イベントレポート

音からゲームをつくる!全盲・真しろがオーディオゲームハッカソンで駆け抜けた3日間

こんにちは。Blind Fortiaの真しろです。

皆さんは2024年の夏、何か素敵な思い出を作りましたか? 暑かっただけで何も覚えていないという方もいらっしゃるかもしれません(笑)。私はこの夏、ありがたいことに、とても素敵な思い出を作ることが出来ました。

2024年7月13日から15日にかけて、シビック・クリエイティブ・ベース東京(以下、CCBT)が主催する「オーディオゲームハッカソン」というイベントに、ブラインドファシリテーターとして参加しました。同じくBlind Fortiaの実里さんも一緒に参加しました。このイベントは、9月16日までCCBTにて開催されていた「AUDIO GAME CENTER」の一環として開催されたものです。この記事では、オーディオゲームハッカソンでどんなことが行われたのか、どんな成果物が作られたのか、そしてその後に起こったことについて紹介していきます。まとめると、3日間の思い出の話です。

”ハッカソン 「音からゲームをつくる」(Audio Game Center + CCBT)”について

ハッカソンとは

そもそも、「ハッカソン」とはなんでしょうか。実は私は恥ずかしながら、このイベントに参加するまで、この言葉を聞いたことがほとんどありませんでした。

NECソリューションイノベータ社のウェブサイトによると、ハッカソンとは、データを解析する「ハック」という言葉と、マラソンの「ソン」という言葉を組み合わせて作られた造語で、「主にソフトウェア開発におけるエンジニアやデザイナー、プログラマーなどが集まり、一定期間集中的にアプリケーションやシステムなどを開発するイベント」を指すそうです。詳細は以下のサイトをご覧ください。

参考:NECソリューションイノベータ株式会社「ハッカソンとは?意味やアイデアソンとの違い、イベント事例を解説」

そんなわけで今回のハッカソンも、エンジニア、視覚障害者、デザイナー、プログラマー、アーティストなどが渋谷に集まって、3日間でゲームを作ることになりました。それにしても、3日間でゲームを作るなんて本当にできるのでしょうか…?

イベントの流れ

1日目は13時から21時、2日目は9時から21時まで、3日目は9時から17時までという、かなり長時間のワークショップでした。

企画の流れとしては、まず関係者が全員で自己紹介したのち、オーディオゲームとは何かを理解するために講義を受け、実際にAUDIO GAME CENTERに展示されているゲームを体験。その後、参加者が作りたいゲームのアイデアを出し合い、共通のアイデアごとにわかれてチームを作りました。ここからはいよいよそのチームにわかれて作業開始です。2日目の夕方に中間発表をして、3日目に最終的にできたゲームを遊び合ったりプレゼンしたりしてワークショップは終了となりました。

そのほか、イベントの詳細につきましては、こちらをご覧ください。
ハッカソン 「音からゲームをつくる」(Audio Game Center + CCBT)

手前に丸テーブルがあり、「ヘッドフォンをつけて、音を聴きながらゲームをプレイしてね」と書かれ、ヘッドフォンが吊るされている。奥には今回のイベントのパネル。
会場入り口の様子

真しろたちの作った成果物とは?

私のグループは、音作りを学ぶ学生、ワークショップやゲーム制作のお仕事をされている方、そしてこのワークショップの参加者で最年少の小学生がお父様とともに参加してくれました。さらに、エンジニアをされている方も加わってくださいました。

私たちのグループで作ったゲームは、「バードッチ」という、音のたまごっちがコンセプトのゲームです。鳥の声が聞こえるところに向かってスマホを持って歩いて行って、音の餌を与えるというのがざっくりとしたルールです。

最初に「音を育てるゲームを作りたい。」というところからスタートし、アイデアを交換しては実際に作ってという作業を繰り返していきました。音にこだわるメンバーが多いこともあって、なかなか一つの着地点にたどり着くのに時間がかかりましたが、最高のゲームが出来上がりました。

展示されたゲームの反響

この「バードッチ」をはじめ、ハッカソンで作られたゲームは、AUDIO GAME CENTERの会期中実際に展示されており、遊ぶことができました。子供から大人まで、多くの方に遊んでいただき、「餌をあげるのは難しいけれど鳥がかわいい。」などの反響がありました。

私が友人と一緒に「バードッチ」を遊んだときは、何秒で餌をあげ終えられるかというタイムトライアルの競争を一緒にしました。もともとは、音のえさを使って鳥を育てるほっこりしたゲームのつもりで作ったはずなのに、気づいたら新たな遊び方が生まれて面白い瞬間でした。

その他のゲームも含めて、AUDIO GAME CENTERにはたくさんの方が毎日来場されており、音だけで遊ぶゲームを楽しんでいる様子が印象的でした。

ヘッドフォンをつけた参加者が太鼓のバチのようなものを持って3つのターゲットを叩いている様子。
音に合わせて叩くリズム・アクションゲーム「スクリーミング・ストライクneo」に挑戦する参加者

ヘッドフォンをした真しろがハンドルを握りレーシングゲームを楽しむ様子。
「ガイドメロディ」を頼りに車を走らせるレーシングゲームを楽しむ真しろ

参加したブラインドファシリテーターの感想は?

