を持つくらげ選手が挑戦し、チームで練り上げた作戦を遂行、2勝を挙げることができました。(関連記事:聴覚障害者くらげのePARA CHAMPIONSHIP参戦記 ~マンモス狩りの追憶

そして11月22日の格闘ゲーム部門。Team-ePARAからは、視覚障害を持つ2名がプレイヤーとして挑戦。見えなくても戦える方法を研究し、強豪相手に全力で立ち向かいます。

Team-ePARA(チーム・イーパラ)のイメージ画像。個性あふれる12人が立ちはだかる影に向かって挑もうとしている様子。ハンディを超えて!、いろいろだから、楽しい。の文字。

鉄拳7とは?

鉄拳7はバンダイナムコエンターテインメントが発売する、3D対戦格闘ゲーム。鉄拳シリーズは多彩なキャラと華麗なグラフィック、見ている人までも魅了するコンボが特徴の、人気ゲームシリーズです。ルーツはゲームセンターなどにあるアーケードゲームですが、現在は家庭用ゲーム機やPC版も発売されています。今回の大会では、PC版であるSTEAM(スチーム)版の鉄拳7を採用しています。

鉄拳7のロゴ画像。

挑戦の理由:ブラインドeスポーツの可能性を広げたい!

今回、この挑戦を行うのには理由があります。それはブラインドeスポーツの可能性を広げ、世に知ってもらうことです。

ブラインドeスポーツとは

ePARAでは、全盲または弱視の方がeスポーツに取り組むこと全般を総称して「ブラインドeスポーツ」と呼んでいます。

多くの方は、ゲームには視覚の情報が必須と思われるでしょう。一方、先天性の全盲の方は、これまでゲーム画面を目で見たことはありません。しかし「目が見えなければゲームを楽しめない」のでしょうか。ePARAは、視覚がなくても聴覚と想像力を駆使し、プレイするための努力を続けることで、豊かなゲーム体験を得ることができると考えています。ePARAは、視覚の「バリア」を越えるべく、視覚障害の特性とゲーム特性に合わせた対処法を研究。障害の有無に関係なくゲームを楽しみ、eスポーツに挑戦できる形を探求しています。

視覚障害者とゲーム

これまでePARAでは、視覚障害とゲームの関わりをテーマに、座談会や当事者の記事でご紹介してきました。ゲーム実況を楽しんでいる方や、家族との関わりの中でゲームを楽しむ方など、視覚障害を持つ方々のゲームとの向き合い方は人それぞれでした。座談会では視覚がなくても、ゲームは楽しいものであるということを皆さん嬉しそうに語ってくれています。

関連記事:ブラインドeスポーツ座談会の記事一覧

今回参戦する2人の視覚障害ファイター

今回、Team-ePARAから参戦する、視覚障害を持つ2名のプレイヤーをご紹介します。2人とも先天性の視覚障害を持っています。

直也:全盲の声優・ナレーター、エンジニア。大の野球好き。(盲目の戦士)

関連記事:全盲の僕でもパワプロをやりたくて試したこと

いぐぴー:全盲のNHKのど自慢元グランドチャンピオン。(盲目の女格闘家)

関連記事:全盲いぐぴーのチャレンジ!MINECRAFT体験版を振り返る
関連記事:全盲でもeスポーツ大会を楽しむには?いぐぴーのPUBG Mobile観戦録

ブラインドeスポーツは「バリア」がたくさん

Team-ePARAにとって、ブラインドeスポーツの初披露の場となるePARA CHAMPIONSHIP ver.Aim-High。大会出場にあたり、視覚障害の二人が参戦するまでには、多くの「バリア」がありました。以下にその「バリア」の一部をご紹介します。

