先天性の全盲であり、バリアフリープロジェクトチームFortia(フォルティア)のユニットBlind Fortia(ブラインド フォルティア)のチョコタルトさんに、ePARA編集局チーフライターの彼岸花がお話を伺いました。
チョコタルトさんは、言語教育分野で英国への留学を控えアカデミックな道も歩みつつ、カクヨムにて小説も執筆し、更にはブラインドでゲームにも挑戦するというマルチな才能を発揮しています。今回はゲームに関するエピソードや、語学の道を歩むチョコタルトさんの思いをお聞きします。
カクヨム(小説):あさひが落ちた
Blind Fortiaのニューフェイス
彼岸花:それでは本日はよろしくお願いします。まず最初にご自身のことや障害について伺ってもよろしいでしょうか?Blind Fortiaとしてやっていきたいことなどもお聞きしたいです。
チョコタルト:改めまして、チョコタルトと申します。私には生まれつき視覚障害があります。眼球もほとんどない状態で生まれてきて普段は義眼を使って生活しているので、光や色を知覚したことがないです。
基本的には都内私立大学の大学院に所属しておりまして、2022年3月時点では修士1年生です。言語教育の研究を主にし、そのかたわら文字起こしの仕事をしながら執筆や企画、勉強をしています。最近少しずつ、ゲーム関係の仕事も始めようかなというところです。
それからもう一つ、芸術に関する団体にも所属しています。目が見える人と見えない人・耳が聞こえる人と聞こえない人、さまざまなバックグラウンドの人たちと一緒に、対話をしながら写真や絵、映像などの芸術作品を鑑賞するというワークショップを企画する団体です。最近はワークショップのファシリテーションを担当させていただくようになりました。
彼岸花:活動的ですね!目が見えない人でも芸術を楽しめるなんて素晴らしいです。小説も書かれるようですが、ほかにもお得意なことはありますか?
チョコタルト:スポーツは水泳をずっとやっていました。あとは登山も好きで、主に個人系の競技をやってました。
彼岸花:まさに多才!
ゲームへの思い、エピソード
彼岸花:バリアフリープロジェクトチームのBlindFortiaのメンバーにもなったチョコタルトさんにゲームに関するエピソードを伺いたいです。
チョコタルト:ゲームは今まで携わったことのない分野で、興味があったけれど全然手をつけていなかった分野ということもあり、まず「どういうゲームがあるんだろう?」「どういうふうなeスポーツの遊び方があるんだろう?」と考えました。大変でもあり面白くもあり、自分の知らないことでもあります。今は環境に慣れるというか、「こういう人たちがいるんだな」ということを知り、咀嚼しているところです。
美術鑑賞もそうなんですけど、ゲームって視覚障害の人でもちょっと敬遠しちゃったり、苦手だなと思ってる人もいますが、「やりようによってはできる」ということや「一人で全部抱え込まなくていい」ということはすごくわかりました。
彼岸花:上手に周りの方の協力を得ていらっしゃるのですね。周りの人が手を貸してくれるのも、そのお人柄があるからかもしれませんね。
心眼CUP powered by SYCOMとの出会い
彼岸花:心眼CUP powered by SYCOM でストリートファイターV チャンピオンエディションにも挑戦なさるんですね。始めたきっかけや出会いのお話を伺っても良いですか?
チョコタルト:過去に一回、知り合いの全盲の方とストリートファイターシリーズを軽くプレイしたことがありました。とりあえず適当でいいからとやってみたのですが、その時すごく楽しかったです。
「音がすごいかっこいいな」「効果をどうやって作ってるんだろう」「どういうふうにパンチ繰り出してるんだろう」と作り込みが気になってしまいました。音やボイスでもとても気になる、そういう視点でもゲームを楽しめるところがストリートファイターにはあるのかなと。
格闘ゲームっていうものWiiスポーツのボクシングくらいしかやったことがなかったので、「どういう戦術でやっていくのか」とか「防御しながら攻撃するってどうすればいいんだろう」とか「コントローラーをどう使えばいいんだろう」とか、そういうのをこれからちょっとずつ勉強していきたいですし、多分やったらすごいはまりそうだなと感触を得ました。
ePARA英語版Twitterの中の人にも挑戦
彼岸花:今後ePARAで挑んでいきたいことなどはありますか?