真しろの場合

今回オーディオゲームハッカソンに参加して感じたのは、主に3点です。

まず、私は普段ゲームを遊ぶ側から楽しむことがほとんどなので、今回のように、ゲームを作る体験ができたことで、新たなゲームの面白さを発見することができました。ゲームといってもいろいろなものがあって、まず何がテーマのゲームでどうやって遊んでどんな部品や材料が必要なのかも考えなければいけません。特に今回は音から作り、音で楽しむゲームだったので、画像などの視覚的要素はさほど重要ではありませんでした。しかし、だからこそ、音だけでどれだけ楽しんでもらうか、どうやったらわかりやすいゲームになるかなど、たくさん考えることになりました。今後何かゲームで遊ぶときには、作り手側の苦労も想像しながら遊んでみたいものです。

二つ目に感じたのは、多様な人たちと何かを作ることの奥深さです。上記のように、私のグループにはさまざまな背景を持った方が所属していました。お互いの専門知識が全然違うので、アイデア出しの段階で学びが多く、お互いに刺激を与え合うことができました。一方で、メンバーごとにこだわりたいポイントが違って、時間がないのにみんなで迷子になってしまうこともありました。そんなときにそれぞれが打開策を見つけ、できることをして、最後に納得のいく物が完成するプロセスは、多様な人が集まるからこその傑作を生みました。自分と全然違う考えを持っていたり、違う活動をしていたりする人と何かをするのはかなり緊張しますが、その分得られる物はとても大きかったのです。

最後に感じたのは、限られた時間で何かを作ることの難しさです。二つ目に感じたこととも関連しますが、やりたいことや出てくるアイデアが多すぎて、それを一つの完成品にまとめることが、今回のオーディオゲームハッカソンの活動で一番難しいところでした。いつまでに何をして、最終的にどんなゴールにみんなでたどり着きたいのかを整理しながら、それに向けて計画的に行動することは案外難しかったのを覚えています。しかし、中間発表を終えて、いったん作った物を他のグループの人に披露したことで、自分たちの課題が明確になり、すべきことや最終目的地を全員で定めることができました。時間がないからといって、あせることなく、冷静にやるべきことを整理して行動すれば、限られた時間でも素晴らしい物ができあがることを実感しました。

実里の場合

同じくこの企画にブラインドファシリテーターとして参加された実里さんからも、以下のような感想をいただきました。

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私は今回、初めてハッカソンに参加しました。参加する前は、正直3日間でゲームを作れるのか疑問に思っていましたが、実際に参加してみると、アイデア出しからゲームの制作、さらにはタイトル決めや細かい部分の修正まで、見事に3日間で形にすることができたことに大変驚きました。それと同時に、参加者の皆さんの技術力やアイデアにとても感動しました。

普段、私はエンジニアやクリエイターの皆さんと一緒に仕事をする機会がほとんどありませんが、今回の3日間を通じて同じチームでゲームを作らせていただくなかで、皆さんのスキルやこだわり、そして情熱を強く感じることができました。その結果、全員の力が結集して素晴らしい作品を完成させることができたことに、本当に感動しています。

また、こういった機会があればぜひ参加したいと思います。私自身、ゲーム制作に関しては知識がほとんどなく、どれだけお役に立てたのか自信はありませんが、それでも楽しく充実した3日間を過ごすことができたことは、私にとって貴重な経験となりました。もしまたご縁がありましたら、今回ご一緒した皆さんとともに、新たに楽しいものを作り上げられることを楽しみにしています。ありがとうございました。

作品の前でイベントパンフレットを掲げながらヘッドフォンをした加藤代表の写真。作品は、「ありきたりで不親切なエレベーター」と書かれたA4サイズほどのモニターの前に、モニターと同じくらいの大きさの箱があり、4つの操作ボタンがついている。
ePARAの加藤代表も来場、実里のグループが作った作品に挑戦

おわりに

3日間の思い出を書いてきましたが、頭も体もたくさん汗をかいてあっという間だったというのが正直な感想です。実際、イベントが終わった次の日、私は疲れて熱を出してしまいました(苦笑)。

しかし、それほどにこのイベントで多くの経験ができたことは紛れもない事実です。今回の経験は、普段のゲームとの関わり方だけでなく、仕事や学業での過ごし方、他者とのコミュニケーションの取り方など、多くの場面に生かせることが満載でした。今後のBlind Fortiaの活動にもつながること間違いなしです。

夏に作ったたくさんの思い出をこれからも育て、いつか大きな成果として羽ばたかせていけることを願っています。もちろん「バードッチ」も、ちゃんと宙へ飛び立ってほしいな。

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真しろ(ましろ)

生まれつきの全盲です。「言葉で世界をつなぐ旅人」。 大阪で生まれましたが、この春で関東に住んで18年になります。 現在は大学院で英語教育の研究をする傍ら、ライターの見習い業をしたり、ワークショップのファシリテーターをしたり、たまにゲームで遊んだりと、自分のやってみたいことに一つ一つ挑戦しながら生活しています。 格闘ゲームをプレーし始めたのは最近ですが、効果音や演出のかっこよさに見せられてプレーしてみようと思いました。

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