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クロスライン

笑顔、挑戦、感動が生まれる旅。全盲の新入社員、実里が感じたクロスライン-ボクらは違いと旅をする-

ーはじめまして。私は、先天性の視覚障がいがあり、18歳で全盲になった22歳の実里と申します。

私は、2023年4月より株式会社ePARAに入社いたしました。これから「本気で遊べば、明日は変わる」というePARAのキャッチコピーのもと、関わるすべての人の笑顔を咲かせられるような働きをしてまいります。

この記事では、一般財団法人トヨタ・モビリティ基金が主催した「Make a Move PROJECT」からePARAが採択された「クロスラインーボクらは違いと旅をするー」SEASON2が本格稼働するにあたり、SEASON1の振り返りと今後の意気込みを、私の視点から語っていきます。おつき合いいただけますと幸いです。

Make a Move PROJECTのMobility for ALL部門のバナー

旅に参加することになったきっかけ

まずは、私がクロスラインSEASON1に参加することになったきっかけからお話しします。

私は、2022年4月に開催された「心眼CUP powered by SYCOM【ストリートファイターV チャンピオンエディション】」と、同年5月に開催された「ePARA CARNIVAL 2022 SPRING」を見て、株式会社ePARAに興味を持ち、自分も格闘ゲームをやってみたいという気持ちが高まったことから、「Blind Fortia」に加入いたしました。Blind Fortiaはバリアフリープロジェクトチーム「Fortia」の1ユニットで、視覚障がい者によるブラインドeスポーツチームです。

私の加入が決まった7月末、Fortiaはまさしく本企画に向けた準備の真っ最中。私にも本企画への参加のお誘いがありました。とはいえ、当初は「モータースポーツについて何も知らない上に、レースを目で見ることができない私にはハードルが高いのでは」と不安で、お断りしようかとも考えていました。

しかし、本企画の目的の1つに「障がいがあってもモータースポーツは楽しめるのか」の実証があると知り、それならば、見えない・知らない私が現地参加することにも大きな意味があると感じ、参加を決めました。

クロスライン シーズン2のバナー

SEASON1の振り返り

本企画は、旅を通じてさまざまな障がい当事者の移動の可能性を探ることを目的として始まった実証実験的なプロジェクトです。2022年10月15・16・17日の3日間、日本全国から多くの障がい・難病当事者とその支援者など計50名以上が岡山の地に集まり、以下のような企画を実行しました。

1日目:レーシングシミュレーター「iRacing」を障がい・難病当事者がプレイする「ボクらのeスーパー耐久レース」

2日目:岡山国際サーキットで実際にレースを観戦する「ボクらのスーパー耐久レース生観戦」

3日目:グループワークで旅を振り返る「ボクらのMobility for ALL」

上記のスケジュールを通して、すべての参加者がそれぞれの立場からモビリティの可能性について考える旅となりました。

それでは、ここから私が本企画に参加して感じたことを3日間のスケジュールに沿ってお話していきます。

1日目 長距離移動のハードルを越えた日

この企画の目的の1つは「移動の可能性を探ること」でした。

地元長崎から岡山駅までは新幹線を乗り継ぐ一人旅。一人で県をまたいだ移動をするのは初めてで、電車を乗り継ぐ移動も初。経由する駅には予め移動支援を依頼していたとはいえ、見えない中での長距離移動はハードルが高く、岡山行きが決まったときから緊張していました。

しかし、各駅で丁寧な対応をしていただいたことで、全盲であっても安全に移動できる体制が整っていることを実感できました。また、新幹線によって車掌さんの搭乗人数が違うため、車内でのサポートを依頼したければ利用する新幹線を選ばなくてはいけないことや、デッキとお手洗いに近い座席をとれば車内の移動にサポートはいらないであろうことなど、今後に役立つ情報を得ることもできました。

本企画に参加しなければ、一人での長距離移動は、私にとってハードルが高く怖いことのままだったと思います。そんなハードルを越えて、私の移動の可能性を広げてくれたことに感謝でいっぱいです。

