イベントレポート

「本気で遊べば、明日は変わる。」トークショー@H.C.R.2023 参加レポート -聴覚障害・くらげの視点-

2023年9月27日(水)〜29日(金)、東京ビッグサイトにて「H.C.R.2023 第50回国際福祉機器展&フォーラム」が開催されました。バリアフリーeスポーツを提唱するePARAは「エンジョイアクティブゾーン“Gotcha!”」において以下の取り組みを行いました。

  1. バリアフリーe-sports体験の運営 2023年9月27日(水) ~ 29日(金) 10:00~17:00
  2. トークショー「本気で遊べば、明日は変わる。」  2023年9月28日(木) 11:00~
  3. 夢の車いす創造ワークショップ  2023年9月28日(木) 13:00~

本記事は、H.C.R.2023に来場者として参加した聴覚障害・ADHDのライターくらげさんによる、トークショー「本気で遊べば、明日は変わる。」参加レポートです。


H.C.R.2023に登壇したePARAメンバーおよび運営スタッフ

H.C.R. との「再会」

2023年9月27日、早朝に仕事を終えてぐったり寝ていた私のもとに、東京ビッグサイトで開催されている「第50回国際福祉機器展&フォーラム」に行っている妻から「ePARAが国際福祉機器展に来ているよ」というLINEが届いて一気に目が覚めた。ePARAにときおり記事を寄稿している身であるが、ここのところ別件の仕事が忙しく、ePARAの活動に顔を出すこともなかったので今回の国際福祉機器展にePARAが出展しているのを知らなかったのである。

妻は介護福祉士の資格を持っていて、体調上の問題で今は仕事をしていないが福祉器具をいろいろ調べたりするのが趣味なので、友人とともに福祉機器展に行くのが毎年の楽しみだったりする。その流れで私も数年に1回ほど福祉機器展を見に行くようになったのだが、聴覚障害者支援の諸々の最新情報を得ることもできるので結構楽しい。
しかし、どちらかと言えば「ハードウェア」が中心のイベントという印象があり、ePARAのような「体験」が中心になる会社が出展しているとは完全に寝耳に水だった。


H.C.R. 2023のパンフレットの一部

妻には「じゃ、代表の加藤氏か社員のH氏に挨拶してきて欲しい」とお願いしたところ、H氏と会ったようで「たまにはePARAに顔を出せ」という伝言を受け取った。
妻の帰宅後、イベントの資料を見せてもらったら、翌日28日はePARAのトークイベントなどが数多くある。「これは面白そうだ」ということで、翌日にいろいろ重なっている仕事を押しのけてなんの連絡もなく東京ビッグサイトに向かった。さっそくePARAがいるスペースに向かい、H氏を発見したので挨拶をしたら「なんでいるんですか!?」と驚かれ、「妻から『たまには顔を出せ』と聞いたので顔を出しに来ました」と伝えた。

ePARAユナイテッドはる選手と鳥越選手が車いすユーザーの来場者と一緒にサッカーゲームをプレイする様子。
バリアフリーe-sports体験エリアの様子

本気で遊べば、明日は変わる。

説明するまでもないが、ePARAは「本気で遊べば、明日は変わる。」というステートメントを掲げ、eスポーツを通じて障害者が自分らしく・やりがいをもって社会参加する支援を行っている会社だ。ePARA代表の加藤大貴氏とはePARAを立ち上げた直後に知り合ったのだが、数年で活動の幅を広げていって驚くばかりである。

今回のトークイベントは、ePARA代表の加藤大貴氏とePARAで活躍する北村直也氏(視覚障害)、鳥越勝氏(筋ジストロフィー)、長野僚氏(脳性麻痺)の3人が「本気で遊べば、明日は変わる」ことについて話し合うというものである。

トークイベントは参加者の自己紹介やこれまでの活動で一番印象に残ったイベントの紹介から始まった。

加藤氏はePARAを立ち上げた経緯の説明と、印象に残ったイベントとして『クロスライン-ボクらは違いと旅をする-』を挙げた。
今年の『クロスライン』ではカーレースゲームをプロレーサーも交えてプレイしたが「障害者もプロも同じ土俵にたってゲームで対戦できる」というところが非常にワクワクしたとのこと。私も昨年のクロスラインに参加してるが、今年のクロスラインもますます進化しているようである。

