インタビュー

東京メトロとタッグを組む「eスポーツジム」の展望~令和の寺子屋を目指して~

eスポーツジムのインタビューアイコン

東京メトロ南北線赤羽岩淵駅3番線出口に直結したガラス張りの明るい建物。
そこに日本初のeスポーツ専門トレーニングジム「eスポーツジム」はあります。

「eスポーツジム」は、東京地下鉄株式会社(以下、東京メトロ)と eスポーツ教育スタートアップ企業であるゲシピ株式会社 が業務提携を行い、2021年6月28日にオープンした施設です。
今回はePARA代表加藤大貴が、 ゲシピ株式会社の代表取締役、真鍋 拓也氏、同社eスポーツジムプロデューサーの橋本 和成氏にインタビューをしました。

なお、今回のインタビューでは、一般社団法人 日本eスポーツ機構の理事長 中原 修二郎氏、副理事長の伊澤 瑛太氏にご同席いただいております。

eスポーツジムのインタビュー企画に参加した5名が笑顔で記念撮影に臨んでいる。
左から伊澤氏・中原氏(日本eスポーツ機構)、真鍋氏・橋本氏(ゲシピ)、加藤(ePARA) 

なぜ東京メトロが赤羽岩淵にeスポーツジムを?

加藤:今日はよろしくお願いします。まず、なぜ赤羽岩淵に「eスポーツジムをつくったのでしょうか?秋葉原や渋谷といった立地の方がeスポーツのイメージがあります。

真鍋:まず、親御さんが子供を安心して行かせられる立地を重視しました。秋葉原・渋谷・池袋のような誘惑の多い繁華街ではなく、親御さんが子供を安心して行かせられると考え、赤羽岩淵を選択しました。
新しいものは、繁華街から近すぎても住宅内の真ん中でも、拒否反応を持たれがちです。その点、赤羽岩淵は、住宅街寄りな一方で繁華街の要素もあります。建物も広さがちょうど良く、ガラス張りで外からも見える安心感も魅力でした。

ガラス張りで外からも見えるeスポーツジムの様子
ガラス張りで外からも見えるeスポーツジムの様子

加藤:日本初の「eスポーツジム」の立ち上げにあたり、東京メトロ(東京地下鉄社)と組んだのはなぜでしょうか?

真鍋:東京メトロは、事業中期経営計画で、新規事業創出にむけて3つのキーワードを掲げています。そのうちのひとつが「『デジタル』に関する取組み」です。また、東京メトロは事業の多角化も図っており、自社が保有している不動産を有効利用する取組みに積極的です。

加藤:東京メトロと貴社との共創は各種メディアでも多く話題となりました。この共創はスムーズに進んだのでしょうか?

「eスポーツジム」を開くにあたり、東京メトロ側でも「なぜうちでeスポーツ事業をやるのか?」と相当な議論をしたと聞いています。
しかし、市場としてのeスポーツの魅力や社会的意義の共感を得る中で具体化することができました。
何より、東京メトロのみんなが胸を張ってできる「eスポーツジム」を作りたいという意思もかなり強かったです。
東京メトロの事業担当者の「やるんだ」という強い意志の後押しを受け、3ヶ月かけて事業計画を練りました。

利用者の多くは、小学生や中学生

加藤:利用者はどういった人たちが多いのですか?

真鍋:利用者の半分ほどは子供で、小学生から中学生です。eスポーツにポジティブな考えを持つ親御さんが、
・どうせゲームをやるんだったらしっかり教わってほしい。
・eスポーツをきかっけに、マナーやコミュニケーションを学んで欲しい。
という思いで利用されているケースも増えています。

加藤:サービスの特徴を教えてください。

真壁:基本的には月額制です。月額5,500円払っていただくと、このゲーミングマシンは好きに使っていいですよと。いわゆるフィットネスジムのランニングマシーンの感覚です。ただし、1日あたりの時間制限はあります。
追加オプションとして、我々が提携しているコーチ陣からの指導を受けることもできます。これはオンライン・オフラインのどちらでも可能です。
人によっては、「大学進学のため専門学校に行くつもりはないが、eスポーツでも上を目指していきたい」、という方もいらっしゃいます。
そういった方は、月何回かの回数を決めて、プロから直接指導を受けるプランをご利用いただくこともあります。

加藤:eスポーツのトーナメントなどもできそうですし、環境が良いですよね。イベントとしてはつかえるのでしょうか?

