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ePARAレポート クロスライン

視覚障害者弱視がツアーで体験した運転、レース観戦、移動の「可能性」!

クロスラインレースのキービジュアル。2人の視覚障害者がレーシングシミュレーターを操作している

皆さんこんにちは、筑波技術大学の河野です。
2023年9月2日~3日、モビリティリゾートもてぎで、一般財団法人トヨタ・モビリティ基金によるアイデアコンテスト「Mobility for ALL」の実証実験が開催されました。開催初日の9月2日、私は学生として「クロスラインミニツアー」に参加してきました。今回この体験で得た、さまざまな技術を活用した視覚障害者の「可能性」について振り返っていきます!

モビリティリゾートもてぎの北ゲート
会場となったモビリティリゾートもてぎ(画像出典:ePARA クロスラインSEASON2ダイジェスト動画

視覚障害者は、一人一人が動くスポーツを観戦することが難しい

このアイデアコンテストでは2日間、モータースポーツや歩行などについての実証実験が行われました。その中でモータースポーツは、私にとって無縁と言っても過言ではありませんでした。

私は、遠くにあるもの、細かな動きのあるものが見えづらいです。遠くを見る際は単眼鏡という補助具や、スマホのカメラのズーム機能を使用することがほとんどです。しかし、それらを使うと見ることができる範囲が狭まってしまい、複数のものがそれぞれ動く場合、追うことが困難になります。

そのため、モータースポーツに限らず、スポーツ観戦をあまりしません。テニスや卓球、柔道等の1対1のスポーツは状況を把握しやすいのですが、サッカーやバスケ、バレーボール等の団体スポーツは一人一人がそれぞれどんな動きをしているのか、誰が今ボールを持っているのか、とても把握しづらいです。モータースポーツも同様に、どの車が走っているのか、どのコースで走っているのか、瞬時に把握することは困難です。

そのため、モータースポーツ観戦に触れる機会はなく、当日まで過ごしてきました。

3つの視覚障害者の「可能性」

今回3つに分けて視覚障害者の「可能性」について振り返っていきます。

1、モータースポーツの運転を楽しむ「可能性」
2、モータースポーツを観戦することができる「可能性」
3、移動や見えやすさの「可能性」

モータースポーツの運転を楽しむ「可能性」

ePARAのブースでモータースポーツを疑似体験しました。一般的な車にある、ハンドルとアクセルペダル、ブレーキペダルが設置されているものではなく、車いす使用者が操縦するためにアクセルとブレーキが融合し、レバーとして設置されたものを体験しました。右手はアクセル・ブレーキレバー、左手にはハンドル。片手で操作するため、力が安定せず、バランスをとるのがとても難しかったです。

また、私も視覚障害者であるため画面内の道の距離感がつかめず、どのタイミングで曲がるのか不安になるときもありました。そんな中、隣で最初からずっとスタッフさんがアドバイスやタイミングを教えてくださいました。安心した環境内で、視覚障害者ではなかなか味わえない運転を疑似体験でき、とても楽しかったですし、運転している感覚を初めて味わうことができ、とても貴重な体験になりました。

湾曲したスクリーン、操作用レバー、専用の椅子
ePARAのブースに置かれたシミュレーターの一つ(画像出典:ePARA クロスラインSEASON2ダイジェスト動画

モータースポーツを観戦することができる「可能性」

こちらでは2つの体験を元に話していきます。

1つ目は、アプリを使用し、カーレースを観戦する体験です。株式会社袖縁が開発した「袖縁アプリ」を使用し、副音声やリアルタイムに投稿されているコメントの読み上げを聞きながら観戦することができる体験でした。

放送されている映像に副音声という組み合わせはよくありました。しかし、リアルタイムで流れているコメントを読み上げてくれる機能は今までありませんでした。リアルタイムのコメントがあることで、みんなで同じレースを観戦している感覚になり、よりレース観戦が楽しくなる取り組みだと感じました。

