障害とゲーム

おもろいゲーム見つけましろん~全盲・真しろの『音戦宅球』体験記~

こんにちは。Blind Fortia(ブラインド・フォルティア)の真しろです。ePARAイングランド支部の活動から離れてだいぶ時がたってしまいました。(イングランド支部の活動記録については追って公開されます!)
さて、皆さんは、「音戦宅球」というゲームをご存じでしょうか。私は最近すっかりこのゲームの虜になってしまいました。今回は、私がはまってしまったこのゲームについて書いていこうと思います。内容は、ゲームの概要と遊び方、出会ったきっかけ、魅力、そしてせっかくなので企画した対戦&交流会についてです。

おんせんたっきゅうのロゴ

「音戦宅球」の概要と遊び方

1.概要

『音戦宅球』は、「一般社団法人Tanys福祉テクノロジー」という団体が作っているサウンドスポーツゲームアプリです。最初私は、『温泉卓球』と書くと思っていました。なぜなら、温泉旅館やホテルには卓球台がよくあるからです。

2.遊び方

このゲームは、飛んでくる球の方向とタイミングを頼りに、それを打ち返すゲームです。スマートフォンにアプリをインストールすれば、あとは案内に従って遊ぶだけです。一人で遊ぶこともできますし、オンラインで対人戦もできます。練習モードもあるので、初心者やスランプに陥っているプレイヤーさんにも安心です。

一人で遊ぶ場合は、10個のレベルがあるので、レベルを変えて遊ぶことができます。ちなみに、レベルによって相手になるキャラクターが変わります。レベルをクリアすると、そのレベルのキャラクターを自分でも無料で使うことができるようになります。言い換えると、レベルをクリアしてキャラをゲットしていくイメージです。

また、ゲームには通常モードとハイパーモードがあり、通常モードに飽きたらハイパーモードで遊ぶことができます。ハイパーモードは、通常モードに比べていろいろな攻撃ができるようになり、相手からも多様な攻撃が飛んできます。

オンライン対戦をする場合は、主催者が対戦コードを相手に教えることで対戦できます。また、その対戦コードで試合を観戦することもできます。自分の対戦コードは、一度作ってしまえば変わらないようです。

上で、飛んでくる球の方向とタイミングが大切と書きましたが、球が飛んでくるときには、基本的には、右か左から音がするので、左右どちらかの画面をタッチすれば良いです。また、画面を四つに切ったとして、右手前側と左手前側の画面をタッチすると直球が打てて、右奥と左奥の画面をタッチすると変化球が打てます。そして、打ち返すタイミングがぴったりだと、打つ音の種類とキャラの台詞が変わって、必殺技を打つことができます。必殺技を打つと、相手が返しにくくなります。

画面を4つに区切ったそれぞれの枠に垂直または斜めの矢印が描かれ、中央には猫のイラストが描かれている。画面上部には点数の表示、右上には「やめる」ボタンがある。

注意点として、このゲームは音の方向が大切なので、イヤホンかステレオスピーカーを使うと良いと思われます。また、iPhoneの場合、ボイスオーバーを入れた状態でももちろんプレイできますが、球を打ち返すのが間に合わない可能性もあるので、ボイスオーバーを切ってプレイするのも良いかもしれません。下でも触れますが、ゲームはフルボイスなので、安心して遊べます。

遊び方についてたくさん書いてきましたが、練習メニューもあるので、まずは遊んでみるのが一番です。

出会ったきっかけ

このゲームのことは、以前から名前だけ知っていたのですが、なかなか遊ぶ機会に恵まれませんでした。そんななか、今年の8月、友人の地元でこのゲームの体験会が開かれることになり、遊びに行くことになりました。

いざ遊んでみると、単純なゲームにもかかわらず、独特の緊張感があり、久しぶりにゲームで熱くなれました。そしてそれを機に、自分でもインストールして、ほぼ毎日欠かさず遊ぶようになりました。今までこんなふうに継続して遊びたいと思ったゲームはなかったので、よほど気に入ってしまったようです。

「音戦宅球」の魅力

それでは、このゲームにはどんな魅力があるのでしょうか。まとめると、以下の3点です。

1.視覚の有無に関係なく遊べる

再三書いているように、このゲームはサウンドスポーツゲームなので、球が飛んでくる音の方向とタイミングがわかれば簡単に遊べます。加えて、各メニューにナレーションがついており、そのナレーションに従って遊ぶことができます。さすがに音声読み上げを使わずに遊んだことはありませんが、少なくとも試合中に目を使うことはないので、ほぼストレスなく遊べるのは大きな魅力です。

2.気軽に遊べる

二つ目は、スマートフォンで遊べることです。オーディオゲームの多くは、PCで遊ぶものが多く、場合によっては高いスペックのPCでしか遊べないものもあります。その点このゲームは、スマホが1台あれば遊べるので、電車の中で遊ぶことも物理的には可能です。まあ、音を使うゲームで、音漏れする可能性があるので、公共の場で遊ぶ場合は注意が必要ですが(笑)

3.キャラクターと効果音も魅力的

上にも書いたように、このゲームはフルボイスで、キャラクターの声や台詞もゲームの大きな要素を占めています。どんな声のキャラクターで、どんな台詞を話すのか、友人たちと情報交換するのも楽しみの一つです。また、必殺技が決まるときの効果音もとてもかっこよく、たくさん決めたくなります。ちなみに、このゲームに出会ったきっかけである体験会では、自分たちのオリジナルキャラクターを作る機会もあり、台詞を考えながら楽しく作ることができました。

