
この記事は、アメリカウェストバージニア州を拠点とした障害者のゲーム擁護団体The AbleGamers Charity が過去に公開したコンテンツです。
ePARA(イーパラ)は、The AbleGamers Charityより公式な許諾を受け、日本語訳を転載しています。
著者: Aira Lee (自閉症のライター兼ゲームYouTuber)
公開日:2019/8/22
This article was published by The AbleGamers, a disability gaming advocacy group
https://ablegamers.org
This is a translation of the article which we have received official permission to publish on our website.
Writer: Aira Lee ( a nonbinary neurodivergent writer and gaming YouTuber)
Release Date:2019/8/22

偽ゲーマーと馬鹿にされてきた幼少期
「簡単なゲームばかりしてるやつ」「偽ゲーマー」「にわかゲーマー」
私はこのように自称ガチゲーマーたちに呼ばれてました。
私にとってはよくあることです。
覚えている限りでは、私は、よく遊ぶゲームの種類や私の遊び方を馬鹿にされてきました。
しかし結局は大抵その悪口を浴びせていたのは自分自身だったのです。
80年代から90年代、私の家族はよく任天堂のゲーム機でゲームをプレイしていました。
私はJRPG、パズルゲーム、ターン性ストラテジーゲームが大好きでした。
しかし私は、速い展開のアクションゲームはどうも好きになれませんでした。
姉妹がマリオやメトロイド、Hexen(アメリカのシューティングゲーム)を遊んでいるのを見るのは好きでした。
しかし自分自身がコントローラーを持つといつもパニックをおこしてしまいます。
そのような時、私は逃げ隠れてしまいたいという強い衝動を感じていました。
苦手なゲーム、自閉症(過敏症と過共感)が原因だった
私は自閉症で、過敏症と過共感という2つの大きな特徴を持っています。
ただ、これらの言葉は医学用語ではなく、私のような人々が自分の症状を説明するために用いてる言葉です。
過敏症とは、他の人が気付かないであろう音・ちらつき・点滅する映像・感覚などが、私にとっては身体的な痛みに感じられることを意味します。
これは中枢神経系の機能の問題なので、どうすることもできません。
過共感は特殊な感覚です。
自閉症患者は総じて、人々への共感を苦手としているというステレオタイプを持たれがちです。
私はその逆で、とても強く人々に共感してしまうのです。私
は周りの人々の感情を上手く切り離すことができません。
それは映画やTVゲームなどのフィクションも例外ではありません。特にTVゲームは顕著です。
20代になるまで自分が自閉症だということに気付きませんでした。
成長するとともに、周りの人は私のこれらの特性を、個人の欠点のように扱うようになりました。
よく周りから「強くなれ、怖れに立ち向かえ、悲しみに暮れるのを止めろ」と言われていました。
そして、私は数十年間、周りの言っていることは正しく、強くなれないのは自分の努力不足のせいだと信じていました。
普通のゲームプレイヤーは、ゲームの画面に感情的に飲み込まれることはありません。
なぜなら、現実世界ではなくゲームの世界の出来事だと認識するからです。しかし、私はそれが上手く切り離せません。
私は、プレイしているゲームのキャラクターの背後で、リアルな恐ろしいエイリアンがいたり、マインクラフトのゾンビの漫画のような呻き声が聞こえたりすると、まるで現実の世界が危険に晒されているように感じてしまいます。
これは気持ちの問題ではありません。脳の特性なのです。
30代になっても、無理にダークソウルなどの苦手なジャンルのゲームをプレイしようとしていました。
見てくれている人がいれば気が楽になると思い、ゲームの動画を録画したり、ライブ配信したりもしました。
ですが、私は無理をしてパニック発作やメルトダウンを引き起こし、いつも惨めな気持ちになっていました。
ある日、Steamを開いて、苦手なジャンルのゲームを選び、プレイボタンをクリックしようとしました・・・ですが、できませんでした。
私はプレイしたくなかったのです。ついに私は何十年も前に考えるべき疑問がわいてきたのです。
「なぜこんなことをしているのだろう」と。
私たちは何のためにゲームをするのか
ある人にとってはチャレンジであり、スキルの上達であるし、またある人にとってはストレス解消であり、社会的な活動であり、リラックスの方法です。
しかし忘れてはいけないのは、「ゲームの本質は楽しむということ」です。
私たちは皆、人生においてやりたくないことを避けては通れません。
しかしゲームはそうではありません。
私は障害があるので、人生が困難に満ちています。
慢性的に苦痛やストレスを感じています。
だから、ゲームで自分に無理を強いる必要は無いのです。
自分を証明し続ける必要は無いのです。
ゲームには苦悩からの出口になり、ストレスを減らし、リラックスすることができる可能性があります。
平和的な農業ゲームや、漫画調のリズムゲーム、難しいアクションゲームでさえも簡単なモードにしたら、私のメンタルヘルスの改善に役に立つのです。
なぜ私はゲームを不安の原因にしてしまっていたのでしょうか。
現代は主流のゲームならたくさんのオプションやアクセシビリティ機能があり、どんな方でもゲームの楽しさを味わうことができます。
ゲームの正しい遊び方はこうだと決めつけ、押し付けてくる門番のような人もいますが、私はメンタルヘルスのためにこのような人々には、耳を貸さないことに決めました。
ゲームは楽しむためのものです。
どんな目的でゲームをするとしても楽しむことを忘れないで下さい。
本記事のライター情報
Aira Lee
Xジェンダーで自閉症のライター兼ゲームYouTuber。
彼女は色々な場所に住んでいたことがあるので、どこに行っても外国にいるような気がするそうです。
本記事の翻訳者情報
須賀一惺
双極性障害、発達障害持ちのフリーランサー。
翻訳時は双方の文化的背景にマッチさせることに気をつけている。
臨床心理学や発達心理学などの学問も得意で野球やゲームにも詳しい。
「自分の興味と感心を大切にして、マインドフルに生きる」がモットー。