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インタビュー

サポーター制度で強さとコミュニティ形成を両立 「NTT東日本 TERAHORNS(テラホーンズ)」

企業eスポーツチームインタビュー第2弾のロゴ。NTT東日本テラホーンズ×ePARA。

いま、企業のeスポーツ部が続々誕生し、eスポーツが社員同士の交流のみならず、企業交流戦など、新たな企業間交流のツールとしても注目されています。企業eスポーツチームインタビュー第2弾である今回は、ePARA代表・加藤大貴が「NTT東日本TERAHORNS(テラホーンズ)」代表の金基憲(きん・もとのり)さんにお話を伺いました。

TERA HORNS Twitter(@terahorns

(聞き手:ePARA代表 加藤大貴)

ビジネスと社内コミュニケーションの両輪からテラホーンズは生まれた

加藤:まず設立の経緯を伺ってもよろしいでしょうか?

金:テラホーンズ設立は2019年の6月になりまして、その前に準備期間で4ヶ月ぐらい要しました。テラホーンズの設立の半年より少し前ぐらいに弊社がeスポーツ事業をやっていこうということを決めたところです。我々NTT東日本という会社は地域通信を担う会社という立場から更に踏み出して、地域の方々に寄り添った、地域のお困りごと解決というミッションを掲げています。当時、若者向けで、誰でも取り組めるコンテンツとして、地域にeスポーツが着目され、NTT東日本への問い合わせが増えてきました。そこで、影澤(潤一 氏・現NTT e-Sports副社長)というキーパーソンを中心に据え、eスポーツ事業に本格的に取り組むぞということになりました。eスポーツ事業に取り組むうえで、僕を含めプロジェクトメンバーには「eスポーツで良いものを作るのであれば、多岐に渡るeスポーツタイトルそれぞれについて詳しくならなければならない」という想いがありました。

また、長らく地域に携わってきたからこそ「eスポーツ×地域」という取り組みは、慎重に取り組むべきだとも考えていました。「一過性のイベントで終わってしまって費用対効果が取れない。」といった事例が当時から散見されており、このままの形で普及してしまうと、このせっかく生まれてきているいい流れも継続されないという危機感を抱えていたので、とにかく1個1個のソリューションを丁寧に作りたかったんです。私自身結構いろんなジャンルのゲームをプレイしますが、やっぱりやり込んでる人は、こういう見方をすると面白いといったような理解度のレベルが高いと感じています。色々なジャンルのゲームでそういったやりこんでいる人材の意見を聞くために、そういう社員を探してプロジェクトの内部に引き込みたかったんですね。そこで「メジャーなタイトルや、これから日本で伸びていくであろうタイトルで、興味のある社員を募ってチームを作ろう」という考えに至ったんです。

TERAHORNSのメンバーはプレイヤーとしてはもちろん、弊社の様々な組織の中で横串でできたeスポーツ事業のプロジェクトメンバーといった性格も持っています。例えば新規事業を作るときなどは、一緒に新しいサービスやモノに触ってもらって、感想を聞いたりすることもあります。

テラホーンズの選手とスタッフたち 一番左が金さん、左から2番目が影澤NTT e-Sports副社長

加藤:もともとビジネス的な側面があったんですね。他にも目的はあったんでしょうか?

金:もうひとつの大きな目的は社内コミュニケーションの活性化ですね。弊社の営業所や設備のビルが東日本全土にあるうえ、組織も縦割りなので、横の繋がりが希薄になりがちです。上司や部下とのコミュニケーションも、仕事の外に出るとなかなかきっかけづくりが難しいですし、ましてや斜めのコミュニケーションなんて…。そこでロケーションも年代も関係なく、趣味の世界で交流できるというところがあれば良い、という想いもありました。

強さとコミュニティ形成を両立する「プレイヤーとサポーター」

加藤: 2019年の取材記事ではプレイヤーが30名、サポーターが90名とのことでした。現時点ではもっと増えていることが予想されるんですけど、今はどんな構成になりましたか?

金:今はプレイヤーが40名ぐらいに増えまして、サポーターも120名ぐらいですかね。プレイヤーの増やし方は、当時から居たレギュラーメンバーって、強い人間がもともと集まっていたのであんまり変わってないんです。彼らの活動を見て、かなりの実力を持つ社員が新たに問い合わせてきたりして、そういった方も加入しています。

加藤:すごく面白いなと思ったのが、サポーターっていう概念で。企業や実業団の交流戦の中で目にしたことがなかったんですけど、実のところサポーターってどういう存在なんですか?

