ePARAユナイテッド所属のライター・アフロが綴るePARAユナイテッドSEASON2で生まれた3つの”物語”。今回は3つ目の物語【神の手・はる編】です。
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転機となった高1の夏ーポジティブな姿勢と創造力が生んだ”神の手”ー
「私の左手はふつうの左手じゃないので、大丈夫です^^」
面談で、彼女は言った。この時はまだ誰も、その意味を知る由もなかった。
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彼女との出会いは、2022年秋。たまたま近所に住んでいたアフロを、彼女が見つけてくれたことがすべての始まり。
はるは以前から、SNSでアフロの存在を知っていた。たまたまそこに書かれていた学校名を見て、「この人絶対近所にいる!」と人物像が一致した。
互いの自宅が3分圏内。そんなこととはつゆ知らず、はるからのアクションを受けて連絡を取るようになった私たちは、互いが主催するオンラインイベントを行き来した。画面に映る彼女は、いつも柔和な笑顔を浮かべていた。それでいて明朗快活。滲み出る意志の強さに、溢れ出る謙虚さと賢さ。
そんな彼女の口から発せられた事実。自ら車も運転するという彼女が、希少難病を患っているということが、にわかに信じられなかった。だって、オンラインの対話では車椅子に乗っていることすら分からなかったのだから。
突然動かなくなった右手
高校1年生の夏休み初日。はるは、目覚めてすぐに身体の異変を感じた。
「あれ?右上肢に力が入らない…」
以前から別の治療を行ってはいたものの、それはあまりに突然の出来事だった。普通ならパニックに陥り、取り乱したとしてもおかしくはないこの状況。彼女の脳裏にはじめに浮かんだのは、実に意外なものだった。
「(大量の)宿題、どうやってやろう…」
エッ、宿題…?「この極限状態の中でそれはないでしょ」と思ってしまったのは筆者だけではないだろう。しかし、こうした思考力こそ、彼女の大きな武器なのだ。
起きてしまったことに悩まず、次に進む。目の前の課題にとことん向き合い、今できることを考える。だから、悩んでいる時間はないのだという。
事実、青春煌めく高1の夏、はるは類希なる努力で”利き手交換”を完了させている。右手から左手へ。自分の利き手を移し替えたのだ。すべては宿題を終わらせるために。
(※後日、その宿題を完遂してきたのは彼女だけだったと聞いた)
徐々に神経難病と付き合っていく中で、時には自身の筋力低下を感じることもあるという。それでも、起こりうる1つひとつの出来事に正面から向き合い、未来を切り拓こうとする彼女のスタンスは変わらない。
チームに加入し、デビューへ
ある日、はるにePARAユナイテッドへの加入の話を持ち掛けた。彼女の答えは早かった。
「はい!慣れてないけどやってみたいです!お誘いありがとうございます」
誘った人を安心させてくれるほどのポジティブな姿勢。「片手でのコントローラー操作は未知数」だとか、「過去にトライしてくれた人はいるから大丈夫だよ!」とか、そんな情報も不要なくらい、この挑戦を喜んでくれた彼女。そんなはるを見て気付いた。
「失敗したっていい。それはむしろ、成功のための学びなんだ。」
はるは正式なメンバーとなり、来るべき今大会に向けて欠かさず練習に参加。監督やキャプテンをも唸らせるスピードでメキメキ上達し、デビューを勝ち取った。そして、極めつけはその飽くなき向上心。自身にさらなるレベルアップの可能性があると見るや、海外のメーカーに特殊コントローラーの製作を依頼。到着から3日で自分のものにしてみせた。
さらには、日々の練習内容を記録した”はるNOTE”を自主作成。ここには監督やコーチ、先輩メンバーからの助言がびっしりと書き込まれている。
後日。デビュー戦を終えた彼女に聞いてみた。
「車椅子になって悪かったことって、ある?」
「うーん、特に考えたことはないです。車椅子になってしまったものは仕方ないし、なったらなったで良いこともあるし、悪いこともある。でもそれはどんな人もみんな一緒だから」
by はる
変えることができない運命は素直に受け入れつつも、より良い明日のために創造力を働かせ、変化を恐れず前向きに努力する。
そのポジティブな姿勢とたくさんの人たちとの繋がりが、はるの人生をますます輝かせてくれることだろう。
もちろん、ePARAユナイテッドでの今後の活躍も要チェックだ。
Exceed ーこれから始まる物語ー(謝辞)
ePARAユナイテッドSEASON2で生まれた物語【神の手・はる編】、いかがだったでしょうか?【スマイルインフルエンサー・あーりん編】および【足でコントローラーを操る男・たけちゃん編】もぜひご覧ください。
今回の活動に共感・背中を押して下さいましたYogibo様、日々の練習や今大会運営にあたり高性能のBTOパソコンをご提供くださっているSycom様、謹んで御礼申し上げます。また、今回の企画を快諾して下さり、実現に向けて最後の最後まで尽力して下さった川崎フロンターレ関係者ならびにサポーターの皆様。そして、どんな場面でもチームのためにエースとしてゴールを決め、渾身のガッツポーズで会場を盛り上げて下さった小林悠選手、心より感謝申し上げます。ご自身も大変な状況の中、1人ひとりに心を寄せて下さるその人柄に、チーム全員が心を打たれたことは言うまでもありません。
ここで、そんな小林悠選手からいただいた”もう1つの物語”を皆様にご紹介したいと思います。
そして今度はフロンターレイレブンと試合を出来たら最高だと思いました😌👍
小林悠選手 公式ブログより抜粋
僕はもちろんePARAユナイテッドチームで😁💪笑
川崎フロンターレのイレブンと試合!?!?
しかも小林悠選手は、ePARAユナイテッドの一員として!?!?
そんな夢のような未来は訪れるのでしょうか。
今回のイベントで、想像を超える舞台に選手である私たちも驚いています。しかし同時に、もっともっと「新しい景色を見てみたい!」メンバー一同、そんな想いに駆られています。
発端は、1人の選手(青年)の想いに突き動かされてスタートした本プロジェクト。多くの方々のお力添えによってたくさんのドラマが生まれ、最高の空間となりました。ePARAユナイテッドにはまだまだ魅力的な選手がたくさんいます。今後ともぜひ、選手個々が持つ無限の可能性を披露することができる素晴らしい舞台を、私たちと一緒に創り上げていただけたら幸いです。
こうして多くの応援をいただいていることを幸せ感じ、皆様の応援を力に変え、ePARAユナイテッドはこれからも走り続けてまいります。
(文:アフロ/ePARAユナイテッド所属、CB,#4)
Photo by 方司音