株式会社ビーウィズロゴマーク BTOパソコンのサイコムロゴマーク ヨギボーロゴマーク ジョイサウンドロゴマーク

プレイレポート

視覚障害者がパワプロ2020を楽しめる5つの設定を考えてみた

前回、「双極性障害と広汎性発達障害の筆者が見るパワプロシリーズの魅力」を執筆させていただいた須賀一惺です。
前回の予告通り本記事では、視覚障害の方がパワプロ2020で遊びやすくなるような提案をしていきたいと思います。
この記事は、視覚障害者同士がパワプロをより楽しく、より戦略性を感じ、より平等に試合ができるということを目的としています。
ただ自分自身は視覚障害ではありません。そこで、以下のような取り組みを行った上で考察しました。

なお、パワプロシリーズの設定は視覚障害がある方には難易度が高いため、本記事の内容を実践する際は、最初はサポートしてくれる方に設定を依頼していただくことをおすすめします

パワプロ2020、晴天の甲子園球場。左打席の糸井選手がバットを振り切り、カーン!という爽快な打撃音。白球はライトスタンドに消えていった。
パワプロ2020 設定のお陰(?)で完璧なホームランを打てたシーン

目隠しをしてパワプロ2020をプレイしてみた

自分はオンライン大会で上位に入るなどパワプロの腕には自信がある方でした。

しかし目隠しをしてプレイすると勝手が全然違いました

ちなみに設定は北村さんの「全盲の僕でもパワプロをやりたくて試したこと」の記事を参考にして同じ条件でやってみたつもりだったのですが、設定を間違えて守備の設定を「捕球オート」という、捕球のみをコンピューターがしてくれて、送球先は自分で決める設定でやっていました・・・。
ただ、これに関しては意外にも送球は目隠しをしていてもいけることに気が付いたので結果オーライだと思っています。

そして5試合ほどプレイしてみた結果、やはりバッティングがとても難しいという感想を持ちました。
ヒットを2、3本打って完封負けなどが目立ちました。

打てなかった理由は3つあります。

  1. 相手投手が投げるタイミングに発する音を聞き逃してしまう時があるということです。聞こえない場合のほとんどは実況アナウンサーの声によってかき消されてしまっていました。
  2. 特定の球種への対応が難しいことです。特定の球種とはチェンジアップやカーブ系統などの球速の遅い球種のことです。
  3. ストライクとボールの見極めが不可能なことです。これに関してはどうしようもないのかなあという感想を抱きました。

ただ、3つ目の理由以外の項目は設定によってある程度の改善をすることができると思いました。

他にプレイしていて困難に感じたところを挙げていくと、

  • 複数のランナーがいるとき、ランナーがどの塁にいるのか分からなくなること
    (例:守備の際、ランナー1塁でライト前ヒットを打たれたとすると、一塁と二塁にランナーがいる場合と、一塁と三塁にランナーがいる場合に分かれ、次の打者の打球によっては送球先の判断に困ったりします)
  • 完全に捕球するまで判断ができないので、送球がワンテンポ遅れること
  • 外野手のポテンヒットなどの緩い打球に対する捕球音が聞こえないこと
  • 監督の采配をオートに設定しているので、投手の交代が遅れ、スタミナが少ない状態で投球して打たれる場合があること

本当に別のゲームで遊んでいるような感じで緊張感がありました。
試合中は実況のアナウンサーの声と、打球音、捕球音にかなり集中していました。

視覚障害者向け パワプロ2020 おすすめの設定の紹介

設定の紹介をしようと思います。箇条書きにすると、

  1. サウンドの変更
  2. 投球数制限を65球に設定
  3. アナウンサーを清水アナに変更
  4. リプレイをなしに変更
  5. 投手にボイスを設定

意外な項目もあったのではないでしょうか。

設定1.サウンドの変更

サウンドの設定をする理由は、打球予測の精度を上げるために打球音を聞きやすくすることと、送球をするために捕球の音を聞きやすくすることです。
サウンドは、メインメニューの「データあれこれ」の「サウンド」で変更できます。
まず「打撃音オプション」で打撃音が3つ選べるのですが、その中の「打撃音2」を選択します。
プレイしていてこの打撃音が一番打球の強さが予測がしやすいと感じました。
なんとなくですがメジャーリーガーが使うバットの音と似ている気がします。メープル素材のバットの音なのでしょうか。
あとは、「実況」、「試合効果音」、「キャラボイス」以外のサウンドを半分にします。

パワプロ2020 サウンドの設定画面 上記の通りにするとこうなります

これでサウンドの設定は完了です。
もちろん、好みの設定があるのならそちらを優先してもかまいません。

設定2.投球数制限を65球に設定

投球数制限はメインメニューの「データあれこれ」内「マイ設定」の「試合設定」で設定できます。
投球数制限は65球、80球、95球の3つの選択肢があるのですが、おすすめは65球です。

