「バリアフリープロジェクトチーム」として歩み出したFortia(フォルティア) from ePARA。発足当初はブラインドeスポーツチームとして視覚障害を持つeスポーツプレイヤーに焦点を当てた活動をしていましたが、その後「様々な障害当事者が活躍し、輝く未来を切り拓くプロジェクトチーム」として再定義し、活動の場を広げることになりました。障害当事者が様々なユニットに所属し、ePARAのサポートを受けながら、個々が輝けるプロジェクトを通してバリアフリーな社会に向けた挑戦をしていきます。今回はその経緯や思いを紹介していきます。
Fortiaの意味と始まり

Fortia(フォルティア)とはラテン語で、「勇気・寛容・挑戦」の意味を持ちます。障害当事者がeスポーツを通して活躍し、自分らしく輝くことを目指したeスポーツチームとして発足する際、熱い思いを持つメンバーの提案で名付けられました。障害にも多様性があり決して一括りにはできませんが、それでもeスポーツを通して自分らしく生きることを目指すことは皆同じです。
最初にフォーカスされたのは、全盲のなおや選手・いぐぴー選手の二人がプレイするブラインドeスポーツでした。「盲目のeスポーツプレーヤー」というインパクトと「どうやってプレイしているのだろう?」と興味をそそる世界。それは光なき世界で音を頼りに戦い、それを別の障害当事者が支える、前例のないeスポーツチームのスタートでした。
発表後に開設されたFortiaのツイッターアカウントは徐々にフォロワー数を増やし、気づけば4桁台へ。熱意を持って運営されているアカウントは、全盲のFortiaメンバーが発信していることもあって様々な方向で話題となり、フォロワー数を増やし続けています。TwitterをはじめとするSNSでの情報発信は、Fortiaのこれからの活動をたくさんの方に知っていただくための、必要不可欠な活動になっています。
バリアフリーeスポーツへの挑戦・チームの枝分かれ
ある時「ブラインドeスポーツだけではなく、他の障害当事者もユニットとしてeスポーツへの挑戦をしていこう」と話が広がり始めます。そこには大きな議論が繰り広げられ、Fortiaメンバーの様々な思いと言葉が行き交うことになりました。一回のミーティングでは到底かたがつく議題ではなく、数回にわたり議論を重ねたのち、バリアフリープロジェクトチームFortiaとしての再出発という道を選択しました。
- 発足からわずかな期間でチームの定義を変更して良いものなのか?
- これまでの意図と齟齬がないか?
- それぞれのユニットをどういう扱いにしていくのか?
- どうやってブラインド主体のチームから各種のユニットへと枝分かれをさせるのか?
- eスポーツチームを名乗るのは適切なのか?
- Fortiaの意義・定義はどうすべきなのか?
様々な疑問・意見が噴出し、皆が頭を悩ませました。
・Fortiaはブラインドeスポーツだけの枠に納めず、様々な「バリア」に挑戦していくチームでありたい
・ブラインドeスポーツチームとしての要素も内包し、拡張性のある定義変更であれば、Fortiaの定義を変化させても問題はない
と意見はまとまり、「Fortia」の定義変更を決めました。
eスポーツチームではなく、バリアフリープロジェクトチームと名乗るのは、活動の軸をeスポーツのみに限定せず、バリアフリーを目指す様々な挑戦(プロジェクト)を次々と打ち出せるチームでありたいという意志からです。
こうしてFortiaは、ブラインドに限らず活躍をするバリアフリープロジェクトチームへと昇華していきました。
そして、「勇気・寛容・挑戦」を掲げる障害当事者が、eスポーツやゲームを通して自分らしく輝くことの象徴として、Fortiaの名の下にそれぞれのユニットで挑戦していくことになりました。
それぞれのFortiaプロジェクトへ

発足当初から活動の中心となっているブラインドeスポーツチームは、Fortiaの1ユニットBlind Fortia(ブラインドフォルティア)として再出発しています。全盲の戦士・なおや選手(@noy_0207)と盲目の女格闘家いぐぴー(@Fortia_Iguppy)選手を中心に、これからも鉄拳やストリートファイターⅤ、フォートナイトをプレイする姿が見られることでしょう。今も練習を重ね、少しずつ着実に実力をつけています。いぐぴー選手はePARA CHAMPIONSHIPに出場した際は一勝を上げ、なおや選手もバリアフリーeスポーツカフェ「Any%CAFE」のオープニングイベントで戦うなど、全盲の戦いの足跡を残しています。

銃を持ち、チームで挑むFPS Fortia (エフピーエスフォルティア) 。こちらはBASE社・ビーウィズ社・CS entertainment社などの選手と手を取り、所属の垣根を超えて障害当事者で共闘するチームとなりました。キャプテンはePARA所属のたま選手(@0tamamono0)。発達障害のADHDによる多動はもはや強みとすら言えます。各社から集まった実力者揃いのメンバーと力を合わせて、世界中のパラeスポーツチームとの交流も深めていきます。

格闘ゲームをプレイするFighting Fortia(ファイティングフォルティア)は、筋ジストロフィーを患いながら顎で操作するコントローラーを自作し戦うJeni選手(@jenixo0)をキャプテンとして発足。鉄拳チームは鉄拳7プロプレイヤーのS.H.O.W選手(@ShowYama)をコーチに迎えて練習を重ね、着実に実力を伸ばしています。また、ストリートファイター5をプレイする選手も在籍、ユニットとしてプレイの幅を広げています。個人単位ではすでに大会で活躍している選手もおり、今後の成長が期待されます。
これからのFortiaと、Fortiaが大事にするもの
Fortiaはプロジェクトの拡張を経て、2021年10月時点で前述の3ユニットが活動。2021年12月末までには新たに3ユニットが誕生し、計6ユニットが挑戦を進めていく予定です。
Fortiaの精神を持って前向きに挑戦する障害当事者たちの姿は、とても輝いて見えることでしょう。
Fortiaのメンバーたちは言います。「大切なことは強くなることや勝利することだけではなく、ゲームを通して楽しみながら、絆を強めていくこと」であると。Fortiaが大事にするのは、eスポーツで勝ちに行くだけではなく、コミュニケーションを大切にし、人とのつながりを広げていくことです。Fortiaにとってゲームとは、他者と競い合うツールである以前に、他者と協調・共感・共鳴し合うコミュニケーションツールです。Fortiaメンバーはこうしたコミュニケーションの蓄積を経て様々な経験を積み、それを就業を含めた個々の可能性の拡大につなげ、ひいては一人一人の自己実現に向かうことを目指しています。
Fortiaはプロジェクトチームです。Fortiaはこれからも様々なユニットを誕生させながら、eスポーツの殻を破っていき、多様性のある障害当事者メンバーが活躍・挑戦する場を広げていきます。その舞台は時に国境を越え、世界のパラeスポーツプレイヤーとも繋がっていきます。Fortiaの今後の躍進、どうぞご期待ください。

バリアフリープロジェクトチーム「Fortia」についてのお問い合わせ
私たちの活動をサポートしてくださる企業様・個人の方・障害をお持ちの方、そして共に活動したい障害当事者の方は随時募集しています。下記、連絡先よりお問い合わせください。
株式会社ePARA 「Fortia」担当宛
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