プレイレポート 障害とゲーム

視覚障害のnicoが挑むShadowverse ~二人でひとつの勝利を掴み取る~

Blind Fortia(ブラインドフォルティア)の活動を応援しているePARAでは、バリアフリーeスポーツのひとつの形として、様々な障害を持つ方の挑戦を応援しています。
今回は、視覚障害を持つnicoさんがGrasperさんのサポートの元で協力して挑む「Shadowverse」についてご紹介します。

自己紹介

nico

はじめまして。nicoと申します。
私は未熟児網膜症という病気で視覚に障害があります。数年前まで弱視という、わずかに視力が残っている状態でしたが、現在では光を認識できるかどうかという、ほとんど全盲に近い状態です。


幼い頃から好奇心旺盛で多趣味でしたが、中でも熱を入れていたのがゲームでした。
人よりもクリアに時間がかかったり、練習が必要だったりと、一筋縄ではいきませんでしたが、それでも努力を重ねながらゲームを楽しんでいました。
SFCに始まり、GBA、PS2、PSP、PCやスマートフォンなど数々のハードで遊び、RPGを中心にシミュレーション、アドベンチャー、アクション、格闘に至るまで幅広いジャンルのタイトルに手を出していました。その後オンラインゲームにも熱中し、特にシャドウバースというカードゲームでは様々な工夫をしながら自分なりにランクを上げ、本気で上を目指してプレイしていました。

 

シャドウバースの戦績画面
弱視時代の戦績

ところが数年前から原因不明の視力低下が始まり、ついにゲームを諦めなければならない事態となりました。大好きだったものを失うショックからなかなか立ち直れませんでした。周りの友達や兄弟がゲームの話を楽しそうにしているだけで泣きそうになることもありました。
そんな時、私に希望を与えてくれた人がGrasperでした。

Grasper

僕Grasper(グラスパー)もnicoと同じように、視覚障害があります。網膜色素変性症という病気を患っています。視力は0.2で、文字の読み書きはでき、普段の生活も目を使って送ることができます。しかし、視野は3度程度で、わかりやすく言うとトイレットペーパーの芯を覗いた程度しかありません。視野が狭いと、物を探すのが難しかったり、一度に捉えられる情報が少なかったりします。視力はあっても、視野がないことによって、初めての場所の歩行や、買い物などが困難になっています。
ゲームは小学生の頃からしており、大学生になるまでにポケットモンスターシリーズやスマートフォンでのMMORPG、MOBAなどのジャンルにもハマっていました。

ペアでプレイするようになった経緯

僕Grasperとnicoは大学の同じクラスでした。弱視同士、サポートし合いながら学校生活を過ごしていました。nicoは、視力低下で苦しんでいる中で、またゲームがしたいという言葉を何度か口にしていました。僕自身、小学生の頃からゲームで遊んでおり、その楽しさを知っていました。同じ視覚障害者のゲーマーとして、nicoのゲームへの思いに共感し、その小さな願いを叶えてあげたいと思うようになりました。とはいえ、僕も視覚障害と視野障害があるため、十分にサポートができるのかという不安がありました。

僕は以前、フロアバレーというスポーツで全盲者をサポートしていたことがありました。フロアバレーは視覚障害者向けのスポーツで、床の上でボールを転がしながら行うバレーボールです。この競技では、弱視のプレイヤーが全盲プレイヤーに状況を素早く的確に伝えたり、指示を出したりしなければなりません。この経験から、僕が視覚部分を補って協力することで、nicoもゲームを楽しめるのではないかと考えました。

まずはRPGにチャレンジしてみました。nicoが操作し、僕が操作指示や状況説明を行いました。コマンドバトルのゲームであれば、nicoがコマンドの位置を覚えることでうまくできそうだと思いました。しかし僕の視野が狭く、一度に捉えられる情報が少ないため、マップの状況を十分に説明するのが難しいことがわかりました。また、建物に入るなど細かい操作が必要な場面で、わずかなズレの修正に時間がかかり、nico自身RPGを楽しめていないように感じました。

そこで、他のジャンルで試してみたいものはないかと聞いてみました。たくさんの候補の中からできそうなものとして選んだのがShadowverseでした。
僕にとって未経験のゲームだったため、カードやルールを覚えるのに苦労しました。ですが、連係プレイを重ねるうちに、ルールや伝えるべき情報がわかってきました。これならば二人とも楽しみながらゲームができるだろうと確信しました。

Shadowverseをプレイして感じたこと

いよいよ私達の挑戦が始まりました。
といってもお互いに手探り状態で、考えることが山積みで、対人戦で勝つにはまだまだ時間がかかりそうでした。
特に苦労していたのは、時間の有効活用とコミュニケーションです。
Shadowverseはターン制のカードバトルで、90秒の間に行動しなければなりません。手札には最大9枚のカードがあり、それらがどのカードなのか、どんな能力があるのかを毎回確認していては到底プレイが間に合いません。

そこで、デッキの中身とカードの効果をデータ化し、プレイヤー(nico)の好きなタイミングでカードの効果を確認できるようにしました。

カード名や能力をまとめた表
カード名や能力をまとめた表

 

作成したデータを点字で読み取るための点字ディスプレイ
 点字ディスプレイ。作成したデータを点字で読み取る

また、手札にあるカードや進化できる回数、カードのコストや能力の変化などをメモし、プレイヤーがサポーター(Grasper)に質問する回数を減らしました。
使用するクラスによっては、カードの能力やコストの変化が激しかったり、頻繁にカードが手札に追加されたりするため、メモをとることに時間をとられ、戦略を練る余裕が全くないことも珍しくありません。
この状況を打破するには、プラクティスモードなどを駆使し、時間制限がない中で自分のデッキの立ち振る舞いを頭にしっかりと入れる必要があります。このような練習はデッキを作り直す度に必要です。

更に時間を短縮するために、短い言葉でプレイヤーからサポーターに質問したり、逆にサポーターも短い言葉で情報を伝えたりしています。ただし、こうするとお互いの認識がずれた状態でプレイしてしまい、ミスにつながることがあります。これも、日頃のコミュニケーションの中で連携を良くしていったり、伝え方を確立していったりすることが重要です。

サポーター側の工夫としては、自身でもゲームをプレイして研究し、プレイヤーの心境を理解することが最も重要だと考えています。ゲームをやり込むことで、プレイヤーはこのような場面ではどんな情報がほしいのか、ということがわかってきて、連携がスムーズになります。このレベルアップの過程には、まさにスポーツのような楽しさがあります。
プレイヤーの特徴や癖を把握しながら、効率的に情報を伝える工夫もしています。対戦相手が出したカードの効果や能力を全て説明していると時間がなくなってしまいます。プレイヤーがどのカードの能力を覚えているかをある程度知っておけば、そのようなカードは名前だけ読み上げるなど、時間短縮につなげることができます。

正直、まだまだ時間の使い方もコミュニケーションもうまくできているとは言えず、課題がたくさんあります。勝てない試合が続くと喧嘩になることもあります。本気で勝ちにいくこと、上を目指すことはとても大切ですが、何よりもゲームができる喜びや楽しむ気持ちを忘れないようにしながら、今後もプレイできればと思っています。

ライター
nico

Twitter:https://twitter.com/nico93556452

Grasper

Twitter:https://twitter.com/Grasper5

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視覚障害を持つ学生・Nicoと、それを支えるGrasper。二人の息の合ったチームプレイで情報を補完しながら、NicoがShadowverseに挑戦する。

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