運転への憧れ

無事に岡山駅に到着して、最初のイベントは「ボクらのeスーパー耐久レース」。

実里はスマートフォン、NAOYAは点字ディスプレーを使いながら司会を務める
同じく全盲の社員NAOYAさんと初めての司会を務める

あらゆるハンデをもったドライバーたちがリレー形式で熱い走りを見せてくれました。私は応援側でしたが、ドライバーの中には本企画をきっかけに初めてレーシングシミュレーターに挑戦した人もいて、特に全盲のNAOYAさんの走りは、私のドライバー心に火をつけてくれました

横からハンドル操作をサポートしてもらいながらプレイするNAOYA
ハンドル操作をサポートしてもらいながら「iRacing」をプレイするNAOYAさん

見えなくても、自らペダルを踏み、サポートしてくれる人とともにハンドルに触れながらマシーンを動かす。絶対にできないと思っていた「運転する」という夢を、eスポーツでなら私も叶えられるかもしれないと、とてもわくわくしました。SEASON2では、私もレースに参加できるように特訓したいです。

車椅子ユーザーや視覚障がい者など、実生活ではハンドルを握る機会のない障がい当事者であっても、eスポーツの世界であればドライバーになることができるという希望に満ちた可能性を見せてくれた時間でした。

2日目 モータースポーツに魅せられた日

2日目は、いよいよ生のレース観戦。レースの様子が目で見えない中、数十台の車が走るレースをどのように楽しむのかを探ることが、この日の私の目標でした。

そして、実際にレースを観戦して感じたことは「モータースポーツは見えなくても超楽しい!!!」ということでした。車種や積んでいるエンジンによって違う車の音、コースのどこで観戦するのかによって変わるレース音、身体に響く車の振動。生観戦だからこそ感じられることがたくさんあって、最高の経験になりました

特に、私が心をつかまれたのは、コースの曲がり角辺りでのレース観戦です。曲がり角付近になると、車が速度を落として、曲がりきると再び速度を上げていくのですが、速度を落とすことで車ごとのエンジン音の違いをじっくりと聞き分けることができるのに加えて、速度の上げ下げとハンドルさばきというドライバーの技術力が求められる動きを肌で感じられるため、レースを聞いて楽しむにはうってつけの場所だと思います。

コースのカーブの近くに立ち、音を聞く様子
コースの曲がり角でエンジン音の違いと技術力を楽しむ

3日目 「違いと旅をする」を実感できた日

3日目は、ここまでの旅を振り返るグループワークを行いました。

事前準備から本番後までの行動、接点、感情をそれぞれの参加者がふせんに書き出し、1枚の大きい紙に貼って「カスタマージャーニーマップ」を作成していく様子
みんなのさまざまな意見を出し合って「カスタマージャーニーマップ」にまとめる。

それぞれが旅で感じたことを共有する中で「車椅子ユーザーの長距離移動は必ずしも福祉車両である必要はなく、他の人と一緒にバス移動できたらもっと楽しめると思う」という意見が車椅子ユーザーの方々から出たことで「車椅子なら福祉車両が安心だろう」という固定概念を壊してもらうことができました。他にも「視覚障がいがある人としては行動を共にする支援者とは旅の前に顔合わせができたらありがたい」や「行動面の支援は必要ないが、初対面の人たちとのコミュニケーションに自信がないため、そういった方向の支援があるとありがたい」など、当事者にしか気がつけない意見が多く出されました。

この意見交換を行ったことで、SEASON2以降でより良い旅をつくっていくための大切な気づきを得ることができたと思います。

SEASON2への意気込み

私は、4月からePARAに入社し、クロスラインのSEASON2にもアシスタントディレクターとして深く関わることになりました。SEASON2が、SEASON1を超えるほどのたくさんの人の笑顔、挑戦、感動が生まれる旅となるように、私も尽力してまいります。

SEASON1で貰った学びや気づきを糧にして、皆さんとともに、楽しい体験と挑戦が詰め込まれた新たな旅路を走っていけることが、今からとても楽しみです。

参加者の集合写真
参加者みんなの笑顔が旅の意味を表している。
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実里

中途失明。ePARA社員兼ePARA Voice所属タレント(盛永実里)として活動中。
好奇心の強さは人並み以上で、やりたいゲームもたくさんあります。
Twitter: @misato3310eg

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