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座談会 障害とゲーム

未来と世界をつなぐ全盲ゲーマーたちの絆が作られた瞬間~ePARA×BlindWarriorSven座談会

ついに、国境を越えた全盲ゲーマーたちによる夢の対談が実現しました。

今回は、オランダの全盲ゲーマーで、EVO 2023で勝利を収め話題になったBlindWarriorSvenさんをお招きし、『ストリートファイター6』(以下『スト6』)やゲームアクセシビリティについて熱い対談が行われました。ePARAからは全盲ゲーマーとしてNAOYA、実里、真しろの3人と、Jeniが参加しました。

本記事の英語版はこちら / English version of this article is available here:
Blind gamers build bonds to connect the world—ePARA meets BlindWarriorSven

BlindWarriorSven(以下「Sven」)さんの紹介

 オランダ人の全盲ゲーマー。6歳のときに視力を失う。『スト6』では本田とマリーザに加え、A.K.I.でもマスターレベルに達している。EVO 2023の『スト6』部門で勝利を獲得し、日本でも話題に。また、この座談会の数週間後にはTwitchパートナーとなった。
『スト6』の他には、『ハースストーン』などのカードゲーム、そして各種RPGをご家族とプレイしている。

目隠しをしてゲームをプレイするブラインドウォリアースフェンさん
BlindWarriorSvenさん(出典:ご本人に提供いただいた動画から許可を得て抜粋)

全盲プレイヤーと『ストリートファイター6』

全盲プレイヤーが『スト6』で強くなるためのポイントは?

真しろ: 本日はよろしくお願いします。それでは早速、ePARAの皆さんからSvenさんに質問はありますか?

NAOYA: 目が見えない上でゲームをするときに、目が見える人のサポートをお願いする必要があると思いますが、『スト6』が強くなるためにどのようなことをしていますか?

Svenさん: まず、使っていて楽しいキャラクターを選ぶことが重要です。キャラクターが決まったら、トレーニングモードなどを使って、何度もコンボの練習をすべきでしょう。コンボを決められるようになることは、全盲の格闘ゲーマーにとって強みにすべきことだと考えられます。もし相手をしっかりコンボで仕留めることができれば、圧倒的に強いですから。
その他にも、キャラクターのフレームデータが掲載されたウェブサイトを見たり、動きや技の効果が音だけだとわかりにくいキャラクターについて晴眼者の友人に尋ねたりすることもあります。ただ、やはり再三強調しておきたいのは、プレイする経験をできるだけたくさん積むことですね。

実里: 目が見えないとゲームはできないんじゃないかという先入観や、画面が見えないことによる難しさから、ゲームを始める段階でハードルを感じる視覚障害者の方は多いと思います。Svenさんがゲームを始めようと思ったきっかけや、ゲームをしていてぶつかった壁についてお聞きしたいです。

Svenさん: 私は6歳で失明し、実際、大好きなビデオゲームができなくなってしまいました。しかしそんな中、格闘ゲームは音を使ってプレイするのに適したゲームジャンルなのではないかと思うようになって、何時間も『ストⅡ』や『モータルコンバット』などを触っていました。何時間も触ることは、効果音を聞いて、スクリーンで何が起きているのかを想像する練習になるのです。
さらに、見えていた頃の記憶を頼りに、スクリーンの画像を頭の中で自動的に想像できるようにもなりました。例えば相手が波動拳を打ってきたら、その状況を頭の中で自動的に想像することもあり、これも強くなる上で助けになっています。『スト6』が登場したばかりの頃、ドライブラッシュやドライブインパクトの出し方に苦労しました。でも練習すればするほど技の出し方を理解できるようになり、プレイするのが楽しくなりました。

キャラクター選びについて思うこと

NAOYA: ぼくは『スト6』で本田を使っているのですが、強いキャラであるからこそ、「本田は反則級のキャラクターだ」だとか「どうせ本田でしょ」と言われることがあります。Svenさんも本田を使われていると思うのですが、そういうご経験はありますか?

イヤホンを着けてコントローラーを操作するなおや
さまざまなイベントでブラインドeスポーツの講師も務めるNAOYA

Svenさん: 確かにそうですね。配信で本田を使っていて閲覧者からそのように言われたことはあります。でも、もし本田がそういう反則級のキャラクターだったら、本田を使っている人はみんな上位のランクに上がっているはずです。実際にはそんなことないですよね(笑)。私はザンギエフに対して同じようなことを思ったことがあります。そのキャラクターが強いかどうかは気にせず、自分が使っていて楽しいキャラクターを使うのが良いと思いますよ。楽しいからプレイする。それが第一です。

Jeni: NAOYAさんは元々ルークを使っていたのですが、もっと勝ちたいという相談を彼から受けたので、ぼくが彼を本田ロボットに改造してしまったんです(笑)。

NAOYA: 確かに、「本田は強いから」云々といったことは勝てるようになってから言われるようになったので、勝つ人の宿命なのかもしれませんね(笑)。

実里: 私は『スト6』でジェイミーを気に入っていて、彼を使っています。声のかっこよさや近距離攻撃の気持ちよさがその理由です。先ほどSvenさんは、自分の好きなキャラクターを使うと良いとおっしゃっていましたが、なぜ本田が好きなのですか?

