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健康にゲームを用いてアプローチするDr.GAMESの挑戦

 新型コロナウイルス感染症がまだまだ終息しない中、ePARAではメディカルパートナーの一般社団法人 Dr.GAMESから感染予防のアドバイスをいただいています。今回は、同法人の代表理事を努める医師の近藤慶太氏から、「医療」と「ゲーム」を掛け合わせたDr.GAMESの取り組みについてご紹介いただきます。

学生時代は謎解きイベントを多数制作

はじめまして。一般社団法人Dr.GAMES代表理事の近藤慶太と申します。私は、普段は総合診療専門医として主に診療所をベースに日常診療をおこなっています。新型コロナウイルス感染症を含めた発熱外来や、生活習慣病などの外来での日常診療、乳幼児健診、予防接種、透析、訪問診療、妊婦健診、小児発達障害・思春期診療、リハビリテーションなど、子供から大人まで多くの科の専門医と連携をとりながら幅広く診療をおこなっています。

学生時代は体験型謎解きイベントを制作する団体を設立し、東京ジョイポリスや埼玉県川越市の街全体を使った謎解きなど大型の会場のものや、TVや企業タイアップのものまで、多くの謎解きイベントを制作していました。そのような背景があり、「医療」と「ゲーム」を掛け合わせることで、多くの人々の健康に寄与できないかと考えていました。

川越市での謎解きはシリーズ累計5000人以上動員。東京ジョイポリスでは20コンテンツ以上の制作を指揮しました。
埼玉県川越市と東京ジョイポリスでの謎解きイベントのポスター

そんな中、私の職場に研修に来ていた生粋のゲーマーで、ゲームの腕前も日本トップレベルであった医師の阿部と出会い、意気投合してDr.GAMESが誕生しました。
(参考:Dr.GAMES理事・阿部智史、ゲームが導いたキャリア ~ガチゲーマーはこうして医師になりました~

Dr.GAMESは「ゲームプレイヤーの健康への介入」「ゲームがもたらす疾病への介入」「ゲームを用いた医療への介入」の3本柱で「医療」×「ゲーム」で人々を健康にする活動を行う団体です。

ゲームプレイヤーの健康への介入、ゲームがもたらす疾病への介入、ゲームを用いた医療への介入
Dr.GAMESの事業の3本柱

その中でも、私は謎解きイベント制作者であった背景から「ゲームを用いた医療への介入」を得意としています。そこでキーワードになるのは「ヘルスリテラシー」と「ゲーミフィケーション」だと考えています。今回はこの2つのワードについて解説しながら、私たちが目指すことについて理解していただければと思います。

キーワードは「ヘルスリテラシー」と「ゲーミフィケーション」

医療の知識には難しい内容が多いです。例えば、医師は患者さんに病気の説明をするときになるべく平易な言葉で説明するように努めますが、それでも理解されないこともしばしばあります。また、医師は知っていても世の中の人々には正しく理解されていない医学的知識もまだまだ多く存在します。

そういった問題を解決する鍵の1つに「ヘルスリテラシー」があると私は考えています。「ヘルスリテラシー」とは、健康情報を入手し、理解し、評価し、活用するための知識、意欲、能力のことを指します(1)。私たちが制作するゲームの目的の1つには、楽しみながら多くの人の「ヘルスリテラシー」を高めて、健康に近づいてもらうことがあります。

また、ゲームの持つ最大の魅力はそのエンターテイメント性や楽しさです。このようにゲームでない活動にゲームの要素を持たせるデザインのことを「ゲーミフィケーション」といいます。ゲーミフィケーションはゲームデザイナーのNick Pellingによって2004年に初めて提唱された言葉です(2)

(1) 中山和弘.ヘルスリテラシー 健康教育の新しいキーワード.福田洋,江口泰正編.東京:大修館書店;2016.4.
(2) Debate G. Gamification for Productive Interaction. 2013 8th Iber Conf Inf Syst Technol (CISTI), Lisboa. 2013:1–5.

謎解きを通じて楽しみながらリテラシーを高める

私たちDr.GAMESでは、「病気が分かる謎解きゲーム ナゾピタル」として、「怪盗モリワールと秘密のワクチン」という主に子宮頸がんの予防に用いられるHPVワクチンの啓発の謎解きを制作しました。小学生以上を対象として、冊子とLINEを用いながら謎解きをすることができます。
こちらから「怪盗モリワールと秘密のワクチン」ダウンロードして遊んでいただくことも可能です。

「怪盗モリワールと秘密のワクチン」のゲームキット
HPVワクチンについての啓発を目的とした謎解きゲームのキットの一部

従来、病院での病気の啓発はポスターやチラシによって行われ、情報は受動的に提供されるだけでした。しかし、謎解きを用いることで参加者が能動的にゲームに参加し、楽しみながら有用な情報を得ることができます

この謎解きを作ろうとしたきっかけは2019年ごろ、診療の中で若くして子宮頸がんで亡くなる方、悲しむ家族を診ていく中で、HPVワクチンの日本での接種率の低さを知ったことでした。2013年にHPVワクチンは定期接種化されましたが、接種部位以外の体の広い範囲の持続する疼痛などが報告されるようになり、積極的な勧奨が国から差し控えられていました。積極的な勧奨が行われないと予防接種を促すハガキや予診票が送られてこず、その結果日本での接種率は0.6%(2020年)まで落ち込みました。医学的に正しい情報と世の中の情報のギャップを感じ、そこを橋渡しする謎解きの制作を始めました。

この謎解きはみんパピ!みんなで知ろうHPVプロジェクトが監修し、正確な知識が伝わるように配慮され、同プロジェクトのホームページにて無料でダウンロードして遊べるように公開されています。また、全国の希望する小中学校への配布も行われました。そして、2022年4月から8年ぶりにHPVワクチンの積極的な勧奨の再開が実現しました。この世の中の流れに私たちが果たした役割は本当にわずかでしたが、多くの人々が多様なアプローチをしながら風向きを少しずつ変えていくことに寄与できたことは大きな財産になりました。こういった、エンターテイメントや楽しさを第一の目的としない社会問題の解決を主目的としたゲームのことを「シリアスゲーム」といいます (3)。この分野で当団体は、病気が分かる謎解きゲーム ナゾピタル第2弾「うつ病」を2022年8月より発売しています。

Dr.GAMESが企画・医療監修を行った「病気が分かる謎解きゲーム ナゾピタル『うつ病』」

こちらはやや難易度を上げて、謎解きが好きな方を対象にして制作しています。これからも、このような謎解きを制作していくので、謎解きの力で解決への手助けができる医学的な問題がありましたら、お気軽に当団体に連絡をください。

新型コロナウイルス感染症の影響で、子供の予防接種を延期したり、必要な定期受診を控えたり、発熱以外で病院や診療所へ行くのを控えたりする傾向も見られています(4)。私たち医師は、病院や診療所で働いているだけでは、一握りの人にしかアプローチできません。一人でも多くの人が健康で幸せな生活を送れるように、私たちDr.GAMESは、医療とゲームの掛け合わせでアプローチしていきます

(3) Sanmugam M. Gamification and Serious Games : - The enigma and the use in Education. ISQAE 2014 3rd Int Semin Qual Afford Educ. 2014;(November).
(4) Aoki T, Matsushima M. The Ecology of Medical Care During the COVID-19 Pandemic in Japan: a Nationwide Survey. J Gen Intern Med. 2022;37(5):1211–1217.

参考URL

公式サイト:一般社団法人Dr.GAMES
Twitter:Dr.GAMES【公式】医療×ゲームで人々を健康に

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