座談会

ブラインドeスポーツ座談会①「目の見えない人はどんなゲームをしてきたのか」

eスポーツやゲームは、目の見える人しかできないと思っていませんか?

視覚障害をお持ちの方の中には、独自の工夫でゲームを楽しんでいらっしゃる方が多くおられます。
ePARA(イーパラ)では「ブラインドeスポーツ座談会」と題して、6名の視覚障害者の方に集まっていただいた模様を全3回の記事でご紹介します。

第1回では参加者の皆さんの「自己紹介とゲーム遍歴」について、語ってもらった様子をお届けします。

視覚障がいをもつ6人の参加者が笑顔で集い、楽しく議論をする様子が描かれている。中央にバリアフリー!!eスポーツ座談会①の文字。

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ブラインドeスポーツ座談会②「目の見えない人はゲームのどこに困難を感じているか」

ブラインドeスポーツ座談会の参加者

直也:全盲の声優・ナレーター、エンジニア。大の野球好き。(先天性視覚障害)

いぐぴー:全盲のNHKのど自慢元グランドチャンピオン。(先天性視覚障害)

ひろ:石巻市在住。視覚障害団体でiPhone講師を務める。(後天性視覚障害)

DY:全盲のマッサージ師、作曲家。(先天性視覚障害)

まるた:視覚障害者福祉協会勤務。iPhone/iPad講師も行う。(後天性視覚障害)

武者:全盲のサウンドスケープデザイナー。(先天性視覚障害)

加藤:ePARA代表。NPO市民後見支援協会理事。社会福祉法人品川区社会福祉協議会勤務。

進行: 株式会社メジャメンツ 細貝(障害者専門クラウドソーシングサービス サニーバンク)

ブラインドeスポーツ座談会のきっかけ・意義

進行:「ブラインドeスポーツ座談会」を始めたいと思います。まず、株式会社ePARAの加藤さんからご挨拶をお願いします。

加藤:株式会社ePARAの加藤です。まず、簡単に自己紹介を。私は2019年の3月まで東京地方裁判所で裁判所書記官の仕事をしていました。日本には「成年後見人」という知的・精神障害者や認知症の高齢者などを支援する制度があります。しかし、この制度の認知度や利用率がとても低いんです。その状況に問題を感じて、裁判官や弁護士と一緒に成年後見制度啓発のためのNPOを立ち上げました。いまは、成年後見制度の利用が一番盛んと言われている品川区の社会福祉協議会で働きながら勉強しています。

進行:成年後見制度の啓発活動と「eスポーツ」には一見、関わりがなく思えますが、どんな流れでePARAを立ち上げたのでしょうか?

加藤:NPOの活動をする中で多くの障害者の方々と接するうちに、失礼な言い方ですが「意外と普通だな」と感じました。異性と付き合いたいとか、アニメの話とかを普通にされるんですね。障害のある方に関わっていくうち、「健常者」が「障害者」に対して誤解をしているのではと気づきました。そして、「eスポーツは障害者も健常者も境界なく取り組めるツールになる」と考え、ePARAを始めました。2019年11月に乙武洋匡さんを呼んでePARA2019を、2020年5月にはオンラインでバリアフリーeスポーツePARA2020を開催しました。

進行:今回は視覚障害のある方々をオンラインで結んで「ブラインドeスポーツ」についての座談会となりますが、どのようなきっかけでこの座談会をされることになったんでしょうか?

加藤:これまでは肢体不自由の方や発達障害のプレイヤーが多かったのですが、先日、弊社のウェブメディア「ePARA」で「全盲の僕でもパワプロをやりたくて試したこと」という記事を公開しましたところ、とても反響がありました。そこで、視覚障害者の方とどのようにしたらゲームができるのか、どのようにすれば視覚障害者の方が面白く感じられるのか、どのような工夫が必要かを考えることに意義があると感じました。またその工夫には、視覚障害者だけにとどまらず、全てのプレイヤーにとって使いやすいゲームを目指すためのヒントが隠れているのでは、と思っています。本日は、ゲームが好きな視覚障害の6名に集まっていただきました。楽しい議論をどうぞよろしくお願いいたします。

視覚障害6人 それぞれのゲームとの関わり方

進行:それでは、本日ご参加のみなさんから簡単に自己紹介をお願いしたいと思います。まずは、「全盲の僕でもパワプロをやりたくて試したこと」の著者、直也さんからお願いします。

直也:好きなゲームはRPGと、先程紹介いただいた記事を執筆しましたように、「パワフルプロ野球」です。恋愛ゲームとかも好きですね(笑)RPGは世界を救うみたいな大きいスケールのものが好きです。まあ、プレイができることが前提になるんですが。ゲーム内の移動がうまくできずにひたすら壁を押していただけだったこともありました。仕事はネット声優やナレーターをしています。でも、自分が声優をしているゲームがアクセシビリティの関係でプレイできないとかあるんですよ。虚しい…。