アイマスクとネックピローを着けてゲームをプレイするみさと
イベント「心眼PARTY」でストリートファイター6をプレイする実里(右)

Svenさん: 声は私にとっても重要ですね。『ストV』では、声が好きでケンやサクラを使っていました。そこで『スト6』でもケンを使おうと思ったのですが、声が全く違っていたので使うのをやめました。新しいキャラクターを探している中で、本田を使ってみるとしっくりきたので使い始めました。
逆に私は、ダルシムのように動きが遅いキャラクターは苦手です。本田は俊敏だし力もあるし、使っていて楽しい。キャラクターのお気に入りポイントはプレイヤーごとに違って当たり前だと思います。私のパートナーは、実際の生活でも憧れているほど、ジュリが気に入っているみたいです。

サウンドエフェクトの活用方法

NAOYA: 『スト6』には、新しく搭載されたサウンドアクセシビリティ機能をはじめ、さまざまなサウンドエフェクトがありますが、どのような機能を普段使っていらっしゃいますか?

Svenさん: 足音の音量を他の効果音よりも小さく設定しています。どんな音をどう活用するか、人によってさまざまな方法があります。対戦中に自分にとって不要な環境音をオフにできるようになったのはアクセシビリティの点で大変便利です。
ほかに、音はコスチュームによっても変わるので、自分のデフォルトのコスチューム設定で戦えるようになったのもいいですね。

未来に向けて

Jeni: 今年、大会に出る予定はありますか?

Svenさん: 出たいとは思っていますが、特に国外の大会に参加するのは非常にお金がかかるので、経済的な状況にもよります。

真しろ: せっかくなので私も質問させていただきます。今後対戦してみたいゲーマーの方や、出てみたいイベントはありますか?

Svenさん: いい質問ですね。今まで対人戦で戦ったプロのプレイヤーは欧米の方が多いので、ダイゴさんやときどさんをはじめとした日本のゲーマーさんともっと戦いたいですね。イベントについても、私が今まで参加してきたイベントは欧米のものが多いので、日本のイベントには参加したいと思っています。

Svenさんからの質問とメッセージ

実里: 私たちからたくさん質問をさせていただきましたが、Svenさんのほうから質問やメッセージはありますか?

Svenさん: お話を聞く限り、皆さんも私のように、ビデオゲームに興味があることがよくわかりました。私とパートナーはブラインドゲーマーとして20年以上ゲームで遊んでいて、視覚障害者にとってアクセシブルなゲームのリストを作ることができますが、興味はありますか?

Jeni: めちゃめちゃ気になりますね。

真しろ: ぜひ拝見したいです。

Svenさん: もちろんです。これも関心があることなのですが、これまで会った日本の方の多くは英語を使うことに困難を抱えている印象です。多くのアクセシブルなゲームは日本語に訳されていないので、私は英語を学ぶことを強くおすすめします。

真しろ: そうですね。私は『the Vale: Shadow of the Crown』というオーディオゲームが好きで、このゲームはとてもアクセシブルなのですが、日本語版はないんですよね。

Svenさん: 私が言いたいのはまさにそのことです。アクセシブルなゲームの多くは英語版しかなく、日本にいる全盲のゲーマーが英語を使えなければ遊べないことになります。もちろん、逆に私が日本語しかないゲームをやってみたくても理解できません。しかし、英語が多くのゲームに使われる言語であることは確かです。自分のために、ぜひ自分自身を教育してください。

宮殿の前で記念撮影するましろ
今回の座談会で通訳務めた真しろのイギリス留学中の1枚

参加者たちの野望

実里: せっかくなので、参加者それぞれの今後の目標について最後に言っていきませんか? 私の個人的な目標は『スト6』で強くなることです。少し視野を広げた目標を言わせていただくと、『スト6』に搭載されているサウンドアクセシビリティなどを多くの人に体験していただき、この機能はハンディを持った人のものだという固定概念を超えて、あらゆる人にとってゲームのハードルを下げるものになれるように願っています。そのために、ePARAがすでに行っているように、目隠しして『スト6』を体験してもらうイベントをこれからも続けていきたいです。

Jeni: いろいろな障害を持った人がeスポーツを通して活躍できるイベントの企画を続けていきたいです。さらに、『スト6』のプレイヤーとして、可能であれば、今年の夏、EVOに出られればいいなと思っているところです。いつかSvenさんともリアルでお会いしたいです。

車椅子に装着した自作のコントローラーを操作するジェニ
イベントプロデューサーとしても活躍するJeni

NAOYA: 目が見えていないことで、ゲームを始めることに対して踏みとどまっている人が多くいます。だからこそ、ゲームが好きな全盲の仲間を増やして、その仲間たちと一緒に、アクセシブルな機能の追加をゲーム会社にたくさん要望できるようになりたいですね。

真しろ: 私にとっても、コミュニティーを拡大させていくことが目標の1つです。そして私はさらに、よりグローバルな視点で情報の共有ができる環境を作っていきたいです。

Svenさん: 素敵ですね。皆さんは日本にお住まいですが、私には米国やここオランダにも何人か全盲の『スト6』プレイヤーの知り合いがいます。いつか、国際的な全盲ゲーマーの大会を開き、格闘ゲームに参加したいと思っている全盲ゲーマーが世界中にいることをアピールしてもいいかもしれませんね。全盲ゲーマーたちは、自分の所属しているコミュニティー以外の場所でも戦うべきです。そして、全盲ゲーマー限定のトーナメントを開けば、お互いの学びにもつながります。

Jeni: めちゃくちゃいいですね。

真しろ:Svenさんの今年の目標は何ですか?

Svenさん: 多くの人が目標を叶えるためにコミュニティーに参加したり自分の好きなことに挑戦したりできるように、影響を与えられる存在でいることです。

おわりに

海外の全盲ゲーマーとお話しする機会は貴重なので、大変充実した時間となりました。今後のますますのグローバルなつながりに、ぜひご期待ください。そのためにも、英語を勉強しなければいけませんね(笑)。

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