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バリアを越え、混ざり合う。―「ハチエフ26」で見た、バリアフリーeスポーツの現在地―(前編)

2026年7月11・12日、ePARA主催で開催されたバリアフリー・格闘ゲームイベント「ハチエフ26」。第4回を迎えた今回は、2日間で約500人が来場。地元東北のプレイヤーからプロゲーマーまで幅広い人たちが集い、夏の高原が熱気に包まれました。この記事では、格ゲーをこよなく愛する難病当事者(若年性パーキンソン病)のsanakenが、前後編の二部構成でイベントの様子をレポート。前回よりさらに規模を拡大し、進化を遂げたハチエフの姿をお届けします。

【前編】では、イベントの様子と2on2トーナメントの模様を中心に。
【後編】では、来場者やゲストの声、そして筆者が感じたことをお届けします。

集合写真。ざっと120人ほどの参加者・スタッフが拳を上げて写っている。

「ハチエフ」ってどんなイベント?

格闘ゲームを使ったバリアフリーeスポーツイベント

「ハチエフ」は、障がいの有無や年齢・性別などの区別なく、格闘ゲームを通じて交流・競技を行うeスポーツイベント。2022年に岩手県八幡平市で第1回が開催されて以降、毎年同地で開催を重ねてきました。対戦格闘ゲーム「ストリートファイター6(以下、スト6)」を用いたトーナメントを軸に、最新コントローラーやゲーミングPCの展示など、多彩な出展が楽しめるのも魅力。2日目に開催される個人戦は「GRAPHT CUP 2026」の岩手県予選にも指定されており、東北最大級の格闘ゲームイベントへと成長しています。

ハチエフ2026のキービジュアルののぼり。

コンセプトは「誰もが挑戦者として並び合える場所」

ハチエフの根底にあるテーマは、「誰もが挑戦者として並び合える場所」。障がいがあろうが、ゲームが下手だろうが、いろんな人たちが集って、ただ一緒にプレイする。そして、あらゆる人が初めて挑戦する場として開かれた大会にしたい――。大会プロデューサー・Jeniさんの理想が込められています。

また、キャッチコピーの「はじめの一歩が、とどく場所」は、昨年のイベント開催に合わせて、著者が書かせてもらったもの。一人でも多くの人の、勇気ある一歩を応援したい。難病当事者でもある著者の想いも、この言葉に託しました。

「はじめの一歩が、とどく場所。」と書かれたキービジュアルのスクリーンの写真。

クラウドファンディングに見えた共感の輪

また昨年に引き続き、クラウドファンディングを実施。昨年を超える230万円以上もの支援金が集まり、無事にサクセスしました!ハチエフの思いに共感する人の輪が、年々広がっていることを感じさせる結果です。

https://camp-fire.jp/projects/863084/view

計500名が集った会場の様子をレポート!

夏の高原リゾートにプレイヤーが集結

それでは、レポートスタート!会場は例年と同じ岩手県八幡平市にある「安比リゾートセンタープラザホール」。盛岡駅から車で約1時間ほど北上した場所にあり、冬にはスキー場として賑わう高原リゾートです。昨年は秋の風を感じさせる9月の開催でしたが、今年は7月に変更。夏草が揺れる高原に多くのプレイヤーが集まりました。

会場に入ると目に飛び込むのが、ずらりと並ぶSycom製の最新ゲーミングPC!1日目の午前中はフリープレイ台が多く設置されており、トーナメント参加者が野試合を楽しんでいる姿が。頭上にはたくさんのスポンサーの横断幕。昨年よりも数を増しており、早くもイベントの成長を確信しました。

対戦を楽しむ人でにぎわう会場の様子

多彩な展示や体験コーナー

会場には出展ブースがずらり。一部をピックアップして紹介します。

まずは、イベントに対戦用ゲーミングPCを提供してくれている「Sycom」のブース。同社製オリジナルグラフィックボードやデュアル水冷システムの展示のほか、PCの購入相談、会場限定のプレゼントなども実施。魅力的な最新PCに思わず物欲が刺激されてしまいました!

