はじめまして。スタートアップを主な対象として、ビジネスとテクノロジーに関する記事執筆をしているNocchiと申します。仕事柄、さまざまな業界の人と会話することが多いのですが、ダイバーシティやインクルージョンといった概念の普及に伴い、誰にでも使いやすいサービスになっているかという観点である「バリアフリー」「アクセシビリティ」という言葉が注目されることが増えてきています。
今回は、バリアフリーeスポーツを提唱するePARA(イーパラ)が障害当事者が中心となって行われるバリアフリーなゲームの文化祭「ePARA CARNIVAL 2022 SPRING」をレポートします。このイベントは、「本気で遊べば、明日は変わる」をステートメントに掲げ、実際に障害者の皆様と一緒にひとつひとつの企画を作り上げています。
2022年5月27日メディアデーと28日ゲーム(eスポーツ)デーの2日に分けて、JOYSOUND品川港南口店2階に設置されたバリアフリーe-sports施設「Any%CAFE」にて収録・配信された本イベント。現場からまずは2日目に行われたゲーム(eスポーツ)デーのレポートをお届けします。
障害者が企画するゲーム(eスポーツ)の文化祭、開幕!
会場はJOYSOUND品川港南口店。通常時にオープンしているバリアフリーeスポーツ施設「Any%CAFE」は別に、エンターテイメントスペース「J-SQUARE」や通常のカラオケルームを貸し切って、各個室でさまざまなゲームに参戦できるようになっていました。
タイムスケジュールは以下の通り。
10時30分 | オープニング・各ブース企画準備 |
11時00分 | 「心眼CUP」団体戦(ストリートファイターV チャンピオンエディション大会)【配信あり】 |
14時00分 | 「ePARAユナイテッド」チャレンジマッチ(FIFAサッカー大会)【配信あり】 |
15時00分 | Pokémon UNITE(ポケモンユナイト) 企業交流戦 in ePARA CARNIVAL 【配信あり】 |
17時00分 | 「RTA」(リアルタイムアタック)イベント |
18時00分 | 「スーパーボンバーマンR オンライン」大会 |
時間の関係で、惜しくもポケモンユナイト以降は開催見送りとなりましたが、心眼CUP、ePARAユナイテッドは大盛り上がり。3階の貸切会場でも対戦を楽しむプレイヤーたちの姿が見られました。
全盲プレイヤーが音だけで対戦をする格闘ゲーム大会「心眼CUP」【ストリートファイターV チャンピオンエディション】
配信会場では目玉の大会が2つ続けて開催。一つ目は、全盲プレイヤーがストリートファイターV チャンピオンエディションで戦う「心眼CUP」。視覚情報を用いずに音声だけでプレイする大会です。
2022年4月17日に行われた「心眼CUP powered by SYCOM個人戦」でも戦ったプレイヤーたちが、今度は3名編成でのリーグ戦で勝負。前回上位を独占した「ギャラクシーラボラトリー」、リベンジを目指す「Blind Fortia」、初心者女子チーム「RYOKE GREEN GABLES」の3チームが参加しました。試合形式はBO3、対戦時間設定は99秒、ラウンド数は3。プレイ用の機体は、1日目でパネルディスカッションにも登壇したサイコム社による提供です。
MCは、モノマネを得意とするお笑いコンビ「NOモーション。」より、エドモンド本田に扮する星ノこてつ。氏と、リュウに扮する矢野ともゆき。氏。春麗に扮するのは、車椅子インフルエンサーとして活躍し、YouTubeチャンネル「中嶋涼子の車椅子ですがなにか!?」でもお馴染みの中嶋涼子氏。そしてBlind Fortiaでキャプテンを務める、なおや選手。「いけるぜ!すでに臨戦体制さ!」と、なおや選手の渋いボイスによるストリートファイターV の登場キャラクター・ルークのモノマネに、会場は一層盛り上がります。
「どうやってプレイをするのか」と思う方も少なくなさそうですが、音の弱・中・強で技を判定。ゲージが溜まった時もフェーズによって音が異なるため判別できるのだとか。エドモンド本田を使ってプレイする時も「どすこーい」というキャラクターボイスが、どのステータスの時かで異なっており、それは健常者プレイヤーの間でも認識されているのだとか。「心眼CUPでは特に音声の違いを意識しながら対戦を楽しめる」と解説が入りました。
前半は「心眼CUPビギナーズ戦」と称し、初心者の女性チームである「RYOKE GREEN GABLES」。この日のために練習を重ねてきたというメンバー同士が対戦します。試合後は「ヨロレイヒ〜」とすかさずキャラクターの声真似が。
