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視覚障害者と共に創る“音の世界”のeスポーツ「音戦宅球eSports」リリース

2025年8月1日にリリースのバリアフリーeスポーツアプリ「音戦宅球eSports(おんせんたっきゅうイースポーツ)」。

 前作の「音戦宅球」に、戦略性・操作性・ストーリー性が進化したスマートフォン(iPhone)のゲームアプリです。
 本作の開発には、ePARAのグループ企業である株式会社はるもけあの視覚障害者向け就労移行支援「ブレイクスルーコース」のメンバーがゲーム設計・UI検討などにおいて協力いたしました。また、ePARA発・視覚障害者のみの音声制作サービス「ePARA VOICE」のメンバーが一部のキャラクターボイスを担当いたしました。

 本記事は、「音戦宅球eSports」の開発元である一般社団法人 Tanys 福祉テクノロジーより寄稿いただきました座談会記事です。
開発メンバーのみなさんと「ePARA VOICE」メンバーによってリリース直前に語られた、開発の舞台裏をお楽しみください。

「音戦宅球eSports」アイコン

「音戦宅球eSports」はこちらからダウンロードしてください。(iOS)

「音戦宅球eSports」ダウンロード用QRコード

https://apps.apple.com/us/app/音戦宅球esports/id1671102033

キャラクターに「命」を吹き込む体験

座談会参加メンバー

以下の4人は、アプリ内の登場キャラクターのキャラクターボイス(CV)を担当しました。

  • 関場さんは、主人公の明るく元気な高校生「奏(かなで)
  • 実里さんは、気取った猫のような存在「ニャーダンディ
  • 直也さんは、お笑い要素満載の「なんでやねん
  • ゆきさんは、ちょっぴりツンデレな女子高生キャラ「JK京子」(※今回の座談会には不参加)

キャラ作りの裏側

「声だけでキャラの感情や個性をどう表現するか?」

 今回、声優として参加した視覚障害のあるメンバーたちは、キャラクター設計の初期段階から関わり、性格や背景を共に練り上げていきました。
 たとえば、気取った猫キャラ「ニャーダンディ」の設定や語尾表現、ツッコミ役「なんでやねん」のテンポ感などは、みんなで作り上げたキャラ像に沿って演技されました。
 特に技術的に難しかったのが、セリフを“0.5秒以内”に収めるというゲーム上の制約。これは「瞬発力」と「感情の圧縮」が求められ、通常の音声収録とは異なる難しさがあったと語られました。

「長いセリフより、短いツッコミ”なんでやねん”の方が逆に生き生きした感じになった」(直也さん)
「ニャーダンディの“気取った雰囲気”を声だけで出すのが難しかったけど楽しかった」(実里さん)
「“リズムだよ”みたいな短くてシンプルなセリフの方が、逆に難しかった」(関場さん)

 声優陣それぞれが、事前に練習を重ねる派、当日朝練の一発勝負で臨む派と、個性豊か。音だけでキャラクターを“感じさせる”というゲームならではの挑戦が、そこにありました。

視覚に頼らない操作性を共に磨

 音戦宅球eSportsの大きな特徴は、視覚に依存せず、音の情報だけで操作ができること。ゲームデザインにおいては、アクセシビリティの設計と調整が最も重要なテーマの一つでした。

 たとえば、ラリー中のボールの上下位置を**“音の高さ”で直感的に伝える**という仕様は、当初多くの人がピンと来なかったとのこと。「音にすれば良い」という話ではなく、「使える情報としてどう届けるか」が課題だったのです。

 これに対して、開発陣は初代『音戦宅球』の反省を生かし、チュートリアルを大幅強化。初見プレイヤーの離脱を防ぐために、分かりやすさと体験設計にこだわりました。そして開発中、彼らのフィードバックは不可欠でした。

  • 6方向から飛んでくる球を画面のどの場所で撃ち返すかを体感してもらえるかガイド文言とUIを改良
  • スライドジェスチャーで球を打ち返す操作を正しく伝えるフローとガイド文言を改良
  • 音の高さで“上下”の方向を直感的に区別できるよう音程の調整とガイド文言を改良

発見と進化

「ちょっとした違和感でも、遠慮せずフィードバックした」(直也さん)
「“慣れればいい”で済ませていたり、色々考えちゃって意見を言うのを躊躇したりとかあったけど他の皆さんをみていて開発段階だからこそ気になったことをバンバンいうってことの大事さを気付かされた」(実里さん)

アプリ開発への参加が拓いた“未来”

 3人にとって、今回のプロジェクトは単なる「声優体験」にとどまらない、“ものづくりの当事者”としての大きな一歩でした。

 開発初期段階からチームに関わり、キャラクター設計・操作UIの検証・演技・プロモーション戦略まで担当したことは、「夢が形になった経験だった」と語られています

 「ソフト開発って、自分たちのようなユーザーも“一緒に作れる”んだと実感した」(直也さん)
 「このプロジェクトがなかったらスタジオで声を収録するっていう経験は一生しなかっただろうな、自信もついた」(美里さん)
 「ゲームのボイスをやりたいと思ってて、自分の声がゲームの中から聞こえる、それがずっと夢だった」(関場さん)

 スタジオでの収録や、ゲーム内でキャラとして存在する体験は、多くの参加者にとって「新たなキャリアの可能性」や自己肯定感の向上をもたらしました。

まとめ:音がつなぐ、新しいeスポーツのカタチ

「音戦宅球」はこれまで、誰でも音だけで簡単に楽しめるバリアフリーゲームとして親しまれてきました。

 そして今――その魅力はさらに進化を遂げ、「音戦宅球eSports」へ。

 操作性やゲームバランスの磨き上げ、戦略的な駆け引きの要素、そしてキャラクターそれぞれのストーリー性と命を吹き込む声優演技によって、単なる音ゲームではなく、“競技”としての奥深さとドラマ性を兼ね備えた新たなeスポーツ体験が誕生しました。

 その開発の背景には、視覚障害のあるメンバーの実体験とフィードバックが核となり、技術だけでない“人の力”によるアクセシビリティの実現がありました。
 これは、インクルーシブデザインの一つの到達点であり、「みんなが遊べる」ではなく、**「みんなで創る」**ゲームの形です。

 本プロジェクトには、視覚障害のある声優・開発参加者が中心的に関わり、インクルーシブな社会とエンタメの未来像を提示しています。

 「音戦宅球eSports」、誰かの“挑戦”と“夢”がかたちになったアプリ。そして、誰もが主役になれる世界を、音の力で広げていきたいと思います。

音戦宅球eSports」はこちらからダウンロードしてください。(iOS)

「音戦宅球eSports」ダウンロード用QRコード

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