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聴覚障害者くらげのPUBG戦記(2)~オンラインゲームイベント初参戦編~

ゲーム参戦

「聴覚障害者くらげのPUBG戦記」の二話目である。

前回(聴覚障害者くらげのPUBG戦記 ~初陣編~)は青天の霹靂で「ePARA運営委員会」の加藤大貴氏から、近くePARAが主催して障害者を集めて「PUBG MOBILE」の大会を開催するから聴覚障害者として参戦して欲しい、とお願いされPUBG MOBILEを初プレイするまでのことを書いた。

それ以降、仕事と家事の合間(私は兼業主夫でもある)にちょくちょくとプレイを重ね、聴覚障害がありながらもなんとか上位4人に生き残れたりするところまでは成長したが「ドン勝」(100人の中で最後の一人まで生き残ること)はまだ達成したことがない。つまりは雑魚である。やはり聴覚に障害があるからか、生存者が少なくなると一気に不利になる気がする。PUBG MOBILEプレイヤーでデフォルトでミュートで遊んでいる、という方がいればぜひコツを伝授してほしい。

準備編

LINE オープンチャットで待機

さて、4月18日(土)、私の住む東京都東部ではまるで台風のような暴風雨が吹き荒れ、雷が頻繁に落ちて蛍光灯がちらつく、というような異常気象であった。春の嵐にしてはいささか派手にすぎる。そんな中、私は自宅でPUBG MOBILEにログインし、かたずを飲んでゲーム開始を待機していた。荒天と相まって本当に戦場に行く気分さながらであった。

この日、「eスポーツ参加型就労イベント・アンケートモニター募集!」と称して、障害者向けのPUBG MOBILE体験会がオンラインで開催された。このイベントは、5月に開催予定の大会に向けて実際にPUBG MOBILEを体験し、参加者を増やすのを目的としたもので、この体験会は本来は3月末に池袋で総勢50人ほど集まって開催される予定であった。しかし、新型コロナウイルスの流行に伴って中止となり、その代替案として急遽オンライン開催になったものである。短期間で準備を終えた関係者皆様の苦労が察せられる。

イベント内容は障害者が集まってPUBG MOBILEをワイワイプレイし、それをYouTubeでYouTuberである鳥越勝さんをはじめ4人の方々が実況中継を行うというもの。参加者同士はLINEの「オープンチャット」機能をつかって交流を行う。正直、プレイ前はどんな進行になるのかはさっぱりイメージできず、非常に緊張した。その気持ちがまるで空模様になったようであった。

イベントは14時からだが、オープンチャットにはその前からログインすることが可能だったので、やや早めの13時30分くらいに入室した。既に数人が入室し挨拶をはじめていて、40分くらいになるとスタンプが飛び交って場が一気に温まってきた。14時になる頃にはオープンチャットには46人ほど集まり、チャットルームもすごい流れになっていた。ものすごい熱気だった。これはすごいことになるぞ、と感じた。

YouTube Liveの視聴環境整備

14時を少し過ぎた頃、運営からYouTubeの配信URLが投稿され、配信を見ながら進行していくことになった。私は人工内耳を入れて配信を聞くが、それだけだと辛いのでPCの中で自動文字起こしができるように準備しておいた。最近はこういう奇跡のテクノロジーが無料・低価格で使えるので嬉しい。断片的に聞こえることと自動文字起こしを照らし合わせながら進行を追っていく。

運営からは「今回はPUBG MOBILEに慣れてもらうためのイベント。我々としてもオンラインでイベントを行うのは初めてで、手前味噌だがかなり意欲的な取り組みになる」というコメントがあった。YouTubeの画面もスムーズに切り替わり、喋りもスムーズで手慣れた感じがあったので初体験とは驚いた。準備が大変だったに違いないと感じた。また、「このオンライン開催が成功すれば様々な可能性が広がる」と気負いも語っていた。

続いて「今回は3ゲームを行い、最後まで生き残った人が勝利。1ゲームあたり20~30分で、負けた人はYouTubeでゲーム実況を見てほしい」というアナウンスがあった。ゲーム実況というものを見たことがないのでどんなものになるのだろう?と楽しみになった。

戦闘開始

Round1 出足まずまず10位

早速ゲームを開始するため、ルームに集まるように指示された。PUBG MOBILEにはルームという機能があり、そのルームの中の人達だけで対戦することが可能だ。若干名がルームに入るのに戸惑っていたが、5分ほどで30名ほどがルームに集まり、ゲームが開始された。(45名の中には運営や関係者もいてゲームに参加しないメンバーも多いため)