サイコム社のゲーミングPCなどが展示されている様子。

こちらはアーケードコントローラーやアパレルなどを展開する「GRAPHT」のブース。展示された最新のコントローラーは試遊可能で、多くの人が最新デバイスの操作感を体験していました。

GRAPHTのバックパックやTsyatu ,グッズなどが販売されている様子。

「ePARA」のブースでは、盲目の格闘ゲーマー・NAOYAさんとの対戦を実施。相手との距離や技のガード・ヒットといった情報を音で感じてプレイできる、スト6の「サウンドアクセシビリティ機能」を用い、ブラインドプレイヤーの“見ている”世界を体験できるコーナーとなっていました。

ePARAブースの様子。

その他、セキュリティソフトの「Webroot」、癒しの場を提供してくれていた「Yogibo」、多種多様なボタンを展示した「七丸工房」、ハチエフ公式グッズの物販など、格闘ゲームプレイヤーの心をくすぐる展示が会場を賑わせていました。

Webrootのセキュリティソフトが並んでいる様子
Yogibo MAXが6体横たわり、その上でくつろぐ人々
七丸公房の様子
ハチエフのグッズ販売の様子

さらに今回新たに追加されたのが、会場後方に設けられたサブステージ。随時ミニイベントが行われ、会場をさらに盛り上げていました。

サブステージ。

著者も参戦!激闘のトーナメントレポート

二度目の挑戦「パラOSAKA’s」

初日には団体戦(2on2)が開催され、筆者も昨年に続き「パラOSAKA’s」としてチーム参戦しました。ペアのゆうたろうさんは、僕と同じ大阪在住。普段はパラ水泳選手として活動しているアスリートでもあり、「スト6」ではマスターランク。心強い味方です!

筆者たなけんとゆうたろうがハチエフキービジュアルの前に座って撮影したツーショット。

始まった第一試合。PCの前に集まった人たちには強者の気配が…。なんてビビッているうちに、僕たちの出番がやってきました!対戦相手はチーム「イマサワ」。先鋒の著者と対戦するのは今井翔太さん。あれ、この方、「Sycom」のロゴが入ったウェアを着ている…。あっ!Sycom eSports所属のプロゲーマーではないか!

いきなり超強敵。全力で挑むも、圧倒的な実力差を思い知らされ敗北…。バトンを託したゆうたろうさんも「良いところなかった」と苦笑いするほどヌルッと敗北。一戦目は完敗で終りました。

心の準備が追い付かない壇上の戦い

第二試合は、会場前方のステージに設けられた配信台でプレイすることに!えっ、めっちゃ緊張する!!相手チームは「口先レジェンド」。このチームの二人はハチエフボランティアでもあり、著者とは顔なじみ。安心感はありつつも、むしろ負けられない戦いです。

いざ壇上へ。先鋒戦は、著者とtoppoevo君のAKI。著者が使うザンギエフにとって苦手キャラ…。toppoevo君と対戦するのは初めて。強さはどれぐらいか…と思いつつ試合スタート。あ、めちゃめちゃ強いやん!秒速で第1ラウンドを落としてしまいました。

続く第2ラウンド。引き続き劣勢を強いられるも、モダン・ザンギエフの十八番「ワンボタンSA3連打」をねじ込み、流れを引き戻すことに成功!あと一撃というところまで持ち込みました。勝負をかけたドライブラッシュからの起き攻め。ラッシュを伸ばして打撃を決めようとしたところに、リバーサル中足暴れからのヒット確認CAに被弾。見事なオーバーキルで負けてしまいました!

対戦会の様子

その後の、ゆうたろうさん対ウルトラマンタロウ君の一戦は、DJ対ガイルという好カード。果敢に攻めるゆうたろうさんに対し、相手はODサマーソルトで何度も切り返しに成功。最後は飛び道具の打ち合いに競り負けて、ゆうたろうさんも涙を飲みました…。

体験会の様子

最終結果は、3戦全て0-2のストレート負け。1勝も挙げられないまま、トーナメントを終えました。無念!!成績は奮いませんでしたが、壇上で味わった緊張感。あと一歩で勝てそうな時の、心臓の音が聞こえそうなドキドキと、頭の芯がキンと冷えるような集中力。この感覚は普段のオンラインでは味わえないもの。それを感じられただけでも参加してよかった!

超ハイレベルなDAY2「GRAPHT CUP」予選

DAY2の個人戦は「GRAPHT CUP 2026」への予選も兼ねたトーナメント。東京・大阪・オンラインなど計5回の予選を勝ち抜いた6名が、8月8日の東京決勝へ進出し、賞金総額115万円と上位2名へのプロライセンス推薦がかかる大舞台です。

国内有数の大規模大会へとつながる予選ということもあり、初日とは打って変わって会場にはピリッとした空気が。プロプレイヤーも多く参加者しており、配信画面の向こうで見慣れた顔ぶれが続々と集結。まさに真剣勝負の舞台となっていました。

過酷なトーナメントを勝ち抜き、優勝を果たしたのはSCARZ所属のあくたがわ選手。0敗ストレート勝ちという圧倒的な内容で制しました!