ブラインドeスポーツ座談会の参加者、直也がよくプレイしているパワフルプロ野球のイメージ画像。

進行:それは要改善事項ですね(笑)いぐぴーさん、自己紹介をお願いいたします。いぐぴーさんは「全盲いぐぴーのチャレンジ!MINECRAFT体験版を振り返る」を執筆いただいています。

いぐぴー:文字起こしの仕事をしています。ゲーム歴は結構長くて、小学生になる前からやっていました。もう20年くらいになるんじゃないかと。全盲なので音を頼りにスーパーファミコンを中心に「タワードリーム」などをプレイをして、他にも家族と人生ゲームをしたりしていました。最近は「グランブルーファンタジー」というゲームをしながら、ゲーム実況配信を楽しんだりしています。プレイできるならどんなゲームでもやりたいです。

ブラインドeスポーツ座談会の参加者、いぐぴーが昔プレイしていたタワードリームのオープニング画像。

進行:続いて、ひろさんお願いいたします。

ひろ:はい、ゲームはプレイできれば何でも好きです。見えなくなったのはここ10年ぐらいの話なので、それまでは「大乱闘スマッシュブラザーズ」とか「ストリートファイターⅡ」とかやっていたんです。けど、目が全然見えなくなってしまってプレイできるゲームが減り、ちょっとブランクがあります。最近は子どもたちとSwitchの「ワンツースイッチ」をやっています。

ブラインドeスポーツ座談会の参加者、ひろが最近プレイしているワンツースイッチの画像。
ワン-ツー-スイッチ 任天堂公式ホームページより引用

進行:ぜひ、今回のことをきっかけにゲームの楽しみ方を開発してもらえればと思います。DYさんはいかがでしょうか?

DY:30年前くらいからゲームをしてます。それこそ、ファミコンからPCエンジンやメガドライブまで一通り触った記憶がありますね。「ストリートファイター」や「餓狼伝説」、「ソウルキャリバー」あたりですかね。ファミコンの頃はまだ視力もありましたし、ひと通りやっていました。「ドラクエ」等のRPGも文字を別の人に読んでもらいながらプレイした記憶があります。「パワプロ」も昔は好きで、直也さんの記事を読んで、「自分も守備はオートだったな」と共感しました。ただ、ここ10年くらいはゲームから離れてる感じです。仕事はマッサージ師をやりつつ、BGM音楽の制作をやったりもしています。できればオンラインのゲームはもっとやってみたいですね。「グランド・セフト・オート」とか「荒野行動」あたりを。

ブラインドeスポーツ座談会の参加者、DYがかつてプレイしていたスーパーファミコン版餓狼伝説2の画像。

進行:30年はすごいですね。次にまるたさん、よろしくお願いいたします。

まるた:障害者福祉協議会で視覚障害者に便利なデバイスの説明や、お年寄りになって目が見えなくなった方の支援などをしています。光に当たると体調が悪くなってしまうので、暗室の中でPCを使うような生活です。これまではセガサターンを触ったくらいなんですけど、子どもが「あつまれどうぶつの森」(あつ森)をはじめて、古くなった「とびだせ どうぶつの森」を貰ってプレイしたんです。それを1時間音だけでプレイしたりしていますね。ゲーム内で釣りができるんですが、音だけでタイミングが取れるので、楽しめるんです。あとスマホではにゃんこ大戦争というゲームをやっていたりもします。

DY・いぐぴー・武者:「どうぶつの森」、やってみたい!

いぐぴー:でも設定がうまくできるかが心配だったりしますよね。そこでつまずいてしまうゲームが本当に多くって。

進行:本当に「どうぶつの森」のファンが多いんですね。では、最後に武者さんお願いいたします。

武者:サウンドデザイナーをしています。ファミコンが出たときにはもう全然目が見えなくて、「Mother2」や「ドラクエ3」などを弟に読み上げてもらってやっていました。「三国志」や「信長の野望」は一人でやっていたこともありました。「パワプロ」はコントローラー1つで、守備のときは投げるのはわたし、守備は弟。攻撃側になると打つのはわたし。走塁は弟で役割を分けてやっていましたね。多くのみなさんのようにブランクがあるんですが、最近「ストリートファイター5」をやろうと思っていて。でも、初期設定の問題でログインができないんですけど(笑)

ブラインドeスポーツ座談会の参加者、武者がプレイしていたMother2のオープニング。

進行:見えなくても設定がしやすいような工夫、大切ですね。これで今回の参加者の紹介が終わりました。次から議論に入っていきたいと思います。

6人の自己紹介を振り返って

ここまで、座談会の自己紹介部分をご紹介しました。

視覚障害といっても多種多様で、それぞれに色々な背景のある6名の方ですが、みなさんゲームに対してポジティブに向き合われているのが印象的ですね。

ご家族と協力しながらプレイされていた、心温まる側面も多く感じることができました。

次回の記事では、「目の見えない人はゲームのどこに困難を感じているか」をテーマに、更に「ブラインドeスポーツ」の世界を深掘りしていきます。

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