いつもの待機場に移るが、PUBG MOBILE初心者が多いためかほとんどが半裸でウロウロしている。これなら1勝くらいできるんじゃないか、と期待を感じた。

輸送機に乗り、落下ポイントを選ぶ。私はできるだけ敵と鉢合わせをしないところに降下し、バリアギリギリのところを移動して敵の数が減るのを待つ、という戦略を取ることが多い。

ただ、今回は圏内にいるとダメージを喰らい続けて死んでしまうバリアが発生するタイミングを早めているらしいので、あまり辺境に落下するとすぐにバリアの中で何もできずにゲームオーバーになる可能性が高いため、中央から少し外れた集落を目指して降下した。

想定通り他のプレイヤーは周りにいないようで、安心して武器を調達する。まずは拳銃とショットガン、それとバッグ、ヘルメット、ベストなどを拾ったところで、早速安全地帯が設定されるという予告が出た。ここはギリギリ安全地帯の外だったので、急いで安全地帯に移動する。1分もかからず安全地帯にたどり着いたが、瞬時、赤いエリアが表示された。爆撃ゾーンといって、この中にいると爆撃で死んでしまう恐れがある。必死に最短距離で爆撃ゾーンから逃げる。このゲームは私の中ではもはやどううまく逃げるかで勝負が決まるゲームになっている。

PCの方をみるとYouTubeでゲーム実況が行われており、様々な視点から解説されているようで、ちらちらと自動書き起こしをみると「だれだれがやられた」「どこに誰が籠もっている」という解説がテンポよく流れていた。LINEのオープンチャットも参加しない関係者や既にリアイアしたプレイヤーたちで盛り上がっているようで、実況の凄さを感じた。ただ、そちらに意識を向けるとゲームが進まないのでどんな実況が行われていたか細かいところは把握できない。これは、プレイヤーは同時に見ながらゲームをしないほうがいいだろう。(チート行為にもなるだろうし)

爆撃ゾーンを脱出したあとも、安全地帯の縮小するスピードが想定以上に早く、とにかく安全地帯の方で移動しては隠れ、移動しては隠れ、を繰り返す。次々と撃たれたりバリアにやられて息絶えるプレイヤーが増えていき、開始から20分ほどで残り10名になっていた。安全地帯も非常に狭くなり、いつ敵と鉢合わせしてもおかしくない。身をかがめて草むらの中を慎重に進む。だが、いきなりダメージを喰らった。さっと身を起こして逃げようとしたが追加でダメージを喰らい、あっさりと死んでしまった。どうも建物の2階から狙撃されたらしい。これはまいった。私はどちらかといえば突進してとどめを刺す方なので、遠距離から攻撃されるととても弱い。全くいいところなしで退場になったのはとても無念であった。

休憩(1)

私がゲームオーバーしてからほどなくして勝利者が決まり、ヒーローインタビューが行われた。その間にプレイヤーどうしでの感想がチャットルームに滝のように流れている。「いきなり溺れてしまいました」「車の運転をしたけどぜんぜんわからなかった」などとすごい盛り上がりで、聴覚障害のある私としてはむしろオフラインイベントよりも一体感を感じた。次こそもう少しいいところを見せたい、とチョコとコーヒーで休憩をとった。

Round2 いいとこなしの27位

休憩は10分程度で終わり、またルームの案内があった。今回は先程よりスムーズにルームに集まり、またたく間にゲームが始まった。正直、想定を遥かに超えた運営のうまさで、ストレスを全く感じない。これは意外だった。

二戦目は少し敵とのエンカウントを増やして戦ってみようか、とやや中央よりに降りようとしたが、タイミングを間違えてかなり端っこに降りてしまった。しかも、安全地帯はまともに走っても間に合わない程に遠かった。一か八かとほぼ何も装備を持たずに走って安全地帯に向かおうとすると、たまたまガレージの中にサイドカーを発見した。これに乗れば間に合う!と早速搭乗するが、運転は苦手でうまく安全地帯へハンドルを向けることすら苦労する。なんとか微調整を重ねながら運転し、安全地帯に到着した。

サイドカーから降りて近くで武器を調達しよう、と家に入ったら、いきなり銃撃された。たまたま誰かと鉢合わせしてしまったようだ。たった数分でなにもいいところなしに死んでしまい、ついうなだれてしまった。運が悪いにも程があるし、足音や至近距離での発砲音が聞こえないもどかしさも感じた。