スマホに「出迎え依頼」「手助け依頼」「トイレ案内」「いまここ」「訪問予約」という選択肢が表示されている
アプリの画面の一例(画像出典:ePARA クロスラインSEASON2ダイジェスト動画

2つ目は、触覚ディスプレイを使用し、音声では得にくい情報を得られるように開発されているものの体験です。そのレースで走る車の形や、レースで使用するコース、さらにリアルタイムで今どのコースを走っているのかを、触覚ディスプレイで触り情報を得ることができます。一言で「車」と言っても、さまざまな車があるため言葉で説明することはとても困難です。そんな時、出場しているチームや応援したいチームの車を図として触ることで、より詳しく情報を得ることができ、想像しやすくなります。また、どのルートを通っているのかリアルタイムで理解することで、どんな状況なのか把握しやすくなります。

これら2つの体験により、さまざまな情報を得ることでモータースポーツ観戦がより一層楽しいものになるのではないかと感じました。

先ほども述べたように、私は一人一人が動くスポーツの観戦が得意ではありません。しかし、これらの技術を活用することで、今どんな状況なのかを把握し、楽しく観戦することができるようになると思うと、今後にとてもワクワクします。

移動や見えやすさの「可能性」

こちらのテーマも2つの経験を元に話していきます。

1つ目は、視野障害を持つ弱視のためのスマートグラスです。パナソニック株式会社が視野が欠けている人のために開発している、視野欠損部分に障害物があった場合に教えてくれるスマートグラスです。このスマートグラスは、視野欠損部分に障害物があったとき、視覚的に四角形や円などのシンプルな印で障害物があることを知らせてくれます。専門的に医療機関と相談しながら自分に合ったスマートグラスにし、日常的に使用できるようにするそうです。また、まぶしさを感じる人にも対応しており、見えやすさに合わせ、明るさを暗くすることも可能でした。

2つ目は、障害物があることを教えてくれるスマートグラスです。Lighthouse Techが開発をしている、障害物が目の前にあると振動で教えてくれるスマートグラスです。近くにあることを教えてくれるのはもちろん、距離によって振動のリズムが違い、距離を認識し歩行することが可能です。

これら2つを実際に装着し、歩行したり周りを見てみたりしたところ、自分にあったスマートグラスで、日常で不便だと思うことが少しずつ改善されていることを実感し、装着時にとても感動しました。特に障害物を察知するスマートグラスは、体験時に目をつぶり歩行してみたのですが、見えない不安はなく、安心してどこにもぶつからず最後まで歩くことができました。

また、視覚障害者が使用するメガネがとても大きくなり厚みが出てしまって目立つという、見え方以外の問題点も改善されていました。技術や小型化が進み、厚みは減り、おしゃれなグラスコードが付けられているものもありました。

見えづらさを改善するだけではなく、着ける時の抵抗をなくし、周りを気にせず使用できるように工夫されており、視覚障害者の日常的な可能性も感じられました。

まとめ:技術は進み、不可能から可能にしていく

ここまで9月2日のクロスラインミニツアーについて振り返ってきました。

大きな企画ではないとさまざまな企画を知ることがないため、今回参加し、実際に体験できたことをとても嬉しく思います。

その中で共通して感じたことは、工夫をすることで、障害者は物事を不可能から可能にしていけるということです。最近はAIやIT技術が進み、日本はもちろん、世界を見てみると各国さまざまな開発が進んでいます。

私は今回の経験で、モータースポーツや団体競技スポーツの観戦に興味が湧きました。一度「見えづらい」という理由で諦めてしまったことを、もう一度挑戦し、難しいと感じた場合は工夫をして楽しんでいこうと思います。

また、これから技術が進み、さまざまな不可能を可能に変え、障害者が今までできなかったことができるようになる未来を願います。

それでは、本日はこの辺で失礼いたします。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

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河野レナ

筑波技術大学情報システム学科で学ぶ大学生。 生まれつきの視覚障害者弱視。 ゲームは高校生の頃始めた音ゲーが始まり。最近よくやるゲームは『原神』。

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