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ePARAレポート 障害とゲーム

ePARA海外広報担当としての活動報告〜全盲真しろのイングランド留学体験記②

Hello again! ePARA海外広報担当の真しろです。

今回も、生まれつき視覚に障害のある私、真しろが、イングランドで留学中に体験したことをお伝えします。今回は、ePARA海外広報担当の活動としてどんなことをしたのかについて、詳しく書いていきます。

GAconf 2023への参加とその後

私は2022年の夏から、ePARA Global Stationという、ePARAの情報を世界に発信するTwitter(現X)アカウントの中の人を担当しております。

渡英する前は、現地でゲームに関する情報を得たいと思っていたのですが、本分である勉学などとの兼ね合いもあり、最初のうちはなかなか情報収集やSNSでの発信が思うように進みませんでした。

そんな私にとって転機となったのが、2023年の4月にロンドンで開催された「Game Accessibility Conference」(GAconf)でした。

このイベントは、ゲームアクセシビリティーの実証研究や開発報告についてさまざまな機関に所属する人たちが情報共有したりディスカッションしたりするものです。
私はこのイベントにオンライン参加し、盲ろう者のゲーマーの実情に関する研究報告や、オーディオゲームのプロジェクトの活動報告、アクセシビリティーの定義に関するプレゼンテーションなどのセッションを視聴しました。
その中で感じたことは以下のような点です。

  • 「アクセシビリティー」という言葉はとても奥深く、それぞれの立場によって定義が異なること。
  • 英語圏ではアクセシビリティーに関する研究が進んでいて、情報がかなり集まっていること。
  • ゲームアクセシビリティーに関する議論は、研究者や開発者だけでなく、当事者も参加すべきだということ。

このイベントを通して、英語圏におけるアクセシビリティーの情報共有がものすごく進んでいることに、私は衝撃を受けました。だからこそ、受動的に情報収集を行うのではなく、英語の論文を読んだり、ゲームアクセシビリティー関連のコミュニティーに参加したりして、能動的に情報を集めようというマインドに変わりました。このイベントは毎年開催されているそうなので、今度はぜひ対面で参加したいところです。

アプローチ開始!

能動的に情報を発信することに決めた私は、GAconf 2023に参加したあと、早速いくつかの行動を起こしてみました。

まずは、ePARA Global StationのTwitter(現X)や自分のnoteで、GAconf 2023の感想を発信しました。すると、今まで反応のなかった海外の団体やゲーム関連のアカウントからリアクションをいただきました。

また、GAconf 2023のオンラインコミュニティーで自己紹介をして、自分やePARAのアピールもしてみました。すると、早速興味を持ってくれた方からダイレクトメッセージをいただき、直接Zoomでお話しすることもできました。そのほか、GAconfに登壇していた気になるパネラーやプレゼンターの方にメールを送ってアプローチしました。

この私の行動をさらに手助けしてくれたのが、ePARAがサウンドアクセシビリティーの監修で協力した「ストリートファイター6」の発売です。この大ニュースを活用しながら、現在も販路を拡大すべく、動き続けています。

関連記事:6月2日発売「ストリートファイター6」のサウンドデザインにバリアフリーeスポーツePARAが協力

そして、日常でも他国からの留学生たちとゲームの話をきっかけに、いろいろな話ができる友人関係を築くことができました。実感したのは、ゲームには国境も壁もないということです。実際にプレイする機会は作れなかったのですが、ひとたびゲームで遊べば、たとえ使う言葉が違ったり、置かれている状況が想像できなかったりしても、簡単に仲良くなれるんじゃないかと感じました。

海外コミュニケーション部門交流会の実施

実はイングランドには、ePARAのESG投資顧問であるマンチェスター大学講師の大坪陽一先生と、その奥様でePARA広報担当のYukkoさんが住まれています。留学も終盤の5月下旬、英国北部旅行も兼ねてマンチェスターに訪問しました。情報交換だけでなく、私にとっては初挑戦のゲームを一緒にプレイし、交流を深める良い機会となりました。

関連情報:プレスリリース「バリアフリーeスポーツ「ePARA」各顧問就任のお知らせ」

マンチェスター大学の散策とゲームでの交流

初日はマンチェスター駅で合流し、大坪先生一家と会食しました。Yukkoさんは視覚障害のある方のアテンドは初めてとおっしゃっていましたが、段差の声かけや町の景色の解説などを丁寧にしていただき、安心して楽しく歩くことができました。食事をしながら、日常生活の話からお互いの研究活動、ePARAでの業務についてなどいろいろな話をしました。

一夜明けて2日め、まずは、大坪先生が勤めていらっしゃるマンチェスター大学を散策。学内にある博物館でアンモナイトを触ったり、外を歩いたりしました。私の留学している大学よりもキャンパスは広い印象で、学生の数も多いように思われました。散策中は大坪先生がアテンドしてくださり、博物館の様子や学内にどんな建物があるのかを丁寧に解説してくださいました。