レースに出場した4チームの選手や実況解説者、スタッフの集合写真
『クロスライン-ボクらは違いと旅をする-』SEASON2のe耐久レースの様子(2023年9月に開催)

次に挨拶した北村氏は視覚障害者であるが、彼は音だけで格闘ゲームをプレイするeスポーツプレイヤーである。ナレーションの仕事や、「ストリートファイター6」に搭載された音だけで画面の情報を得ることができる「サウンドアクセシビリティ」という機能の開発への協力も行っているそうだ。
北村氏が最近一番印象に残ったことは、新潟市西区社会福祉協議会が主催したeスポーツフェス『アソビでふくしに出会う夏』。福祉と遊びを融合させたイベントに参加したことで、格闘ゲームを通じてさまざまな立場の人と交流できたことが楽しかったと述べていた。そのほかにも、視覚障害者と聴覚障害者が通う筑波技術大学と共同で「ブラインドeスポーツ研究プロジェクト」というゲームのアクセシビリティ機能を研究するプロジェクトも始めたとのことなので、今後の活動に期待したい。

ePARANAOYA選手の隣でヘッドフォンをして目を閉じてプレイする参加者の様子。
新潟西区eスポーツフェス『アソビでふくしに出会う夏』でブラインドプレイを体験する参加者とNAOYA

鳥越氏からは彼がキャプテンを務めるePARAのサッカーゲームチーム「ePARAユナイテッド」の説明があった。印象に残ったプロジェクトは川崎フロンターレ2023ファン感謝デー特別企画『FOOTBALL TOGETHER』。サッカーファンの子どもやプロのサッカー選手とも対戦したことで、このような活動を通じて『障害者』に対する気づきを共有できる場を広げていきたいという決意を語っていた。
気づきについて北村氏より「自分はゲームが決してうまくはないのだが、『全盲でもプレイできる』ということに驚かれたことに自分が驚いた」という話があり、加藤氏からは「健常者の側が障害者側に気づきを与えることもあるというのは新鮮な出来事」というコメントがあった。鳥越氏は続けて「サッカーゲームでミスをしたとき『ちゃんと叱られる』という体験をしたのがとても良い空気だった」という体験を語っていた。
たしかに障害や病気があると「叱られる」ということにもどこか距離を置かれがちだ。このあたりがとても新鮮な気持ちになることもよく理解できた。


川崎フロンターレ2023ファン感謝デー特別企画『FOOTBALL TOGETHER』での集合写真

ePARAユナイテッドメンバーの長野氏からは「自分はゲームが好きなのだけど、プレイしすぎてテーピングを巻いたり、座っていることで負担がかかるので足にけがをしたりした。メンバーから『なんでゲームでけがをするんですか!?』と驚かれた」という衝撃的なエピソードが披露され、会場からも驚きの声が上がっていた。
加藤氏からは「本気なのは良いけど体には気をつけてください」という突っ込みがあり、長野氏は「依存症ですね!」と笑っていたが、健康には本当に気をつけて欲しい。長野氏は自分からさまざまな情報を発信しており、彼が書いた記事でePARAの取り組みを知った人も多いそうである。
また、脳波でゲームをプレイする「BMIブレインピック」という取り組みにも参加しているということなのだが、これはいろいろな分野で応用できそうなのでぜひ実現して欲しい。

壇上でBMI技術を使ってゲームをプレイするePARAユナイテッド鱒渕選手
「BMIブレインピック2022」の様子

乗り越えたいバリア

続けて、加藤氏から「乗り越えたいバリアは?」という質問。

北村氏は「乗り越えたいというかハードルを下げたい。誰でもゲームができるようになればいい。ゲームデバイスがもっと充実していけば障害者も楽しめるゲームが広がっていくだろうし、そういう社会になっていくと嬉しい」という期待を述べていた。ほかの参加者からは「自分にできないと一人で抱え込んでいるのではなく、自分のやりたい!を世間に出すことでデバイスができて可能性が広がるかもしれない。勇気を持ってアウトプットして欲しい」などという声が上がっていた。

トークショーでの質疑応答の様子。右から代表加藤氏、北村氏、鳥越氏、長野氏。
質問に答える全盲eスポーツプレイヤー・NAOYA(左から2番目)