金:サポーターはひと言で言うと、「テラホーンズの活動に混ざって一緒にプレイできる人」です。チームを作ったときに相反するふたつのやりたいことがあってですね、そのひとつがコミュニケーションの活性化なので、本来は誰でも入って欲しいんです。その一方で、チームとしてこのジャンルで本当に業界を引っ張っていきたいと思ったときに、弱いチームは作れないと思ったんです。弱いチームを作るとやっぱり社員以外のファンがつかないと思いましたし、社会人チームでも見ごたえのある試合も見せられる、という所を周囲に示したかったんです。それを、両面から作ろうとしたときに自然と「じゃあ1軍2軍の考え方だ」となりました。サポーターは2軍というよりもゲームが好きな人によるサークル活動に近いですね。

加藤:今のお話はすごく参考になって、バリアフリーeスポーツというのを掲げている我々も裾野を広げたいんだけど、一方でトップを目指す、っていうチームを作りたい。そこをどうバランス取って行くのかっていうのを手探りの最中で、すごく参考になるなと。手をあげた人はサポーターというか、とりあえずはePARAの部活に入る。そこからトップを目指すんだったら企業交流戦に出る選抜チームに、っていうのが、すごくイメージが固まったので。

加藤:ちなみにサポーターの内訳として、正社員の方だけでなく、その家族の方や非正規の方がいらっしゃるんでしょうか?

金:サポーターは正社員のくくりで募集しています。グループ会社の人も所属しています

加藤:では家族の方などがというわけじゃなくて、完全に社員の中で、グループ会社にしろ社員の方がサポーターとして参加しているということになるんですかね?

金:そうですね。ただ将来的にTERAHORNSのイベントを開いた際などは、メンバーやサポーターのご家族も参加出来たりできたら良いな、と思っています。

加藤:なるほど。サポーターも含めて、「こういう取り組みするんだけど来ない?」みたいに社内で声をかけて、それで90人から120人に増えたり、大会のときに一緒に応援しようぜ、みたいなことになったりしているんですか?

金:メンバー、サポーターも適宜追加募集もかけています。はじめはLoL5人、スプラトゥーン4人で始めたんですけど、リザーバー(補欠メンバー)がいないねって話になったんですね。それで、LoL10人スプラ8人を目指して追加募集をかけたんです。追加募集にはWebアンケートツールを用意して、社内のWEBサイトなどを使って全社員に告知しました。TERAHORNSはメンバー、サポーター、タイトルの壁を超えて全員Discord内でコミュニケーションが取れるようにしてあるので、自身と他のタイトルについても大会出場を応援したり、勝利を祝い合ったりしています。

テラホーンズとプレイタイトルの多様化

加藤:あと、事前情報だと7つぐらいプレイタイトルがあってさらに拡大中とのことでしたが、現在はいくつぐらいのタイトルをプレイされているんでしょう?

金:今メインは7つですかね。スプラトゥーン、パワプロ、ウイイレ、ストリートファイター、ぷよぷよ、シャドウバース、LoLです。あと、とびぬけた実力の持ち主がいたのでApex Legendsとか、プロが居たのでクラッシュ・オブ・クランとか。徐々に開拓してます。

加藤:あと、コロナの状況下で取られたインタビューで「ブロスタとかもやってみようかな」というのも見かけたんですけども。

金:ブロスタはTERAHORNSのタイトルではないのですが、メンバーやサポーターで遊びで集まってやってますね。僕自身はまだまだトロ(フィー)2万ぐらいなんですけど。LoLのメンバーとかがやっぱり強いですね。

加藤:ePARAの中の部活で今、一番盛り上がってるのがブロスタで、それだったらちゃんとした勝負になるんじゃないかなと思って、交流戦ができればいいかなと。機会見つけてご提案してもよろしいですか?

金:もちろんです。採用タイトルに無いとはいえ本気で勝ちに行きます!(笑)

コロナ禍とeスポーツ オンライン化で見えた可能性

加藤:社内コミュニケーションのところでもうちょっと伺うと、前はみんなで会議室を取ってやっていたけど、コロナ以降それができなくなった、というのはどの会社さんからも聞いたりしていて。今はオンラインでおそらく活動されていると思うんですけど、それで良かった点とか、ここがまだちょっとの課題だとか、社内コミュニケーションの文脈でなにか気づいた点とかあるでしょうか。

金:やっぱりeスポーツはこうした状況下で強いなって思ったのが一番でして。一応いろんな拠点に部室とかも作ってはいたんですけども、そもそも各地の横の繋がりって言った時点で、活動のベースがオンラインだったんですね。それもあってあまり日常活動には支障がなかったですね。社会人チームの運営にとって私が一番難しいと感じる点は、目標設定なんです。大会が少ないっていう。ただeスポーツの大会はこの状況下でもオンラインに移行したものも多かったので、引き続きやれるなと思いました。国体もリアルスポーツの方は今年延期で止まっていますが、eスポーツの方はいち早く具体的なリスケジュールが示されたのも、オンラインでも開催出来るという強みがあったからかなと思います。そこが救いですね。

加藤:私達もコロナで、「リアルイベント全部なくなりました」って言われて。5月にどうしようかなと思ったときに、「eスポーツはオンラインだったら出来るから」って唯一の希望を持ってやったのが「ePARA2020」で。eスポーツの文脈だけが今いきいきとイベントやってるように見えて、狭い観測範囲ですけど、すごく見込みがあるなっていうのも感じています。

障害者とテラホーンズ 北海道八雲病院との関わり

加藤:ところでテラホーンズの参加者の中に障害を持つ方はいらっしゃるのでしょうか?

