ePARA大会 イベントレポート

全盲の私が「鉄拳7」で戦った先に~ブラインドeスポーツの幕開け~

皆さんこんにちは。ePARAから誕生した盲目の戦士、直也です。2020年11月22日、第1回ePARA CHAMPIONSHIP ver:Aim Highの後半戦、格闘ゲーム部門が開催されました。当日のライブ配信、後日のアーカイブをご視聴くださった皆様、ありがとうございます。今回は、私を含めて2名の全盲プレイヤーが出場し、SNSやニュースサイトでたくさんの方に取り上げていただきました。そして大会直前に配信されましたePARAの記事、全盲でも「鉄拳7」で戦いたい! Team-ePARAの新たな挑戦では、大会当日までにチームePARA全体で四苦八苦したことや挑戦の理由が書かれています。また、大会後には全盲プレーヤーが鉄拳7大会に参戦 見えない相手に決めた魂のコンボ(ゲームクロス)も執筆いたしました。今回は、大会当日の様子と、大会を通して盲目の戦士が実感した、ブラインドeスポーツの魅力と今後の課題についてレポートします。

盲目の戦士・直也のイメージ画像。サングラスを付け、マイク片手に笑顔で親指を立てている。

大会中のTeam-ePARAの動き

まず、今回はオンラインでの開催であるため、対戦中以外でもどのような体制でチームが動いていたのか、ざっと説明をいたします。

受付直前から終了後までdiscordで常時接続

全盲でも「鉄拳7」で戦いたい! Team-ePARAの新たな挑戦でもお伝えしましたが、全盲プレイヤーとサポーターはdiscordの画面共有を用いて協力します。今回はエントリーから当日の対戦画面に入って対戦をするまですべてがオンライン。大切な連絡を見逃すのを防止し、トラブルが起きたときに誰かがフォローをしやすいようにするため、大会直前からdiscordで選手とサポーター全員が接続しておくようにしました。

リラックスのために雑談

自分たちの試合がないときは他チームの試合を配信で視聴し、チーム内で情報交換を行っていました。しかし、どうしても初参戦というのは緊張してしまいます。できるだけ緊張を和らげるために、いつもの練習のときに行われている軽いジョークが飛ぶことも、大会とは関係ない雑談をすることもたくさんありました。余談ですが、視覚障害者が行うスポーツ(特に球技)はボールの音やフィールドに飛び交う声などの音が重要になるため、会場で試合を見ている間は観客の声出しが禁止になっている場合があります。その静けさが独特の雰囲気を醸し出しているといってもいいぐらいです。私はずっとその経験をしてきたので、対戦相手の試合を見ながら声が出せるというのはとても新鮮な感じがしました。また、今回はオンラインで行われる大会なので家から参加したのですが、大会独特の雰囲気もない試合前というのはいつも通りでいられた反面、気持ちの切り替えが難しかったです。

全盲プレイヤーの対戦中に行ったこと

今回、私は2試合に出場しました。

第四試合:VS 愛しとーと 先鋒 e_supple_Ryu選手 
第六試合:VS ビーウィズ 先鋒 bunmg選手

直也が使用したキャラクター ギース・ハワード

サポーターとの連携で実際に行ったことは先の記事で紹介されていますが、チーム全体としても全盲プレイヤーが出場する試合とそうじゃないときで動きが異なっていましたので紹介します。

サポーター以外はマイクをミュートに

スポーツと言えば応援はつきもの。2020年はCOVID-19の影響により無観客試合が各地で開催され、応援の重要性を感じる1年となりました。しかし、全盲のプレイヤーの対戦中は話が違ってきます。

  • たくさんの声が聞こえるとプレイに集中できない
  • 何気ない一言が迷いにつながる
  • サポーターの声が聞こえなくなる

このような理由から、全盲プレイヤーの対戦中はサポーター以外はマイクをミュートにするようにしました。ほかのプレイヤーの対戦中はミュートにせず、全員で生の声を届けました。なお、私はどうしても沈黙に耐えられなかったのでプレイ中に独り言を言っていたのですが、対戦に関係のあることはサポーターが答えてくれました。対戦の直前にマイクをミュートにしようとするとパソコンがフリーズする恐れがあったので、ミュートにできなかっただけなんですけどね。

