障害とゲーム

「知的障がいの弟に気づかされた、ゲーム動画の投稿や配信がありがたいという話」と、そこから読み解くこれからの福祉の話

こんにちは、HealthCare Fortiaの夕立Pと申します。今回の記事の半分以上は自分語りの内容です。また、前半部分は個人的にnoteに掲載した内容を一部リライトしたものとなります。

eスポーツ×福祉の領域でこれから役に立つ可能性がある話を身近で発見した、そんな内容となっています。

立てかけられたiPadの写真。ロック画面の壁紙はガンダムの線画。

知的障がいを抱えた弟の話

私には歳が近くて、知的障害と自閉症で手帳2級を持つ弟がいます。

幼い頃から私は弟を守るという話を両親にしていましたが、その誓いは義務教育過程での苛烈ないじめにより、木っ端みじんにくだかれているという苦い過去がありました。

私自身の苦い経験の発端とも言える存在の弟。

弟の近年の衰え

彼は、最近どうも体力が衰えてきたのか、日中に寝てしまうようになってしまいました。普段のありとあらゆる気力もどうも落ち込んでいるように見えました。
実際よく観察してみると「今まで夜更かししてまでプレイしていたゲームをやらなくなっていた」ことに気がつきました。

天井近くにあるベッドの上に、ピンク色のSwitch lightや孫の手、ティッシュなどが乱雑に置かれており、枕元にはぬいぐるみ、扇風機、漫画本が並べてある。
弟がいつも寝ているベッド

ただ、アニメを見たり、辛うじて趣味のプラモデルを作ること等はどうにかできていました。特にアニメ視聴はそこまでしんどくなさそうな様子でした。
とはいえ、アニメは何度も同じものでは見飽きてしまいますし、プラモデルだっていくつも買い与えるわけにはいきません…

どうにか弟の体調を少しでも上向きにしたい、そう考えていました。

お古のiPadを弟に譲ることに

ガジェットおたくで林檎信者の私は、何枚目かのiPad新調をする際に「そういえばいつもは下取りに出していたけど、今回は弟のおもちゃ程度に譲ってあげてもいいかもな…」と思いつき、そうすることに決めました。

コロナ禍以前のワークスタイルでは、出先や通勤中にiPadでクリエイティブなことをすることもありましたが、今やフルリモートで働かせていただいているご身分。

下取り価格は良好であったとはいえ、端末としても充分使えるスペックだったiPadを、この時は軽いノリで譲ることにしたのです。

 iPadを譲ってしばらくしてから

自分がその変化に気がついたのは、半年ぐらい経ってからだと思います。
「弟が、いつもなら布団に潜り込んでいる時間にも起きている」
そういえば、というくらいの気づきだったのですが、明かりのついた弟の部屋を「何をしてるんだ?」と、のぞき込んだところ。

そこには、iPadでYouTubeの動画を見ながら、いつものようにプラモを組んでいる弟の姿がありました。

iPad、めっちゃ使ってるじゃん。

YouTube、めっちゃ見てるじゃん。

その動画も、何を見ていたのか聞いたところ、なんとスーファミ時代の、マイナー寄りなガンダムのゲームプレイ動画でした。

こんなところに、ゲームプレイ動画の需要があるじゃないか!

なんてことでしょう、仮にも福祉×eスポーツ文脈で色んな活動をしてきた自分が、まさかこんな身近な需要を見逃していたとは。灯台下暗し。

たった一人の、たったひとつのケースが、ゲームプレイ動画の投稿や配信の需要というものに気づかせてくれたのです。

たとえマイナーなゲームであっても需要はあります。単に、必要な人に届いていないだけです。

体力・気力共に上向いていく弟

こうして日中に起きている理由が増えた弟は、寝る時間も健康的になり、起きていることによって少なくとも「B型就労支援事業所での作業中にも眠ってしまう」ほどの深刻な体力不足からは脱しました。

自分の興味がある分野には強いこだわりを持つ特性もあり。
本人が苦手な運動を、無理強いをさせることもなく。
動画視聴という一手が、弟の生活習慣を多少なりとも改善させてくれたのです。