金:現状、テラホーンズに障害をお持ちの方はいない状態です。ただ北海道の八雲病院(※)さんとオンラインで交流しています。

(※国立病院機構八雲病院は2020年8月に老朽化のため閉院。その機能と患者は今夏から順次、北海道医療センターと国立病院機構函館病院に引き継がれている。)

加藤:吉成さんとの記事、拝見しました。私達もぷよぷよ対戦をしていただいたので。

金:函館に行って一緒にプレーしたこともあるんですけど、NTT東のほうで新宿の本社の部室と回線を繋いで、LoLですとか、あとはシャドウバースでも戦ってました。

函館のイベントにてテラホーンズの選手と八雲病院の患者とのシャドウバース対戦の様子。

加藤:八雲病院さんとの交流って、だいたいどれぐらいの時期から繋がりあるんですか?

金:去年の9月です。函館で開催されたイベントでご一緒したのがはじまりです。

加藤:どういう経緯でイベントをご一緒されたんですか?

金:もともと道南eスポーツ協会のほうで、地域へのeスポーツ普及の足がかりとして開催されたイベントがあり、それがセミナーとeスポーツ体験が一緒になった内容だったんですね。そこでたまたま1部で我々が呼ばれて、2部で作業療法士の田中(栄一)先生がいらっしゃって、その後の交流戦で僕と吉成さんと戦うデモンストレーションがあって。僕、本気でシャドウバースで勝負して、勝利してきたんです。でも内容は本当にいい勝負になってですね。僕もそこで本気で勝負することで、沢山の新たな気づきを得られました。田中先生とも話せば話すほど「そんなことまでやってるの?」というような取り組みがどんどん出てきて、文字通りeスポーツの新たな魅力に気づかされました。その時から田中先生や八雲病院のeスポーツプレイヤーの皆様と、TERAHORNSの絆が続いています。

加藤:田中先生も魅力的な方ですね。私が働いている社協にも来ていただいて講演をしていただいたんですけど。すごく思いもあって活動の幅も広くて、作業療法士の中でこんなに幅広い視野でやられてる方がいらっしゃるんだってすごく驚きました。

金:(機器の)自作、改造とかされてるのビックリしましたね。

加藤:すごいですね。ゲームやろうぜprojectもすごい。そこでものすごくアドバイスを受けて、乙武さんを呼んでイベントやるんだけど、どういうコントローラーとか使ったらいいか、提案したらいいか分かんないからアドバイスくださいって。そうしたら、脇にはさむとか、コントローラー、ジョイスティックとか…、いろいろ選択肢を提示していただいて。アドバイスが、もうものすごくありがたかった。

金:僕はその領域でいうと田中先生が日本で一番だと思っています。個人的にすごく尊敬しているのが、田中先生の「信念」です。「田中先生がeスポーツを推進されていて」みたいなコメントを振られると、田中先生は「いや、私が(中心的に)推進しているのではないんです、僕は支えてるだけです」ということをおっしゃるシーンを何回か見ておりまして。絶対ブレないんです。そうやって確立したものがあるからこそここまでのことが出来るんだろうなって。

加藤:本当にそのスタンスに共感というか支援者が広まって引っ張りだこになっているわけで。障害の分野でeスポーツを掛け算すると、もう田中先生呼ぶしかない。障害とeスポーツの分野でトップだと、リーダーということで皆が認識していて、本当に頼れますね。我々に期待することもアイディアいただいていて。

加藤:海外だと「ゲーム 障害」で調べたら、障害者がどうやってゲームをしたらいいか親御さんに情報が集まる仕組みやNPOが存在しているけど、日本には無い。そういった支援の場とかを広げて欲しいっていう、ご期待もいただいたんです。我々はメディアのほうで例えば四肢障害だとか、発達障害の方とか、聴覚・視覚障害の方がどうプレイされてそういうのを取り上げて、工夫とか、できた・できないの記事、できない記事自体も多分価値になると思うので、そのような試みを広げていきたいと考えています。

インタビューを終えて

チームとしての強さとコミュニケーションの向上の両輪をうまく回すための、「サポーター制度」に、強く感心させられたインタビューでした。また、八雲病院との交流など、バリアフリーeスポーツの取り組みに関わられていることもうれしく思いました。今回インタビューにご協力いただいた、「NTT東日本 TERAHORNS(テラホーンズ)」の金さん、お忙しい中ご協力ありがとうございました。

TERA HORNS Twitter(@terahorns

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