いま、企業や社会人のeスポーツ部が続々誕生し、eスポーツが社員同士の交流のみならず、企業交流戦など、新たな企業間交流のツールとしても注目されています。今回は、小学生から40代まで幅広い年代が参加するeスポーツコミュニティ「ニワカゲームス」の古賀さんと太田さんにお話を伺いました。
福岡の「にわかもん」精神を心に取り組むお二方の自己紹介
希央:ニワカゲームスのお二人の自己紹介をお願いします。
古賀:ニワカゲームスの運営会社、ニワカソフトの代表をしています古賀です。
「ニワカソフト」という会社名の由来は大きく2つあります。
ひとつは、福岡みやげのにわかせんべいや、福岡の歴史的な行事である博多にわかなど、「にわか」という語句が福岡っぽいという点です。
もうひとつは、一般的に「にわか」っていうと初心者という意味を持ちますよね。ネットの中でも初心者のくせにみたいな感じで使われる言葉だと思いますが、私達はあえてその「にわか」を会社名に入れています。
ニワカソフトは、2012年に「アプリゲームを自分たちで作りたい」というきっかけでできた会社です。でも、アプリなんか作ったことない、ソースコードの書き方も自分たちで調べながらやっていくような、本当に初心者の集まりでした。だからこそ、「にわか」というキーワードで初心者精神を忘れずに、がむしゃらに失敗を恐れずにやっていこうというのを理念として、ワクワクすることとか面白いことをやっていこうと言う方針で経営しています。
太田:ニワカソフトのeスポーツ事業部責任者の太田です。
ニワカゲームスでは、eスポーツで子どもたちを育て、将来の夢を持ってもらう活動をしています。今の活動の中心はeモータースポーツで、グランツーリスモを用いています。日本最高峰とされる賞金付き大会、AUTOBACS JeGT GRAND PRIXにもチームを組んで出場しています。
そのために毎週練習会などをして、技術向上に励んでいるところです。実際にプロのレーサーになりたいとか、自動車の開発ドライバーになりたいという子どもたちもおり、彼らのサポートも兼ねて活動しています。
小学生から40代まで多種多様な選手が集うニワカゲームス
希央:ニワカゲームスさんは、小学生から40代の方までいる年齢幅があるコミュニティだと伺っていますが、コミュニティはどんな雰囲気ですか?
太田:小学校3年生くらいから、中学、高校、専門、大学、そして社会人まで17人在籍しています。ニワカゲームスのMemberページに全員のプロフィールも載せているので、ぜひご覧ください。
希央: 結成はどういった経緯だったのですか?
古賀: 元々は福岡から世界大会を目指していけるすごい選手が出てきたら面白いよねという発想でした。2018年、社内・社外の有志と連携して「FUKUOKA NIWAKA」というロボットチームを立ち上げRoboMasterという世界最大級の次世代ロボットコンテストに出場し、世界ベスト16に入りました。その後、eスポーツの方でもすごい人が福岡にもいるだろうから、ここで面白いことができると考え、ニワカゲームスを発足しました。eスポーツの舞台でも世界に飛び出していけるような選手を育成・サポートすることを目標にしています。
希央:現在すでに国体選手や、世界大会に出場する選手が在籍しておられますものね。彼らはスカウトしてこられたのですか?
古賀:スカウトというよりは、自発的に来てくれた感じです。思いっきり活動できる環境をサポートしてあげるっていうのが我々のスタンスなので、募集をかけたらやる気のあるプレイヤーが手を上げてくれました。その中に日本でもトップレベルで争える選手がいて、ニワカゲームスの活動を通して国体で良い成績を収めてくれました。
AUTOBACS JeGT GRAND PRIXとニワカゲームス
希央:冒頭でもあったように、チームはAUTOBACS JeGT GRAND PRIXのシリーズ戦にも参戦されていますよね。そちらはどんな感じですか?
太田:学生と社会人の混成チームで国体メンバーもいます。しかし、結果としては、開幕から2戦の時点では正直厳しいですね、ライバルもトップクラスの選手を揃えてきているので。2020年にあったエキシビジョン戦では、運よく優勝できたのですが。
希央:現役のリアルのレーシングドライバーもいるようなシリーズですものね。JeGTでの高校生や社会人の活躍は小学生たちの目にはどう映っているのでしょうか?