残った時間はゲーム実況をじっくり見ていたのだけども、実況の別城さんや小林さんの軽妙な語り口と加藤さんの相槌で進むトークがとても面白い。どこにだれがいて、どういう戦略で戦っているのかを考察したり、それぞれの武器の特性の解説をしたりしていて、勉強になることばかりであった。昔、テレビのスポーツ中継には字幕がついてなくて、スポーツの何が面白いかわからなかったんだけど、最近になって字幕がついた途端「スポーツってこんなに面白いんだ」と衝撃を受けた感覚を思い出した。なるほど、たしかに「e-Sports」とはなのだなぁ、と納得した瞬間であった。

ゲームも佳境に入り、YouTubeでは複数のプレイヤーを切替えつつ「気づいてないですね」「あ、見逃しましたね」「狙撃がうまいですねー」という実況に見入っていた。皆さん、初心者とか障害者という前に純粋に面白かった。鳥越さんも「これはいい勝負になっていますよ」と興奮気味に話していた。

結局、このゲームも第1回目に優勝した方が最後まで生き残って勝利したが、けっこうやり込んでいるのかとても狙撃がうまい方であった。やはり自分は練習が足りないなぁ、と反省した。

休憩(2)

2回目の休憩は1回目のそれよりもたいへん盛り上がり、自己紹介のようなものを行う人も現れた。私もエナジードリンクを飲んでドーピングをしながら自己紹介をしたのだけども、自分の顔写真を送信しようとしたら間違えて個人情報が書いた資料を送ってしまい大混乱が起こる、というハプニングを引き起こしてしまった。(すぐに運営に消してもらいましたが、本当にすみませんでした)

Round3 車内で狙撃され14位

ほどなくして3戦目が開始。今回は関係者も含めて参加OKとなり、38人ほどが参戦した。

私は「恥を晒したからにはなにかいいことをして帰らないと面目丸つぶれである」と意気込んで挑んだ最終戦に向かった。今回もやや遠くに降りて、少しずつ中央に向かう戦略を取る。武器もショットガン・サブマシンガン・拳銃という取り合わせでバランスが良い状態になった。極力、人に出会わない丘や森を抜けて安全地帯の隅に位置し続ける。少しずつ生存者が減っていく。しかし、またしても急速に安全地帯が減っていくのにあせり、たまたま見つけたバギーカーに搭乗し安全地帯に進んだら、いきなり激戦区に出くわしたようだ。プレイヤーが運転する車に襲われたり、走り回っている敵に発砲されたりという状態になってにっちもさっちも行かず、とりあえず適当なところで降りようとしたら岩にぶつかって進めなくなる。そこをまた狙撃一発で倒されてしまった。今回も全くいいところなしで今回のイベントは終わってしまった。

全体の感想

私自身は無様に終わったとはいえ、今回のイベントは障害のあるなしに関係なくとても楽しく、実況を担当した鳥越さんも「障害の有無に関係なくここまで盛り上がったのにはとても驚いた」というコメントがあった。私も同意見だし、LINE オープンチャットの盛り上がりについてもどこの障害があるのだろう、というほど活発だった。下手にオフラインイベントを開催するより、こういうスタイルのほうがよほど自由度が高いのではないか、と感じた。

最後に、加藤さんから「初めてのスタイルでの開催に関わらず、みなさんの熱い応援があって嬉しかったです。今回の件をフィードバックしてより良いインベントにして定期的に開催していきたい」と今後の展望をもって締められた。

閉会後もチャットルームは1時間ほどに渡って興奮冷めやらぬ参加者の書き込みですごいことになっていて、こういう機会は本当に貴重だと感じた。

これからの展望について

ePARAでは5月を目標にPUBG MOBILEの大会を開催する予定だ。このイベントはただの障害者のeスポーツの大会ではなく、障害者の就労につながる工夫を凝らしたものになるはずだ。私もライター・選手として参加する予定なので、それまで腕を磨いておきたい。あと、変なトラブルを起こさないように気をつけたい。切に。

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くらげ

山形県出身、東京都在住のサラリーマン兼物書き。 聴覚障害・発達障害(ADHD)・躁鬱病があり、同じく発達障害・精神障害・てんかんがある妻(あお)と自立して二人暮らし。 著書「ボクの彼女は発達障害―障害者カップルのドタバタ日記 (ヒューマンケアブックス)」「ボクの彼女は発達障害2 一緒に暮らして毎日ドタバタしてます! (ヒューマンケアブックス)」があるほか、様々なコラムや記事を執筆している。 公式note(https://note.com/kura_tera)

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