後半は「ギャラクシーラボラトリー」と「Blind Fortia」による対戦。先ほどよりハイレベルな技が次々と繰り出され、見応えのある試合となりました。
先鋒戦はギャラクシーラボラトリーチーム、副将戦はBlind Fortiaチームが勝利し、1対1の状態で大将戦へ。
最初からコンボを決める両者。YouTubeでも「強い!」「早い!」「ブラインドの試合とは思えない」とコメントが続きます。試合は白熱するも、ギャラクシーラボラトリーチームが勝利。悔しいのでまた戦いと言うBlind Fortia大将のなおや選手、こういう場で戦えることが嬉しいと言うギャラクシーラボラトリー大将のMM選手。いずれもゲームが好きだという気持ちが溢れ、試合を心から楽しんでいる様子が伺えました。
車椅子eサッカー「ePARAユナイテッド」チャレンジマッチ【FIFA22】
車椅子eサッカープレイヤー構成されたチーム「ePARAユナイテッド」。ゲームに組み込まれたCPUと、ePARAユナイテッドチームが、FIFA22で対戦。
実況は、お笑い芸人でもあるサッカー実況中継者の井上マー氏。解説には、ePARAユナイテッド監督でもあり、JESU公認プロeスポーツプレイヤーのGENKIモリタ氏を迎えました。選手入場のナレーションは、先天性全盲の声優・なおや氏が務めました。
試合は3マッチ。各自、この日のために毎週日を決めて練習を重ねてきたそう。
現地では、クラウドファンディングでの支援者に車椅子を押してもらいながら、メンバーたちが入場。
カスタムされたアバターに合わせて、髪色やヘアスタイルも工夫されていました。
オンラインからも3名が参加。
実際に集合するのは今日が初めてというチームメンバー。たくさんの笑顔がありました。
うまくパスを繋げ、初戦はePARAユナイテッドチームが勝利。第二戦は惜しくも敗戦するも、最終戦では8-0という大量得点で勝利。得点王のTSUBASA氏は「みんなが繋いでくれたので、チームプレーができた」とコメント。キャプテン・とりちゃんの熱い言葉にイレブンが涙する場面もありました。
ブース企画ー対面対戦を楽しむパラeスポーツプレイヤーたちー
バリアフリーなゲームの文化祭「ePARA CARNIVAL 2022 SPRING」で行われたのは、メイン企画だけではありません。趣向を凝らした企画ブースが8会場、バリアフリーな展示企画3会場が用意されていました。
本記事では、企画ブースの一部をご紹介します。
Pokémon UNITE(ポケモンユナイト)会場では企業懇親戦が行われ、汐留社労士法人チーム、看護師連合チーム、TBS連合、ePARA・BASE連合チームの4チームが参加しました。
ヘルスケア会場では、Healthcare Fortia(ヘルスケアフォルティア)のメンバーが中心となって企画が進行。リングフィットRTA世界記録を持つえぬわた氏の指導を受けながら、楽しい時間を
FPSブースでは、ゲーム用のモニタが置かれていたり、身体を支えられるように体にフィットする魔法のビーズソファ「Yogibo」が各所に配置されていたりと、随所に配慮が。普段からオンラインで対戦している人同士が集まっていて、ハンドルネームで呼び合い、慣れた手つきでログインし、楽しそうにプレイする姿が見られました。
1階にある格闘ゲームブースでは、Fighing Fortiaの鉄拳7チームリーダー・むぎちゃんが中心となって鉄拳7をプレイしました。
同じ体験を共有できるeスポーツの可能性
いかがでしたでしょうか。ここではご紹介しきれないブース企画・展示企画の情報は別途、ePARAから記事や動画等でご紹介されるとのことです。そちらもまたご期待ください。
さまざまなハンディキャップを持つプレイヤーが集まり、同じ体験を通して熱い時間を過ごしたバリアフリーなゲームの文化祭「ePARA CARNIVAL 2022 SPRING」。「本気で遊べば、明日が変わる」をまさに体現したイベントでした。
将来的にまた開催予定とのことですので、はぜひ参戦し、この熱気を味わっていただきたいです!
ライタープロフィール
Nocchi
合同会社N.FIELD代表/JP Starups副編集長/NPO法人Startup Weekend理事
MUFG、SoftBankを経て、Fintech系の業界団体で事務局長を務める。個人でもスタートアップや業界団体向けの事業戦略コンサルティングを行う。スタートアップ関連のライターとしても活動。元TechCrunch Japanライター。
HP : https://n-fld.com
Twitter : https://twitter.com/nocchilog