プレイレポート

聴覚障害者くらげのPUBG戦記 ~初陣編~

PUBGをプレイするきっかけ

私は間違えても運動神経が良い方でもなければ、テレビゲームを豊富にやっている人間ではない。むしろ、全然ゲームをしない範疇に入る人間だし、格闘ゲームに至っては子供の頃にコマンドをどうしても覚えることができなくてゲームが上手い人に文字通り手も足も出なくて完敗した思い出しかない。つい、この前まで私の人生に「eスポーツ」という言葉が絡んでくるとは夢にも思わなかった。

しかし、ひょんなことから「障害のあるライター」として加藤氏が率いるePARA運営委員会に関わることになった。(私は聴覚障害とADHD、それと精神疾患のある当事者だ)

「ePARA運営委員会」は障害者の雇用促進のためのeスポーツ大会「ePARA」(イーパラ)を運営するために元裁判所書記官の加藤大貴氏が立ち上げた団体だ。

「eスポーツ」とは「いわゆるテレビゲーム・パソコンゲーム」などを競技として行うことで、「エレクトロニック・スポーツ(electronic sports)」の略語で、近年、全世界で急速にeスポーツのプレイヤーも観客も増えている。経済規模も増大しており、この急成長に様々な可能性をみている方々は少なくない。

加藤氏もその一人で、「eスポーツには、障害を越えて能力を発揮できる利点がある。eスポーツを通して障害を有無で判断しない世界を作りたい」と考えており、そのためのイベントが「ePARA」というわけだ。

クラウドファンディングで資金調達を行い、昨年11月に初めて行われた障がい者eスポーツ大会 ePARA2019大会では、乙武洋匡さんをゲストに迎え「ぷよぷよ」や「鉄拳7」の対戦マッチを行い、当日の来場者の盛り上がりに加藤氏は大きな手応えを得たという。また、実際にこの大会を通じて障害のある方が2人ほどの就労が決まったそうだ。

そんなePARAの次回の大会のレポートを書ける障害者の方を紹介してほしい、という話が回り回って私に白羽の矢が立ったわけだ。

打ち合わせでは「次の大会はPUBGでいきたいんですよね」と加藤氏は次回の構想を話してくれた。

PUBG(PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS)は最大100人のプレイヤーが同時に一つのマップで戦い最後に生き残ったプレイヤーが勝利するTPS(サードパーソン・シューティングゲーム)のバトルロイヤルシューターだ。

WindowsPCやXbox One、PlayStation 4に加え、スマホ版の「PUBG Mobile 」など様々な入り口があること、シナリオもなく「最後まで生き残ったら勝ち」(より多くの敵を倒したら勝ちではない)というシンプルながら戦略性の高いルールが支持され、プレイヤーの総数がなんと4億人を超えたビッグタイトルになっている。

eスポーツとしても人気が高く世界各地で大会が開催されており、中には優勝賞金が2億円を超える大会もある。

加藤氏から「くらげさんはPUBGはやったことがあります?」と聞かれたので、「名前は知っているんですけど、プレイしたことはないんですよ」と答えた。

私は幼少期より戦車や銃の写真を眺めるのが好きで、サバイバルゲームを嗜んだこともある。耳が悪くなかったら間違いなく自衛隊に行っただろう、という人物なのであるが、FPS(First Person Shooter)やTPS(Third Person shooter)のようなアクションゲームはあまり得意ではない。

この手のゲームは視界が限られる分、音を聞いて敵の動きを把握して攻撃する必要があるのだが、音自体は聞こえても音の方向性や強弱がわかりにくい私にはこの時点で大きな不利が発生する。

実際、メタルギアソリッド(MGS コナミから発売された戦術諜報アクションゲーム)やCall of Duty(日本ではスクエアエニックスから発売された、戦争をテーマにしたFPS)などのゲームはかなり簡単なモードにしてなんとかクリアできるという腕前で、サドンアタック(韓国のオンラインゲーム会社GameHiが開発したオンラインFPS。2019年にサービス終了。)などのオンラインゲームに至っては開始すぐにゲームオーバーになってしまうのでトラウマになっている。

リアルのサバイバルゲームのときはチームで動いていたので動きを教えてくれる仲間もいたけれども、オンラインゲームだとボイスチャットも使いにくいのでチームプレイも難しい。

というような説明をしたら、加藤氏は「逆にそれは面白いですね。障害があることでゲームが楽しめないなら、そこに改良の余地がありそうですし、逆に聞こえないことで新しい遊び方ができるかもしれませんね」と興味を示した。

調子に乗って私が「例えば全員無音でプレイしたら私は強いかもしれませんが、やってみないとわからないですね。もしかしたら、聞こえないことで開発できるプレイスタイルもあるかもしれません」と続けて話したら、加藤氏は「くらげさんもeスポーツの大会出ませんか?」といきなり爆弾発言を投下してくれた。