マンチェスター博物館のティラノサウルスの化石の前で記念撮影。向かって左にましろ、右に大坪先生がYogiboのハギボーメイトを持って立っている。
マンチェスター博物館にてティラノサウルスの化石前で大坪先生と

そのあと、大坪先生のお宅に移動し、2つのゲームに初挑戦しました。

まずは、ブラインドチェス。触ってわかる駒やマスの付いたチェスボードを使用してプレイします。イングランドに来て半年以上経っていたのですが、やっとチェスができるとあって、私はとても楽しみでした。

今回は勝負することよりも、チェスはこういうゲームだということを私が理解するために遊ぶ時間になりました。勝負をしつつ、大坪先生に教えていただきながら慎重に駒をマスに置いていきます。最初のうちは、駒を置くだけで精一杯でしたが、だんだん楽しくなってきて、自分でいろいろと作戦を考えられるようになりました。そして、私にとって初めてのチェスは、なんと私が勝利しました!ルールを教えていただきながらとはいえ、勝てたときは本当に嬉しくて、声を出してしまいました。このチェス板は日本にも持って帰ったので、もっと強くなりたいです。

ましろがチェスをプレイしている様子。チェスボードのマスに段差がついており、それを両手の指で確認している。
大坪先生宅の庭でチェスをプレイ

もう一つプレイしたのは「ファイナルファンタジーⅠ」のリメイク版です。ファイナルファンタジーシリーズは以前からずっとプレイしたかったのですが、どうしてもゲーム中のサウンドが少なかったり、キャラクターの台詞がなかったりして、ゲーム初心者の私にはできないだろうと諦めていました。

実際にやってみると、やはり、キャラメークの部分やアイテム購入をする際の作業が特に難しく、コントローラーのどのボタンを何回押せばいいかなどを大坪先生にガイドしていただきました。また、画面に出ているテキストの情報(キャラクターの台詞やHPなど)も読み上げていただきました。戦闘中は、適当にコントローラーのボタンを連打してなんとかしのぎました。最終的に、大坪先生の協力もあって、プロローグをなんとか終えることができました。あの有名なオープニングのテーマが流れたときは泣きそうでした。

その日も夕食までご一緒してから宿泊先に送り届けてもらい、翌朝駅で見送っていただきマンチェスターをあとにしました。

交流会の感想

今回の交流会で私が感じたことは以下の2点です。

まず、普段オンラインで話しているメンバーと顔を合わせることができたことに感動しました。一緒に広報業務をしているYukkoさんはずっと英国に住まわれていて、なかなかお会いすることができないので、この機会にたくさん交流できたのはとても素晴らしいことでした。普段Yukkoさんや大坪先生には、Twitter(現X)のePARA Global Stationの運用など海外広報担当としての私の活動にご助言をいただいているので、その感謝の気持ちを伝えることもできました。

次に、改めてゲームを通した交流の楽しさを知ったことです。今回私が大坪先生と遊んだチェスやファイナルファンタジーは、私にとっても初めてでしたが、大坪先生にとっても、視覚障害のある人をガイドするのは初めてだったので、お互い手探りでした。しかし、お互い手探りだったからこそ、どうすれば楽しく遊べるかを一緒に考えることができました。また、こういう機能があれば使いやすいといったことを考えながら遊ぶこともできました。たとえば、ファイナルファンタジーのテキスト情報をパソコンの音声読み上げ機能で読めるようにすれば状況がわかりやすいことなどを発見しました。ゲームで遊ぶことは、お互いの絆を深めることはもちろん、自分が普段どんなことに困っているかを考える場にもなったのです。

これからに期待すること

海外広報担当として私がイングランドで活動できた時間は、1年足らず。正直、やりたかったことをすべてできたわけではありません。しかし、今回の経験は、私が、そしてePARAがこれから笑顔の花を咲かせていくための種をまくことにつながったと確信しています。また、ここには書き切れないくらい、私はイングランドでたくさんの経験を積み、過去の自分にも恥じない思い出で鞄がいっぱいになったので、この留学に全く悔いはありません。能動的な情報発信や情報収集、国境を越えた遊びでの交流を通して、日本に帰国しても、ますます活動の幅を広げていきたいです。そしていつか、イングランドの地で、みんなで本気で遊べることを願っています。

それでは、またどこかでお会いしましょう! See you later!

バッキンガム宮殿前で記念撮影するましろ
バッキンガム宮殿前にて
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真しろ(ましろ)

生まれつきの全盲です。「言葉で世界をつなぐ旅人」。 大阪で生まれましたが、この春で関東に住んで18年になります。 現在は大学院で英語教育の研究をする傍ら、ライターの見習い業をしたり、ワークショップのファシリテーターをしたり、たまにゲームで遊んだりと、自分のやってみたいことに一つ一つ挑戦しながら生活しています。 格闘ゲームをプレーし始めたのは最近ですが、効果音や演出のかっこよさに見せられてプレーしてみようと思いました。

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