 ブラインドeスポーツ事件簿 

  • 読み上げソフトが負荷をかけてしまい、ゲームが不安定に…
  • そもそもゲーム画面では読み上げソフトは使えない…
  • STEAMのインストール中に突然ロシア語になって大パニック…
  • ゲームのメニュー内、モード選択で迷子に…
  • 左右が入れ替わったのがわからずコマンドが明後日の方向に…
  • 移動方向を間違えて大暴走…
  • 技が決まったかどうかわからない…
  • 対戦相手が誰なのか、ステージがどこなのか、バトル開始までわからない…
  • 自分が倒れていることに気づかず、起き上がらない…
  • 夢中になるうちコントローラーのボタンがわからなくなる…
  • コントローラーの電池交換に悪戦苦闘…

まともにプレイできるまでに至らず、暗中模索な状態が続きました。大会のプラットフォームとして使用されるSTEAMや鉄拳7のインストールの段階から予期しない問題も多かったです。しかし個人での解決だけでなく、サポーターが遠隔で支援をしながら少しずつ解決していきました。(後日、別の記事でご紹介します)

ゲーム時に読み上げソフトを使うということ

視覚障害の方がPCやスマートフォンを使うときは、音声読み上げ機能を使い、画面の文字を音声化して情報を得ています。このソフトが場合によってはPCに負荷をかけることもあり、ゲームのプレイに支障をきたす可能性も考えられます。

そもそも、鉄拳7ではゲーム画面に入って以降は基本的に読み上げ機能は使えないので、操作については暗記するしかありません。コマンドに関してもレッスン機能などがうまく使えないので、こちらも暗記して体に叩き込んでいます。

サポーターと力を合わせて戦う

これらのハードルに立ち向かうべく今回Team-ePARAが編み出したのが、「画面共有による人力支援」です。視覚障害のプレイヤーとペアになる晴眼者のサポーターを配置、視覚情報を補完しながらプレイすることで、諸問題の解決とプレイのサポートを行います。

Discordの画面共有機能を利用したサポート

視覚のサポートを行うにあたっては、ボイスチャットアプリDiscord(ディスコード)に付属されているGo Live(ゴ-ライブ)機能を利用しています。

視覚障害のプレイヤーに画面共有でゲーム画面を送信してもらい、サポーターはそれを見て、キャラの向きなどを音声化して報告することでプレイを支援します。ただ、ワンフレームの差が勝敗を分けるとされる格闘ゲームの世界で、どうしても遅延の問題がつきまといます。また、ブラインドeスポーツにおいて音声は命綱のため、無駄な情報はノイズとなりプレイの妨げとなります。そのため、できるだけ伝える情報を必要最小限に絞るなど、プレイがしやすい状況作りを考えながら進めています。

ブラインドeスポーツの挑戦が持つ「意味」

視覚障害のプレイヤーがゲームの世界で、晴眼者のプレイヤーと戦うことは、無謀と思われるかもしれません。しかし、今回のePARA CHAMPIONSHIPの舞台を通じ、ゲームと向き合ってひたむきに努力し、戦い抜くことができれば、プレイヤーもサポーターもひとつ成長することができるのではないかと感じています。今後は、視覚障害のプレイヤーがもっと幅広い大会に羽ばたいていく未来もあり得ると考えています。

また、Team-ePARAの参加メンバーは、視覚障害を持つプレイヤーだけが障害を持っているわけではありません。盲目プレイヤー2人に協力しているサポーターも別の障害を持つ仲間たちです。各々の障害特性を理解、お互いの得手不得手に配慮して補完しあいながらひとつのチームを築き、団結して鉄拳7に向き合っています。

仲間と協力しながら努力して形にしていくこと、その過程で自信を得ていくこと、そして、その努力をこれからの可能性につなげていくこと、すべてがバリアフリーeスポーツを推進するePARAとして大きな意味があり、価値があると感じています。

 「第1回ePARA CHAMPIONSHIP」後半戦の格闘ゲーム部門は11月22日日曜日 午後1時開幕です。Team-ePARAのブラインドeスポーツに向けた挑戦の初陣。Team-ePARAの未来に向けた新たな挑戦を見届けていただければと思います。

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