ブタのような鼻を持ち赤いギターを背負ったキャラクター。「トンずら星 フライングブヒ」と書かれている。

そのほか、このゲームは卓球がベースということで、どんな球種で攻めるかなどを考える必要もあり、心理戦を楽しめるのも魅力の一つといえます。

対戦&交流会について

1.概要

「音戦宅球」にすっかりはまってしまった私は、このゲームを他の友人たちとも遊んでみたいとずっと考えていました。そこで、8月20日に、友人でもあり、Blind Fortiaの仲間でもあるNAOYAさんとの共同企画で、「音戦宅球対戦&交流会」をオンライン(Zoom)で開催しました。計5名が参加し、全員プレイした経験はあるものの、レベルはまちまちです。

対人戦は5ポイントマッチを基本として、全員が通常モードを使って対戦しました。運営の工夫として、全員の対戦コードをあらかじめ配布しておくことで、円滑に対戦ができるようにしておきました。また、Zoomに入る端末と、『音戦宅球』を遊ぶ端末を同じにするとプレイができないので、参加者は、端末2台で参加するか、対戦時にはZoomから退室するようにしていました。本当は2時間の予定でしたが、予想以上に盛り上がり、時間を超過して楽しみました。

2.参加者からの感想

参加者からは以下のような感想がありました。

「まさか全勝できると思わなかったのでうれしい。自分でもびっくりするほどゲームに集中できた。」

「みんなが遊んでいる様子を見るのがこんなに楽しいゲームはなかなかないと思う。もっとレベルを上げて、いい勝負がしたい。」

「視覚障害者でも遊べるスマホゲームやパソコンのゲームはいくつか遊んだことがあるが、ここまで熱中できたゲームは初めて。これからもこのようなゲームが増えてほしい。」

「必殺技がなかなか決まらず、決めようとしたら空振りになってしまうなど、タイミングが重要なゲームだと感じた。これからもこのような企画をたくさんしていきたい。」

私ももちろんプレイヤーとして参加しました。最も印象的だったのは、100コンボ×3ほどのラリーが続く勝負をしたことです。この試合は、5ポイントマッチにもかかわらず、40分ほど続く大接戦でした。ちなみに、私の中でこの記録は、この記事を執筆した時点では破られていません。このゲームは集中力も鍵となるゲームなのだなとひしひしと感じました。

おわりに

このゲームは非常にシンプルなだけに、さまざまな遊び方ができることが最大の魅力だと考えられます。スポーツの代わりとして遊ぶのもよし、話の種に遊ぶのもよし、ストレス発散に遊ぶのもよし…。たくさんの可能性が期待できるゲームなだけに、これからますます遊びの幅が広がることでしょう。そして、もっと多くの人にこのゲームを知っていただけたらうれしいです。温泉から上がって卓球で遊ぶときのほっこりした気持ちを思い出しながら、これからも毎日このゲームで遊んでいきます。

追記:11月3日、第2回「音戦宅球大会」を開催しました

8月の対戦&交流会から2ヶ月半。何人かの人たちと対人戦を繰り返すなかで、今度は大会を企画してみたいと思うようになりました。そこで、11月3日、前回に引き続き友人のNAOYAさんと、そして最近このゲームにはまってしまったという全盲プレイヤーのアンジさんと3人で、音戦宅球大会を開催することに。ゲームをかなりやりこんでいるプレイヤーから、大会前日にゲームをインストールしたプレイヤーまで、計6名がオンラインで参加しました。

ゲームは、予選2試合、準決勝2試合、3位決定戦1試合、決勝戦1試合の6試合が行われました。決勝戦以外は5ポイントマッチでゲームが進行され、決勝戦だけは11ポイントマッチで、ハイパーモードもOKでした。

決勝戦は大変白熱した試合になり、白熱しすぎてプレイヤーのスマホがダウンするトラブルが発生。そんなわけで、今回の大会の優勝者は、なんと二人。ちなみに、優勝したのは主催者であるNAOYAさんとアンジさんでした。もう一人の主催者である私は、初戦敗退でした…。

そして今大会は、音戦宅球開発者である「一般社団法人Tanys福祉テクノロジー」の方々にもご協力いただきました。具体的には、参加賞として、「音戦宅球」のデザインが入ったマフラータオルを提供してくださいました。さらに、当日は、代表の谷様が駆けつけてくださり、試合も観戦していただくことになりました。そして、ゲームの展望についても少しだけ伺うことができました。「音戦宅球」の未来がますます楽しみです。

決勝戦のトラブルに代表されるように、いくつか反省点の残る大会ではありましたが、参加者の皆さんが楽しそうにプレイしたり観戦したりしている様子を見ていると、主催者としては「開催して良かったな」と強く感じました。次回もまたきっとありますので、どうぞお楽しみに。そして個人的には、次回こそ必ず優勝するぞ!!!

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真しろ(ましろ)

生まれつきの全盲です。「言葉で世界をつなぐ旅人」。 大阪で生まれましたが、この春で関東に住んで18年になります。 現在は大学院で英語教育の研究をする傍ら、ライターの見習い業をしたり、ワークショップのファシリテーターをしたり、たまにゲームで遊んだりと、自分のやってみたいことに一つ一つ挑戦しながら生活しています。 格闘ゲームをプレーし始めたのは最近ですが、効果音や演出のかっこよさに見せられてプレーしてみようと思いました。

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