チョコタルト:プレイヤーとしては格闘ゲームやストリートファイターなどもやっていきたいのですが、やはりアナログのゲームを開拓すること、RPGを開拓することなど、そういうところの物語とゲームの関係性も大事にしながらゲームの幅を広げていきたいなと思います。
また、ゲームのプレイというところよりは、発信にはすごく力を入れたいと思っているので、ゲームをしてみて自分がどう思ったかとか周りの人がゲームをしてどんな反応したのかとか、そういうところをいろんな人にメディアで伝えていくことを挑戦的にやっていきたいなと思っています。
そして、英語でTweetして世界的にそれを広めたい。そういう挑戦をこれから自分はePARAでできたらいいなと思っています。
巧みな言の葉を紡ぐ理由
彼岸花:ゲームもですが、言葉遊びがお得意なチョコタルトさん。Fortiaミーティング内でもカウンターギャグが決まるとついうっかり笑ってしまいます!
チョコタルト:言葉遊びがすごく好きなのかなと思っていて。友達同士でもこういう感じです。よく友達の間ではパワーワードを作成するというふうに言うんですけど、ふとした会話の中での聞き間違えや面白い言葉を取り出したり、音が面白い言葉をつくったり、ダジャレチックにこう返したりすることをすごく自分は楽しんでいます。今後も引き続き、会議の進行の妨げにならない程度に場を和ませるカウンターみたいなのはやっていけたらと思っています。
小説についても、僕は画像としての想像じゃなくて言葉としての想像をするので、そうなると絵を書くとか、動画を作ることよりは、言葉だけで完結する可能性が高い小説を書いて、それで何か誰かが喜んでくれたら嬉しいです。
彼岸花:言葉に対する思い入れというのがあるのですね。
チョコタルト:ePARAのなかで会議の場を和ませることもそうなんですけど、ゲームをするというときに、私達の場合は特にコミュニケーションを取ってゲームをしていかないと、一人だとやはりどうしても難しいです。そこで見える方と一緒にペアになって、今こういう状況だからこういう攻撃した方がいいよとか、攻撃だけじゃなくても何かこういう状況だからこうした方がいいみたいなことを話をしながらやっていくので、言葉ってすごくゲームをプレイする能力以外のところで重要な領域、情報源になっています。
自分は当事者としてはもちろん、客観的な立場でこういうふうにみんなやっているというのを見るのがすごく楽しみです。ePARAでは格闘ゲームとか戦闘系のゲームは皆さんやられてると思うんですけど、将来的にはボードゲームなどももっとできるようになったらいいなと思っています。言葉を使うゲームがたくさんあるので、そういうゲームをePARAの皆さんでプレイしてみたらどんなことが起きるのかなと楽しみに思っています。
繋ぐ人でありたい
彼岸花:とても忙しくしてらっしゃいますが、その原動力はなんでしょう?
チョコタルト:私が言語教育の研究をしたり、文字起こしをしたり、ワークショップをしたり、一般に関わったりしてる活動のベースにある考え方としては「遊びの壁をなくしたい」というのがあります。それを超越してもっと根幹にある気持ちとしては何か繋ぐ人でありたいという思いが強くあります。
例えば日本と外国とか、あと文字起こしだったらお客さん同士の繋がりが文字起こしで成り立っていたりしますし、ゲームをやる人と作る人と見る人が繋がって成り立ったりするのもそうかなと。
自分は正直ゲームもすごいプレーができるわけでもないし、日本言語教育でいうと英語のネイティブスピーカーというわけでもないし、目が見える人でもないし、テレビ局の人間でもないけれど、その間でいろいろと繋がりを持った上でいろんな人たちの軸を繋いでいける存在になりたいです。AIでも難しいところもたくさんありますし、これから何か繋ぐ人がいることってすごく大事なんじゃないかと感じたので、自分の軸として大事にしていきたいところです。
ePARAでも、ゲームだけじゃなくて、「遊びの壁をなくしたい」という根底にある思いをもって、大きい目標の中でいろいろと具体的なことをやっていきたいなと思っています。
最後に
本日は素敵なお話をありがとうございました!精力的に活動し、言葉巧みに場を和ませる素敵な人柄がとてもよくわかるお話でした。多才なチョコタルトさんの更なる活躍が楽しみですね。