「こんな世界があったのか…!」
彼らが躍動する姿を見て、そう思わずにはいられなかった。
今回は慶應義塾大学 理工学部生命情報学科:牛場研究室の皆さんと初タッグ!
中・高生が対象の『BMIブレインピック2022』に我がePARAユナイテッドのメンバーがゲスト選手として出場するというので、筆者・アフロも急遽応援に駆けつけた。初の試みとなった今大会の意義や成果については、この彼らの笑顔が示すとおり、会場は終始、大いに盛り上がっていた。
ところで、BMIとは「Brain・Machine・Interface」の略であり、「脳活動を読み取り、コンピュータや義手などを操作する技術の総称」を指す。
言うなれば「身体もほとんど使わず、頭(思考)だけでゲーム内のキャラクター(アバター)を意のままに操ることができるのか」という前代未聞のプロジェクト。
今回は、ユナイテッドの中でも特にゲーム愛の強い3名がプレイヤーとして参加した。
本当にそんなことができるのか。
観客はもちろんおそらく本人たちも、そんな気持ちだったに違いない。
プレイヤーの紹介とこれまでの経緯
今回、超難関プロジェクトに果敢に挑んだのはこちらの3名。
実は筆者と彼らは普段、ともにePARAユナイテッドに所属し、切磋琢磨するチームメイトである。いわゆるeスポーツのサッカー仲間。
「本来は動きづらいがゲームの世界なら自由になれるのではないか?」
そんな眩い希望を抱く我々を、”本気で遊べば明日は変わる!”と信じて疑わない株式会社ePARAが【選手全員車椅子】という前代未聞、おそらく世界初のイレブンを発足したのは今年に入ってから(キャプテン:とりちゃん/とりすま)。
筋ジストロフィーや脳性麻痺、横断性脊髄炎や原因不明の難病まで様々なバックボーンがありながらも、共通の楽しむ心を携えて集いしイレブンのプレイスタイルは実に多種多様!
脳性麻痺があれど(皆さんと同じように)コントローラーを手で操作する者は「ゲームは1番のリハビリ」と言い切り、人生で1度も歩いたことがないはずなのになぜかゲームは足でできるという強者は、「俺はリアルサッカーができる!」と豪語する。その満面の笑顔は人間の持つ無限の可能性を感じさせてくれる。
自分の意思を脳波に込めて…
さて、肝心のブレインピック。結果はどうだったかというと…。
タケル(猛留)が準優勝を果たし、ツバサ(羽飛)は選手としてだけではなく脳波で電動車いすを操作してドリンクを配膳するなど、猪突猛進の活躍を見せた。
惜しくも優勝こそならなかったものの、各校の予選を勝ち抜いて選ばれた未来を担う中高生たちと熱戦を演じ、最後はきっちり華を持たせつつ(!?)堂々と躍動する彼らの姿に、レポーターとして同行した筆者も幸せな気持ちになりました。
脳波と動きのシンクロは、想像以上に難しい! <まとめ>
お分かりいただけるいただけるだろうか。頭で思ったことを意思だけでアバターに投影させることの難しさを。これを俗に(アバターとの)<シンクロ率>と言うらしい。
脳波を的確に反映させ、アバターとシンクロさせるためには、いかなる状況でも冷静沈着さが求められるが、たくさんのお客さんと彼らが創り出す盛り上がりの中では障害の有無を問わず至難の技であることは、想像に難くない。
(※事実、校内の予選でシンクロ率〈一流〉を叩き出した中高生たちも、本番ではリタイアが続出した…。)
当日応援団長を務めたたけちゃんも実は、当初はプレイヤーとして参加予定だったが、まさしく脳波のシンクロ率を上げることに苦戦。自らプレイヤーとしての参加を断念したと聞いた。
障害を持つ私たちがこうした困難に日常の中で直面することは多々あるし、本人が望めば障害を理由にプロジェクト自体からの離脱を選択することもできたのかもしれない(そしてもし、その選択をしたとしても責めるものは誰もいないだろう)。しかし、彼はそれを選ばなかった。
裏方に回ってでも仲間を応援することを選び、牛場研究室の皆さんもその意を快諾し、ePARAスタッフも一丸でそれを支えた。私はそこに今回のブレインピックにおける”もう1つの価値”を見た気がしている。
今大会はまさにみんなのブレイン(知恵)が生んだ勝利といえよう。
『本気で遊べば、明日は変わる!』は本気でチャレンジしたものに与えられる勲章だ。諦める前にいくつかの選択肢があること。
これこそが、個人の明日だけでなく、社会の未来を着実に変えていくための確かな近道なのかもしれない。