橋本:応相談です。台数とスペースの問題で、大規模なイベントは難しいですが、サテライトとして使ってもらうことの方が現実的かもしれません。使えるのが10台、下に2台なので、小さい大会ではないと難しいでしょう。

<参考事例> 「eスポーツジム」主催イベント
からだが悪くならないゲームのしかた(2021年8月1日開催)
eスポーツプレイヤーやその親御さんを対象にして開催。
10:20~10:50 「目が悪くならないゲームのしかた」セミナー
11:00~13:00 ゲームでからだをわるくしないための実技

eスポーツジムの入り口。イベント告知やパンフレット等が置かれている。

目指すところは子供を通わせたくなる寺子屋

加藤: 「eスポーツジム」は、どのような存在を目指していますか?

真壁:目指すところは、地域の寺子屋や公文のようなところです。子供だけでなく大人もシニアも、街のみんながあつまれす場所。eスポーツは、世代を超えたコミュニケーションも取れると考えています。「eスポーツジム」で友達と会って一緒にゲームすることを楽しみにしている子供や、スタッフのことを師匠と呼ぶ子供もいます。

加藤:新しいコミュニティの創出ですね。思いの中心にあるのは、地域を巻き込み、活性化することでしょうか?

橋本:もちろんそうです。漫画喫茶って、もうどこにでもあるじゃないですか。昔はどこにもなかったけど、今はどこでもある。「eスポーツジム」がそんな存在になってもいいと思っています。

加藤:フランチャイズ展開はあるのでしょうか?資本で東京メトロが入っているので難しいかもしれませんが。

真鍋:メトロ沿線はメトロとそのほかはフランチャイズで、「eスポーツジム」を展開しても良いですね。eスポーツは町の人たちのコミュニケーションを作り出すことができる。例えばとても大きい施設を繁華街に作るとかは、そういうのが得意な会社さんがやればいいかなと思っています。僕らは遊びじゃなくて、寺子屋とか公文とかそういうような町のみんながそこに集まって切磋琢磨する場を提供したいです。

加藤:東京メトロ各駅に寺子屋として「eスポーツジム」を作るのは良いですね。

真鍋:話題性はあります。遠方からもきていただいている人や、会社帰りに来たりする人もいます。意外と早い時間にみなさん来てプレイされていますね。

eスポーツジムでプレイヤーがPCに向かう様子。

インタビューを終えて:コミュニティと居場所

気軽に立ち寄れる地域の新しいコミュニティづくりと、寺子屋のような居場所づくり。
今回は、東京メトロとタッグを組んで赤羽岩淵駅に併設された「eスポーツジム」を手掛けたゲシピ株式会社の代表取締役、真鍋 拓也氏のお話を伺いました。

そこには子供達が自分らしい生き方を見出すきっかけ・モチベーションとなりうるeスポーツの可能性を感じました。eスポーツを通して、未来を担う子供たちがより活動的に、イキイキと。今後、eスポーツジムが子供達の居場所や学びの場として機能し、遊びだけではないeスポーツの活用が期待されます。

また、ゲームを親子で楽しむのも今では普通のことになりつつあります。一緒にゲームをプレイしたり、こういったeスポーツジムで親子の時間を持つもの素晴らしいことの一つです。親子二世代でゲームを楽しむ人も少なくない今、新しいコミュニケーションや子供たちの生きる力を育てる場は必要になります。

東京メトロ赤羽岩淵駅で始まった「eスポーツジム」が子供たちの新たな居場所・コミュニケーションを広げる場として地域にどんな役割を果たすのか、今後の発展にご注目ください。

eスポーツジム外観。ガラス張りで中が見える、明るい雰囲気。

アクセス

住所 : 東京都北区岩淵町36-1 南北線赤羽岩淵駅3番出入口地上部すぐ

eスポーツジムの地図。赤羽岩淵駅3番出口すぐそば。


リンク集

eスポーツジム
公式HP : 日本初のeスポーツ専門のトレーニングジム|eスポーツジム
Twitter : eスポーツジム【公式】

インタビュアー:加藤 大貴(バリアフリーeスポーツePARA代表) 
 Twitter: https://twitter.com/koken_3
 Facebook: https://www.facebook.com/koken3Kato
国家公務員を辞めてまで実現したかったこと~ePARA代表加藤が振り返る~

ライター : 彼岸花(ePARA所属ライター、双極性障害)
Twitter:https://twitter.com/higanbanamikan

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