古賀:下の子達はそんなに意識していないと思います。上の子たちの凄さがまだ分かっていないというか。ただ、この人みたいになりたいって言って入ってきた子もいて、強い人が身近にいることでいい刺激にはなっていると思います。あと、活動の一環で実際のカート(エンジン付きの小さなレーシングカー)の体験に行くとか、交流もしっかりしているので、速くて優しいお兄ちゃんたちというイメージが強いと思います。
eモータースポーツと現実世界との相関性
加藤:ここまで希央さんにeモータースポーツの側を詳しく聞いてもらっていましたが、少し気になったところがあって。グランツーリスモとリアルの運転ってどれくらい関わってくるものですか?
古賀:実は、そこはニワカゲームスを設立するときに一番重視したところです。
太田:例えば格闘ゲームがうまいからといって実際のレスリングとかがうまくなるわけではないですよね。eモータースポーツだとそこがリアルとつながってくるんです。ニワカゲームスにはシムピットという大型スクリーンを使った運転シミュレーターも配置していて、子どもたちに運転体験をしてもらったりもしています。
希央:実際の免許を取る際にも有利だって話を聞いたことがあります。グランツーリスモのうまい子が教習所の先生に「隠れて乗っていただろう?」と言われたとか。
古賀:それは、ありそうです。でも、そういった現実世界との相関性って我々は大事だと思っています。
加藤:そうなんですね。我々も、障害のある方、特に視覚系の障害がある方に運転体験してもらえるような取り組みもやってみたいですね。
関連チームとしてロボティクス部門も! ニワカソフトのパイオニア精神
加藤:冒頭で少し、ロボティクスのお話も出ましたよね?そこも気になりました。
古賀:ロボマスターですね。こちらも大学生や社会人が垣根なく集まって、大会出場を目指しています。ただ、世界大会なのでこのコロナの状況下で大会開催が難しいのも現状です。
実はチームの中には、障害者の方に対する補助器具を設計や作成してみたいという考えを持っている方もいらっしゃいます。特に学生ですね。以前から機会をうかがってはいましたが、彼らとePARAの組み合わせ、なにかできるかもしれませんね。
加藤:それは非常にありがたいです。我々も「ePARA2019」の際に、乙武さんに「ぷよぷよ」をプレイしてもらう機会があって、専門家の方に伺いながらいろいろ工夫したんです。このインタビューを機会に、ニワカソフトさんとも連携していきたいですね。ハッカソン(技術アイデアを競う大会)とかやってみたいです。
古賀:ハッカソン、ぜひ。 「こんな悩みがあるよ」というのを提示してもらえれば、彼らから様々なアイデアを得られると思います。個人特化型の器具は大手企業さんが作るのは難しいと思うので、彼らが一人でも多くの人がゲームを楽しむ助けになれるならいいなと思います。そういう未知の世界も、にわかもん精神で切り開いていきたいです。
まとめ:世代を問わず、つなげる力を持つeモータースポーツ
小学生から大人までが一丸となり、チーム活動を行なっているニワカゲームスのみなさん。全国大会でハイレベルな戦いをする強い選手がチームにいることで、これからに続こうとする選手たちに刺激になっていく、良い流れを作られていると感じました。また、グランツーリスモという、現実世界とも関わるeモータースポーツのゲームタイトルだからこそできることがたくさんあるということも感じさせられました。
今回インタビューにご協力いただいたニワカゲームスの皆さん、本当にありがとうございました。
参考URL
インタビューチーム: ニワカゲームス
Twitter: https://twitter.com/niwakagames_gt
インタビュアー:加藤 大貴(バリアフリーeスポーツePARA代表)
Twitter: https://twitter.com/koken_3
Facebook: https://www.facebook.com/koken3Kato
国家公務員を辞めてまで実現したかったこと~ePARA代表加藤が振り返る~
インタビュアー兼 編集:希央 (ライター)
Twitter: https://twitter.com/FClaustra