あくたが選手のよろこびの顔

青春と格闘ゲーム。少年たちのプライドマッチ

ライバル同士の少年の意地がぶつかる5先勝負

今回、最も印象的だったのが、日本最高峰の戦いの裏で繰り広げられていた、2人の少年によるプライドマッチ。サブステージで行われた「DAIJIROO VS KOTARO FT5」です。

DAIJIROO VS KOTARO FT5の様子

戦うのは、以前のハチエフレポートにも登場したDAIJIROO君。プロデューサー・Jeniさんの愛弟子とも言える存在で、筋ジストロフィーを患いながらも、両手両足でアクセシビリティコントローラーを巧みに操り、力強い全力プレイが印象的なプレイヤーです。

対するKOTARO君は、礼儀正しい立ち振る舞いが印象的な中学生の男の子。参加者の中でも最年少クラスながら、その実力は確かなもの。普段から大人に混ざってプレイしていている期待のルーキーです。

二人はライバル関係。以前の対戦ではDAIJIROO君が勝っており、今回の5本先取の勝負でKOTARO君がリベンジに挑みます。

緊迫する空気と感情の交錯

試合前には、お互いを挑発し合う格闘技イベントさながらの煽り映像が会場を沸かせます。さらに観客の前に立った二人は、「負けないけどな!」「かかってこい!」とビッグマウスで観客を盛り上げますが、対戦席に座った瞬間に真剣な表情に。その空気たるやハチエフ版の“獣道”。お互いのプライドをかけた魂の5先です。(知らない人は「獣道 梅原」でぜひ検索を!)

KOTARO君のプレイ写真
DAIJIROO選手の様子

観客にも伝わる緊張感のなか、対戦スタート!初戦はお互いの動きに硬さが見られるも、冷静沈着なプレイでKOTARO君が1勝。そのまま連勝を重ねるか思いきや、粘りを見せるDAIJIROO君。流れを引き戻して1勝を返します。そこから、持ち味である勢いのあるプレイを取り戻し、怒涛の連勝で形勢逆転!気がつけばスコアは4-1と、勝利に王手をかけました。

あと一敗で負けが確定するKOTARO君。観客にも「このまま負けちゃうのかな…」という空気が流れます。背水の陣で挑んだ次の勝負は、お互いが体力ギリギリの状態に。ヒリつく展開のなか、KOTARO君が相手の体力を削り取って4-2に持ち込みます。メンタル強っ!

逆転の流れを引き寄せられるか!?大事な次の一戦。DAIJIROO君の猛烈な攻めを展開。その勢いを崩すことなくKOTARO君を押し切り、ゲームセット!DAIJIROO君の勝利となりました。

勝利が決まった瞬間、車椅子から立ち上がって、勝利の雄たけびを上げながら駆け回るDAIJIROO君。勝利の喜びを全身で表現していました。一方のKOTARO君は、静かに立ち上がり、悔しさを噛みしめるように深く俯いています。目には涙が浮かんでいるようにも見えました。

マイクを向けられ嬉しそうに叫ぶDAIJIROO選手
くやしさを滲ませながら話すKOTARO君

青春を注ぐ価値。競技としての格闘ゲーム

練習を重ね、勝負に挑む。勝った者は全力で喜び、負けた者は全力で涙する。二人の間にあるのは、友情とプライド。障がいなんて何の意味も持ちません。その姿は、まるでスポーツドラマ。青春を注ぎ込むに値する「競技」としての格闘ゲームの姿がありました。

そんなことを感じた著者(44歳)の目には、いつの間にか涙が…。そして、周りを見渡せば、目元をハンカチで拭うたくさんの大人たち。キラキラとした青春の一幕。「ハチエフ」はただの格闘ゲームイベントじゃない。今大会を象徴するような、忘れがたい瞬間になりました。

肩を組んで写真を撮るDAIJIROO君とKOTARO君

【後編へ続く】

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sanaken

1981年うどん県生まれ、大阪在住。フリーランスの編集者・ライター。若年性パーキンソン病の当事者。ゲーセン歴25年以上という格闘ゲーマーだが腕前は永遠の初心者。最もやりこんだ格闘ゲームは「ストリートファイターⅢ 3rd」。(一社)パラサイクリング連盟の広報スタッフも務め、パラ競技を広めることを頑張り中。

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