「PUBGは世界的なゲームですが、アクセシビリティ(情報のバリアフリー)の観点から考証する機会はそんなにないはずです。ぜひ、くらげさんの独特の観点からプレイして、記事を書いてほしいし、可能なら次の大会にも出てほしいです」と加藤氏。

正直、それほど暇でもないのだが、軍オタとしてPUBGに興味があったのは事実。妻にも「これは仕事なのだ」と言いつつ堂々とゲームができる機会が…という思惑のもと、合意した次第である。

くらげがPUBG Mobileをプレイしてみた

そんないきさつがあり、まずは「PUBG Mobile」をプレイしてみることになった。

PUBG MobileはPC版と基本的なルールは変わらず操作方法などをスマホなどに合わせたアプリで、基本無料で遊べる。(ゲーム内のスキンと呼ばれる服などは課金で購入できる。今のところ私は課金プレイはしていない)

準備は簡単で、PUBG Mobileの公式サイトから「App Store」か「Google Play」へ行き、普通のアプリと同じようにインストールしてアカウントを登録すれば遊べようになる。流石に容量が大きいゲームだが、インストールからゲーム開始までは20分もかからなかった。

私のスマホは「Pixel 3」という比較的ハイエンドモデルなので特に問題なく動いているが、iPhone7以前の機種や、格安Androidスマホなどでは快適に動かないモデルもあるようなので注意が必要だ。(画質やフレームレートは一定の範囲で変更が可能)

PUBG Mobile を立ち上げて、まずアバターの外見を設定する。アバターで性能が変わることはないので好きなように設定するといいだろう。私も特に目立つところのない男性の外見にした。

ホーム画面に戻ると下着にAKMという銃を構えた男性のアバターがいた。とても寒そうなので早く何を着せてあげたいのだが、どうすればいいかわからないのでとりあえず下着のままでプレイすることにした。(少しレベルが上がった現在も設定がわからず下着のままだ)

(まるで変質者だが服の着せ方がいまだにわかっていない)

色々とチュートリアルなどもあるのだけども、とりあえず実戦をしてみないと理解できないことも多いだろうとゲームをスタートしたところ、どうやら待機所のようなところに画面が移り変わった。60秒はそこで過ごすのだけども、ほぼ同じレベルの人たちが集められるのか、凝った装備をしている人はいない。半数は下着だけでウロウロしているのは戦闘に行くというより浮浪者の群れかなにかに見えてしまう。もちろん私のキャラも周りからみたらその群れの一員なのだが。

(目の前のプレイヤーは下着にマスクのようなもの。センスが問われる)

細かい説明は他の記事に譲るとして、とりあえずアバターを動かしてみる。画面左下のボタンを動かすと上下左右に移動し、右半分の画面をなぞると視点が移動するようだ。基本的な移動はこれだけで、あとは拳のボタンを押すとパンチをするくらいか。移動するだけで指がもつれそうになるゲームもある中、シンプルに洗練されている感じを受けた。

60秒が経過すると次は輸送機に載ってフィールドに向かうシーンが現れた。輸送機からそれぞれがパラシュート降下を行い、着地したところからゲームスタートのようだ。

適当なところで飛行機から飛び降り、パラシュートを開いて集落の近くに着陸するように操舵する。しかし、着地するまで意外と時間がかかり、激戦地になりそうなところだといち早く着地しないと武器などが確保できずに倒されそうだなと心配になったが、今回はたまたま人が少ないところに落下したようだった。右画面をスライドして辺りをさっと見回したが特に人影のようなものは見えなかった。

PUBGは初期装備が無く、まずは武器や防具などを探さないといけない。一番近くの建物のほうへ走り、ドアを開けて中に入り込んだら、S1897(ショットガン)とP92(ハンドガン)が落ちていたのでこれを拾って装備した。正直、ライフルが欲しいのだけどもこの際は仕方がない。何が手に入るかがわからないのがこのゲームの魅力でもあるのだろう。

ところで、この時点で全く音は出していない。人工内耳という特殊な機械を使えばある程度は聞こえるのだが、逆に音を聞くことに意識を使って画面に集中できないからだ。そのため、どのようなBGMや環境音なのか全くわからないし、周囲でどのような音が鳴っているかもわからない。とにかくこまめに視線を動かしてなにか動きがないか意識を集中するので目が疲れてくる。

すぐに射撃ができるようにハンドガンをすぐに撃てるように構えながら外に出た。どこに敵がいるか確かめるために丘の上へ建物や岩などの遮蔽物沿いに移動しようとした。その瞬間、いきなり画面下後方に赤いダメージ痕が表示された。真後ろから攻撃されたようだ。攻撃されるとどのあたりからダメージがあったが直感的にわかるのはこういう場合とても助かる。

