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イベントレポート

「第21回こころのバリアフリー2023」体験レポート

2023年12月9日(土)、ePARA(イーパラ)は神奈川県海老名市主催のイベント「こころのバリアフリー2023」に運営協力しました。本記事は、このイベントに参加したフリーライター鈴木香里さんのレポートです。
(関連記事:海老名市主催イベント「こころのバリアフリー2023」の運営に協力しました

障がい福祉イベント初参戦

多くの親子で溢れ返っていた、海老名市立今泉小学校。今年で21回を迎える「こころのバリアフリー2023」が開催され、今回は初めての試みとして「eスポーツ体験会」が行われた。バリアフリーeスポーツの第一人者、株式会社ePARAの加藤大貴代表をはじめ、ePARAに所属するeスポーツプレーヤーたちが参加者とゲームで交流。大盛況のうちに終わった。

ゲームを楽しむ参加者

私事で大変恐縮であるが、障がい福祉の分野に触れるきっかけは、自分が運営するeスポーツチームメンバーのある言葉だった。精神障がいをお持ちの方々が利用する施設に勤務する元メンバーが、「うちの施設でeスポーツ教室をやりませんか?」と声をかけてくれたのだ。実際に施設を見学させていただいたり、教室のプログラム内容を思案したりしていく中で、「仮想空間上では障がいの有無にかかわらず、自由に動き回ることができる」ということに気づいた。

仮想空間上で繰り広げられるeスポーツは、こうした障がいをお持ちの方々の「生きがい」につながるかもしれない。そんな思いが膨らんでいく中で、ePARA様とご縁があり、今回の体験会に参加させていただくことになった。

ゲーム中のePARAメンバー

最も印象に残ったのは「仮想空間上ではバリアフリー」ということである。取材そっちのけでゲームに没頭してしまった体験会の様子を、レポートとしてご紹介していきたい。

eスポーツでつながるゲームの楽しみ

今回のイベントで体験できたゲームは4種類。そのうちの1つ、レーシングゲームの「グランツーリスモ7」からご紹介していきたい。このゲームは、コントローラーが「ハンドル」「アクセル」「ブレーキ」という、シミュレーターのようなデバイスでプレーする。

グランツーリスモ7」体験会の様子

今回は、ePARA所属のjukeさんがサポートしてくださった。設定したコースをスピードで競うゲームで、コーナリングが鍵を握る。私はうまくカーブが曲がれず、壁に激突しまくり。車へのダメージもリアルに再現されるそうで、私の車はボロボロという結果に終わった。

ゲーム中のjukeさん

ハンドル部分のデバイスは約4万円とのこと。購入しやすい価格なのもうれしい。ハンドルからも衝撃が伝わる仕組みになっているので、没入感が想像以上だった。室内にいながらスピード感を楽しめるゲームとなっている。

「グランツーリスモ7」で使用するデバイス(ハンドル部分、ロジクール製)

jukeさんも様々な大会に出場しているそうなので、次回の大会は、是非応援に行きたい。

「ePARAユナイテッド」のはるちゃん
「ePARAユナイテッド」のあーりん

2人の見目麗しいeスポーツプレーヤーが迎え入れてくれたのは、サッカーゲームの「FIFA23」。サッカーは「見る専」の私は、うまくできるか全く自信がなかった。しかし、絶妙なタイミングで「パスです!」「今、シュートです!」などと、うまく誘導してくれたので、サッカーを堪能することができた。

はるちゃんの商売道具、片手で操作できる特注コントローラー

私が参加したマッチは「0対0」の引き分け。おたおたしている中年の隣で始終冷静にプレーしていたのは、はるちゃん。彼女は特注のコントローラーを使い、片手で華麗にプレーする。もう一人の美女は、あーりん。この日はトナカイのカチューシャというクリスマス仕様で、ゲームを楽しませてくれた。

彼女たちは「ePARAユナイテッド」というサッカーゲーム部門の所属。先日の天皇杯で優勝した川崎フロンターレとも交流があるメンバーで、今後の活躍にも期待したい。

全盲格ゲープレーヤー・NAOYAさんの強さの秘策

ゲーム中のNAOYAさん

今回のイベントの目玉となっていたのが、全盲のeスポーツプレーヤー・NAOYAさんと格闘ゲームで対戦できるというコーナー。私も僭越ながらNAOYAさんに「ストリートファイター6」で勝負を挑んできた。

ストリートファイター6」のマッチ開始画面

全3マッチ。1マッチ目は安定の敗北。ただ、かつてゲームセンターで遊びつくした「ストリートファイターⅡ」の感覚が戻りつつあるのを感じた。そして、2マッチ目。とにかく攻撃ボタンの連打。正直連打していた親指がつりそうだったが、ギリギリのところでなんと勝つことができた!NAOYAさんの忖度プレーに間違いないが、調子づいてきた。そして3マッチ目。2マッチ目の勝利でいい気になったツケが回り「惨敗」。ちょっと相手の様子をうかがう、などと格好をつけたのがいけなかった。即座に攻め込まれ呆気なくKO。負けはしたものの、格闘ゲームの猛者との対戦は、本気でゲームを楽しめる最高の機会だと改めて実感した。