「チームとしてどのような未来を作っていきたいかを伺いたい」という質問に対しては、北村氏は「障害者は仕事をしていると『できないこと』に注目されてしまうが、eスポーツを通じて強みにも目を向けるようになって欲しい」と回答。また、引きこもりの方との対話を通じて「自分の強みをゲームで引き出すことができる」ということも述べていた。
鳥越氏は特別支援学校の生徒と連携して障害児の成長する機会を広げたいとのこと。長野氏からは「障害の違いによってサッカーゲームでの役割分担を行う。このようなプレイを通してそれぞれに輝ける明日に変えていけるようにしたい」というコメントがあった。


群馬県立あさひ特別支援学校高等部とのオンライン交流会の様子

質問タイムでは「組織全体としてゲーム業界全体にどのように働きかけたいか」という質問があった。
加藤氏から「日本ではゲームのアクセシビリティがまだまだ遅れているが、海外の情報はなかなか日本に入ってこない。ePARAとしてもゲームメーカーにいろいろ働きかけているが『お金がない』『それで売れるのか』というところで反応が鈍い」という実情を説明し、それを打破する方法として「皆さんからゲームメーカーに手紙を書いて欲しい。手紙を書くと意外とちゃんとメーカーの人が読んでくれる」というお願いをしていた。


ePARA代表の加藤大貴

続けて会場から「障害者が新しい取り組みをするときは尻込みすることがある。支援者の立場からは押し付けにならないように、でも、新しいことに取り組むことを促したいことがあるのでどうすればよいか」という質問があった。これに対しては長野氏から「楽しいから始める、できるようになることが増えていくことがあると実感すれば前向きになっていける」という回答があり、同時に「支援者と障害者の関係性はいろいろ難しいところがあるが、お互いにゲームをする時間はあったほうが良いのではないか」という提案がなされた。また、ぜひePARAに入って欲しい、という勧誘もあった。

壇上に加藤氏、北村氏、鳥越氏、長野氏が並び、鳥越氏が答えている様子。
質疑応答の様子

最後の質問として「ゲームがうまくなるにはどうしたらいいですか?」というものがあったが、参加者からは「You Tubeを見て勉強する」「ほかのプレイヤーと話し合う」「障害と向き合ってできるできないをしっかり考える」などのアドバイスがなされていた。

トークショーはここでタイムアップ。会場からは大きな拍手が送られていた。


同時手話通訳付きのトークショーの様子

まとめ -聴覚障害/ADHDのライター・くらげの視点-

私はゲームが嫌いというわけではないのだが、一度ハマると生活も仕事も放棄してやり続けてしまうタイプなので、ゲームはあまりやらないほうだ。また、好むゲームは一人でモクモク行う戦略系ゲームが多く、「ほかの人と関わりながらゲームをする」ということはほとんどしたことがない。
そのため、eスポーツが「健常者と障害者が垣根なく戦える」ということの意義があまりわかっていなかった。しかし、ePARAに関わってPUBGでのチームプレイをすることになったり、クロスラインでレーシングマシンを操作したりということを重ねて、なるほど障害者も健常者もそれぞれの遊び方があり、それぞれの好きなように遊びつつ能力を見いだしていけば良いのか、と理解した。
今回のトークショーはまさに、このような「本気で遊べば何が変わるのか」についてのePARAでの発見の積み重ねがよくわかるものになっているように思った。仕事をなんとか早く片付けて、久々にePARAに参加して何かのゲームをやってみたい。そんな気持ちになった。


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くらげ

山形県出身、東京都在住のサラリーマン兼物書き。
聴覚障害・発達障害(ADHD)・躁鬱病があり、同じく発達障害・精神障害・てんかんがある妻(あお)と自立して二人暮らし。
著書「ボクの彼女は発達障害―障害者カップルのドタバタ日記 (ヒューマンケアブックス)」「ボクの彼女は発達障害2 一緒に暮らして毎日ドタバタしてます! (ヒューマンケアブックス)」があるほか、様々なコラムや記事を執筆している。 現在、障害者専門クラウドソーシングサービス「サニーバンク」(https://sunnybank.jp/)のアドバイザーを務めている。 公式note(https://note.com/kura_tera)

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