慌てて真横に逃げると、襲撃者もそれほど慣れていないのかダメージが追加されることはなかった。2〜3秒ほど逃げて振り返り、派手にフラッシュが光っているあたりを狙ってハンドガンを連射すると相手の射撃が止まった。敵の姿ははっきりと見えていて、それほど精密に狙いをつけなくてもあたるだろうとショットガンに切り替えてエイムポイントを頭部に動かし、弾丸のアイコンのあるボタンを押して射撃した。運良くヘッドショットが決まり、これで1キル。初めてなのに殺れちゃった!ビギナーズラッキー!と喜ぶ。

(現在のプレイでもショットガンでヘッドショットは持ち技だ)

しかし、接近されてもほぼ気づかず至近距離で撃たれるというのはやはり聴覚障害があるゆえのハンデになりそうだ。普通だったら足音などで気づくかもしれない。慎重に動かなくては。

敵を片付けたところで、丘の上へ向かった。スマホの画面は大きくないので、見える範囲も広くはなく、主戦場になるところから遠いのか他の敵の影も見えない。どうしたものか、と考えていると「安全地帯の範囲が縮小されます」という字幕が表示された。100人がずっと端っこにいたら勝負が決まらないのでマップの範囲を狭めて強制的に移動させないといつまでもゲームが終わらないのだろう。

安全地帯への方向と距離がマップに映るが、この時点で私はかなりマップの端にいた。大急ぎで安全地帯の方向へ走るが、青いバリアが迫ってきてすっぽり覆われてしまった。このバリアの中にいる限り、継続的にダメージを受けるようでガンガンが体力が減っていく。走っても走っても追いつかず、そのまま体力が0になりゲームオーバーになった。敵にやられるのではなくバリアに殺されるとはちょっと想定外だったのだが、1キルはできたのでだいぶ満足できた初戦だった。

(険しい顔でPUBGに熱中するオッサン)

聴覚障害のあるゆえの課題

というわけで、PUBGの初陣を終え、仕事や家事の合間にちょくちょくプレイしている。今の所、勝利(ドン勝)はまだしていないのだけども、PUBGの面白さは「倒すこと」よりも「生き残るほう」がずっと大事だということはわかってきた。それ故、極力混戦を避けてプレイヤーが減るのを待ち、安全地帯に気をつけて終盤に攻撃を仕掛ける、というプレイスタイルになっているが、10人までは生き残れてもあと一歩のところで負けてしまう。先にも書いたが、接近戦になるとどうしても音によるサーチで差が出てしまうからだ。

もしかしたら他の画面に映っているインジケーターをみればある程度はカバーができるかもしれないが、今のところ対策はあまり突出せず慎重に探索をつづけていくことくらいしかスキルが無いので色々研究していきたい。

(岩陰をうまく使って移動するのは基本テクニックだと思う)

また、もしチーム戦があればボイスチャットによる連携もあるのだろうけど、これもどうすればいいのかわからない。人工内耳・補聴器をつけて音量を上げてプレーすればある程解決するかもれないが、音を意識すると見ることがおろそかにあるのでこのあたりも課題だ。

「ePARA」でPUBGを行うとき、どのようなレギュレーションになるかわからないのだがある程度障害の程度を合わせたチームで戦うと面白くなるかもしれないな、と感じている。

障害者eスポーツについて思うこと

eスポーツは日本ではまだまだ「ゲームオタクの趣味」の範疇と考えている人も多い。しかし、世界を見れば大金が動く世界になっていてプロゲーマーも次々登場している。そして、加藤氏が考えている通り、工夫次第では障害があっても健常者と変わらないレベルの戦いができるし、障害のある方がプロゲーマーになることも考えられる。そういう意味では、障害者の可能性の一つとしてプロゲーマーを目指す、というのはあり得る。(もちろんそれはとてもハードな道だけど)

しかし、障害者がeスポーツを行うことはなにもプロゲーマーになるだけがメリットではなくて、障害者と健常者が「同じ土俵で戦う」ということそのものに意義がある。

障害者というカテゴリに入るとどうも「守られる」「お世話される立場」となり、対等に戦う・対等の仲間になる、という機会がとても少なくなってしまうのだけども、eスポーツを通じて対等の交流が進み、それをきっかけに障害者への理解が進むことを望みたい。

そういう期待を込めて、障がい者eスポーツ大会 ePARA2019大会の経験を生かして開催される次回のePARA2020大会がどのように開催されるか楽しみにしていたいと思う。 あ、あくまでの仕事なんだからね!?ゲームをしてるのも仕事なんだからね!?

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くらげ

山形県出身、東京都在住のサラリーマン兼物書き。 聴覚障害・発達障害(ADHD)・躁鬱病があり、同じく発達障害・精神障害・てんかんがある妻(あお)と自立して二人暮らし。 著書「ボクの彼女は発達障害―障害者カップルのドタバタ日記 (ヒューマンケアブックス)」「ボクの彼女は発達障害2 一緒に暮らして毎日ドタバタしてます! (ヒューマンケアブックス)」があるほか、様々なコラムや記事を執筆している。 現在、障害者専門クラウドソーシングサービス「サニーバンク」(https://sunnybank.jp/)の広報を務めている。 公式note(https://note.com/kura_tera)

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