NAOYAさん

プレーの後、ずっと気になっていたことをNAOYAさんに伺ってみた。格闘ゲームのような「相手の動きを瞬時に読む」ことが必要な盤面において、どのように敵の動きを探っているのかということだ。NAOYAさんは「足音やジャンプの音を聞き分けて判断」しているという。「ストリートファイター6」では「サウンドアクセシビリティ」という、相手の間合いや体力が音で判別できる機能が搭載された。この機能により、相手との距離感を正確に聞き分けられるようになった。

NAOYAさんの強さには、心理戦を制する能力も関係している。ゲーム開始30秒間で相手のプレースタイルを見極め、瞬時に敵に適応した戦術を繰り出す。相手は速攻タイプなのか、それともじっくり攻めるタイプなのかを、初動で掴み切ってしまうのだ。

視覚情報がないというハンディをも戦術に利用してしまうのが、NAOYAさんの恐ろしいところ。相手を油断させ、速攻で攻め切り一気にKO。相手の心理を一瞬にして見抜き、巧妙な揺さぶりで相手を圧倒してしまうのだとか。

そんなNAOYAさんは「攻撃前のモーションの音が出るようになると、もっと先読みができる」とどん欲に強さへのこだわりを忘れない。確かに攻撃前のモーションが読み取れれば、防御や攻撃を交わすなどのコントロールが可能。さらなる高みを追い求めるeスポーツプレーヤー。彼との交流で、「強くあるための格言」に触れた気がする。

デバイスの進化と課題 eスポーツの未来を拓く

今回、世界初となる最新デバイスの体験という、貴重な経験もさせていただいた。12月6日に発売されたAccess™️コントローラー(ソニー)は、力の弱い方でも、指さえ動かせれば操作可能というデバイス。ジョイスティックと円形に設定されたボタンで操作する。

Access コントローラー(ソニー)
© Sony Interactive Entertainment Inc. All rights reserved. Design and specifications are subject to change without notice.

オリジナルのカスタマイズも可能ということで、自分のプレーしやすい配置にボタンを設定できるという。私も実際にパズルゲームの「ぷよぷよ」で操作してみたが、通常の力で操作すると動きすぎてしまう。「触れる」くらいがちょうどよく、これまで思うように操作できなかったプレーヤーも、思い通りゲームを楽しめるようになるのではないかと感じた。

ぷよぷよを体験する参加者

様々なデバイスを拝見して、eスポーツを運営している身としては、障がい福祉の分野からもeスポーツプレーヤー人口が増えていけば、競技シーンへの参入のチャンスも増えるのではないかと期待を抱いた。しかし、ePARAの外尾さんによると「デバイスのレギュレーションが厳しいため、カスタマイズできることも一長一短」とのこと。競技シーンにおいて、福祉デバイスを使用する際、ボタンの配置などに細かい規制があり、選手のやりやすい配置でなかなかプレーできないという実情があるのだという。

どのラインで公平性を保つべきか、個人的にはどんどん協議されるべき課題だと感じた。「基準の細分化」も「公平性の概念」を落とし込む作業に必要なのではないか。障がいを抱えるeスポーツ選手たちが競技シーンでもどんどん活躍できる環境が、今後整備されることを期待したい。

バリアフリーを可視化した仮想空間でのeスポーツ

eスポーツは仮想空間で行われる競技。この仮想空間の中においては、障がいの有無に関係なく純粋に皆でゲームが楽しめる。そんなeスポーツこそ、バリアフリーを可視化した生涯スポーツなのではないだろうか。

ePARAメンバーと参加者の集合写真

今、eスポーツがオリンピック競技として採用されるかどうかが世論の関心事の一つとなっている。eスポーツが、メジャースポーツと肩を並べるためにアピールすべきポイントは、今回のイベントの主軸である「バリアフリー」ということだと思う。

ePARA代表・加藤さん
格闘ゲームプレーヤーの実里さん

今後は、eスポーツプレーヤー人口の増加とともに、競技シーンでの規制、運営の体制作りも盛んに議論されていくことだろう。コロナ禍でブレイクしたeスポーツ市場を「一発屋」で終わらせないためにも、障がい福祉の観点から、より包括的で公平なものへと拡大していくことを願うばかりである。

今回は大変貴重な体験をさせていただき、ePARAの加藤様、外尾様、ePARAのメンバーの皆さまに、この場を借りて感謝を申し上げたい。今回、全盲の格闘プレーヤー・実里さんと一緒にプレーすることが叶わなかったので、また障がい福祉のeスポーツイベントがあれば、その際ご一緒させていただきたいと思う。

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鈴木香里

元テレビディレクターのフリーライター。テレビマン時代は主にNHK、TBS、テレビ東京などでドキュメンタリー、情報・報道番組を制作。eスポーツチームの運営経験を活かし執筆・取材に奮闘中。 note:https://note.com/rrllll2

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