起死回生の一撃を決める直也

ブラインドeスポーツの課題はサポーターとプレイヤーの連携

こうして、無事に大会を終えて感じたことは、とりあえずやり切ったということです。大会の準備から当日までを通して振り返ると、やはりプレイヤーとサポーターの連携を強化していくことが最初の大きな課題だと感じました。

視覚情報を補うだけでは勝利できない

全盲の私たちは視覚情報が不足しているため、音声による補完は必要です。しかしサポーターからただ単に画面の動きをガイドしてもらうだけでは不十分で、時にガイドを聞いたからこそプレイに迷いが生じるときがあります。例えば、自分はあえて距離をとってカウンター攻撃を狙っているのに、敵との距離を縮めて攻撃する助言をされたとします。サポーターは画面を見てガイドをしてくれている分、自分のやり方が間違っているのではないかと戦術に自信が持てなくなり、結果として一瞬の判断に遅れが生じます。つまり、情報として必要なのはガイドではなくて戦略的な助言であり、視覚情報をただガイドするだけでは勝利を目指すことが難しいのです。

必要なのは相互理解・コミュニケーション

大会から2カ月が経過した今思う、サポーターとプレイヤーで必要なことは、相互理解とそれを深めるためのコミュニケーションです。チームとして連携して勝利を目指すためには、

  • 使用するゲームの知識がある程度備わっていること
  • 個々の使用キャラクターの特徴を理解すること
  • プレイヤーのプレイスタイル・好み・やりたいことを理解すること
  • お互いの言葉を受け入れ、信頼しあうこと

が必要です。お互いを知り、理解し合い、尊重し合ってこそ初めて息の合ったプレイができます。全盲プレイヤーとサポーターは、まるで全盲のマラソンランナーと伴走者のような関係ではないでしょうか。ブラインドeスポーツプレイヤーとして勝ち進むためにはサポーターとの息の合った連携が不可欠。勝ち進んだ先に一人では味わえない大きな喜びが待っている気がしています。

まだまだTeam-ePARAの連携は浅かった

大会当日のVS 愛しとーと先鋒e_supple_Ryu選手との対戦中にこんなことがありました。この対戦、私は3ラウンド全て落として敗北しています。しかしそのうちの2つのラウンドではどっちに転んでもおかしくないぎりぎりの戦いとなりました。その中で、私が相手をレイジ状態(残り体力20%以下の状態)まで追い詰めたとき、オンラインでつながっているサポーターから、「よし。あと一発」という声が聞こえてきました。そのときに私は、不用意にいってもガードされて逆転されそうな気がしたので、誘い出してから返り討ちにしようと思って様子を見てしまいました。その結果、返り討ちにする間も立て直す間もなく、ほんの数秒で逆転負けしてしまったのです。音声情報を受ける側の私、発信する側のサポーター、その連携の形が定まっておらず、心の準備が不十分だったために起きた現象でした。これは、「知らなくていいことを知ってしまったから消極的になったプレイ」として、チームePARA内で語り継がれています。

終盤に消極的になり、逆転負けを喫する直也

ブラインドeスポーツの幕開け ~進化するTeam-ePARA~

大会が行われたのは昨年の11月。あれからTeam-ePARAではブラインドeスポーツに関心を持つメンバーで定期的に連絡を取り合い、プレイしたゲームの話題だけでなく仕事の話や将来の展望等もコミュニケーションしています。そして、今後の挑戦に向けた企画も少しずつ進行しています。Team-ePARAのブラインドeスポーツが幕開けする2021年。一人の全盲プレイヤーとしてはもちろんのこと、Team-ePARAの一員としてたくさんの発信できるように精進していきます。引き続き応援のほど、よろしくお願いいたします。

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参考URL

筆者:北村直也
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北村 直也(きたむら なおや)

声優、エンジニア、大の野球好き。 不可能を可能にする男というキャッチコピーのもと、誰もなしえなかった「視覚障害を持つ声優」に挑戦中。その状況を日々SNSで発信しているのだが、フォロワーから「野球の人」という印象が持たれるほど、野球ツイートも熱い!さあ、野球アニメに出よう。

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