プラモデルを作っている机の様子。左側にiPadが立てかけてある。
iPadYoutube横目にみながらプラモデル作っていた

万人に使える手段というわけでもないですし、この話自体がレアケースであるということも重々承知ですが…
それでも、私の弟は救われました。

動画投稿・配信がデータベースという財産になる

動画サイトにアップすると、ストック型の財産になり、データベースとなるので、探している人間がタッチできる可能性は上がります。

まずアップされていなければ・配信されていなければ、誰もたどり着くことができないのです。

最初の一歩を動画投稿者・配信者が踏み出すことで、必要な人がたどり着くことができる可能性が生まれます。

動画の視聴時間を増やせる一手

プレイ動画だってそのうち見飽きてしまいます。実態としては、アニメの代わりに観るものが増えた程度のものかもしれません。
ですが、量やバリエーションが増えることによって、動画視聴の時間を投稿・配信者側も視聴者側も増やすことができます。

私の弟は毎日、ガンダムのゲームプレイ動画をYouTubeで探しています。そういう層が、似たような人たちがきっと、いるはずなんです。

弟が作ったガンプラがたくさん箱に入っている様子。
弟が熱中して作ったたくさんのガンプラ

ここまでがnoteでも書いた内容でした。
元のnote記事はこちら。今読むと思いつきと勢いで書いたこともあり、中々荒削りですね…
https://note.com/yuudachip/n/nebd0f984263e

ここから先は、このエピソードから考えらえる「これからの福祉の話」をしていきたいと思います。

動画投稿・配信と、福祉的意義や活用について

1. ゲーム動画がもたらす福祉的効果

私の弟はYouTubeでガンダムのゲームプレイ動画を視聴することで、日中の活動時間が増え、生活リズムが改善されました。
これは、ゲーム動画が単なる娯楽を超えて、福祉的な役割を果たす可能性を示しています。

特に、知的障がいや発達障がいを持つ方々にとって、興味関心を引き出すコンテンツが、生活の質を向上させる一助となることが考えられます。

2. マイナーゲームのプレイ動画の意義

弟が視聴していたのは、スーパーファミコン時代のマイナーなガンダムゲームのプレイ動画でした。
このようなニッチなコンテンツでも、特定の視聴者にとっては大きな価値を持つことがあります。

動画投稿者が多様なゲームのプレイ動画を共有することで、思わぬ形で誰かの生活を豊かにする可能性があるのです。
これって多様性の話にも繋がりますよね?

3. 動画配信者への新たな動機付け

noteの記事中で私は「たとえマイナーなゲームであっても需要はあります。単に、必要な人に届いていないだけです」と述べました。
これは、動画配信者にとって、視聴回数や収益だけでなく、誰かの生活にポジティブな影響を与えるという新たな動機づけとなるでしょう。

また、この話は、他のクリエイター活動にも言えることだと考えています。
再生数やPVよりも質を求めるタイプには、私の弟のような事例みたいなものはとにかく目に入ってほしいですね。
(動画を作品と読み替えるだけで、世の中にある密やかな需要という存在に気がつくことができるかと思います。)

4. テクノロジーと福祉の融合

iPadを弟に譲ったことが、彼の生活改善のきっかけとなりました。これは、テクノロジーが福祉の現場で有効に機能する一例です。

今後、タブレット端末やインターネットを活用した支援が、より多くの人々の生活を支える手段として注目されて欲しいと願います。

5. ゲーム動画の教育的・療育的活用

ゲーム動画は、単なる娯楽にとどまらず、教育や療育のツールとしても活用可能だと思われます。
例えば、特定のスキルや知識を習得するための教材として、またはコミュニケーションのきっかけとして利用することが考えられます。

今後、専門家と連携しながら、ゲーム動画を活用したプログラムの開発等々に期待したいですね。

ロフトベッドの下や部屋中の収納ボックスにたくさんのプラモデルが収納されている。ごくわずかなスペースの残る作業台にiPadが立てかけられている。
プラモデルあふれた部屋と立てかけられたiPad

むすび

動画投稿・配信者の方達が、動画をアップする理由のひとつとして。

クリエイターの方々が多様な作品を生み出し、公開することで生まれる可能性として。

その一歩を踏み出す勇気として、この記事が読まれたらいいなと思います。

今回は貴重な機会をいただき、ありがとうございました!

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夕立P

音楽家として社会福祉とeスポーツに貢献する、異色で異業種コラボマン。ボカロPで、バリアフリープロジェクト「HealthCare Fortia(ヘルスケアフォルティア)」キャプテン。

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