実際の野球の試合だと65球の制限だとイニング数(投球する回の数)で言うと3、4回程度しか投げれないのですが、パワプロで、しかも画面が見えないとなるとどうしても初球か2球目で勝負が決まる打席が多くなってしまうので65球でも先発投手の役割を十分果たすことができます。
そして65球の設定ならほぼ確実に投手のスタミナが切れる前に交代できるので、不本意な失点は減ると思います。

加えて、先ほど述べたチェンジアップやカーブ系統などの遅い変化球を使ってくる投手を相手にした場合、あえて投球を数回見逃し、投球数を投げさせる作戦もできるので戦略性も上がるのかなと感じています。
ただ、投手一人で完投することがほぼ無くなるのでそこは残念なところです。

設定3.実況アナウンサーの変更

アナウンサーは、メインメニューの「データあれこれ」内「マイ設定」の「試合設定」で設定できます。

実況アナウンサーは
・オーソドックスなテレビの野球中継のような実況をする堂前英男アナ
・パワプロならではの情報を交えて試合を実況する清水久嗣アナ
・架空のゲーム内のテレビ局のPTV(パワフルテレビ)の名物アナで熱くコミカルな実況の熱盛宗厚アナ
の3人から選べるのですが、おすすめは清水久嗣アナです

理由は、この三人の中で一番情報量が多く、発動中の特殊能力や選手の能力値や調子を実況で教えてくれることがあるからです。
意外と特殊能力の解説のお陰で、ランナーの位置が確認できたりするので助けられたりします。

設定4.リプレイの有無の設定

リプレイの有無もメインメニューの「データあれこれ」内「マイ設定」の「試合設定」で設定できます。
最後にリプレイを「なし」にします。リプレイは、普通にプレイする時は好プレーなどを見返し、その余韻に浸れます。
しかし聴覚を重視したプレイでは集中力が必要となる一方、リプレイがあることで試合のテンポが悪くなり、集中力が切れる可能性あると思いましたので思い切って「なし」にしました。

設定5.チームアレンジを使った投手へのボイス設定

パワプロには自分でチームを作ることができる「アレンジ」モードがあります。
実在の選手達で自分だけのオールスターチームを作ったり、自分が「サクセス」モードで作成した選手たちでチームを作ったり、実在選手と架空のキャラでの混合チームなども作れます。
この「アレンジ」を使い、投手にボイスを付けることによって、投球時に声が出るようになるので投球のタイミングを図るのが簡単になります。
ちなみに野手にボイスをつけると、ボールを打つ時の声で打球音がかき消され打球の強さの判断がしづらくなるのでおすすめしません。

投手へのボイス設定の方法は、
「アレンジ」モードに入る

「作る」を選択

空いているスペースを選びチームカテゴリーを「フリー」にする

好きなチームを選び、「登録設定」から「ボイス設定」へ

これで選手にボイスを設定することができます。
ボイスの種類は男性1~10までの10種類と、女性1~10の10種類の合わせて20種類です。
筆者が実際に試合で使い確認したところ、投球時に声が聞き取りずらいボイスがいくつかあったのでそれも載せておきます。
男性ボイスでは男性1、男性4、男性8、男性9、男性10。クール系のボイスは聞き取りづらかったです。
女性ボイスは全体的に聞き取りやすかったのですが、女性4と、女性8が少し分かりづらいなという感じでした。

ただ、この設定を実在する12球団分全投手にするのは大変です。
1軍にいる、または1軍レベルの投手だけにするのがおすすめです。
まあこれでも大変なのですが・・・。

パワプロ2020 1軍投手全員にボイスを設定した状態

また、「アレンジ」モードでは、スターティングラインナップを決めることが可能なので、よく使うチームだけでも決めておくといいかもしれません。
一度決めておくと、決められたメンバーが毎試合先発で出てくれます。
ちなみに「DH(※1)なしベストオーダー」、「DHなし対左投手」、「DHありベストオーダー」、「DHあり左投手」の4種類の場合のスターティングラインナップを決めることができます。
しかし、面倒なら初期状態のままでも困ることはないので設定しなくても大丈夫です。

(※1 DHとはdesignated hitterの略で日本語だと指名打者と呼ばれ、野球では投手の代わりに毎打席打つ打撃専門の野手のことを指します)

視覚障害者向けの設定で、試合をやってみた

先ほど述べた設定で一番簡単なレベルのコンピューターと試合をしてみました。
その模様をYouTubeにアップロードしたので、ご興味がある方はご覧ください。
この試合は7イニング制でしています。(通常は9イニング)

試合中の困ったときに役に立ちそうな小技

守備の際、外野に打球が飛んできたことは分かっているが捕球したかどうか不明だったり、どこに送球すればいいのか分からない時があると思います。
そんな時は、PS4ではR2ボタン、SwitchではZRボタンを連打し、まずは内野にボールを返す、というのがあります。

また、守備時にランナーがどこにいるか分からなくなったら、牽制球を投げてみて確認するという小技もあります。
ランナーがいれば牽制球を投げ、いなければ何も反応がないのでそこで区別できます。

実戦で困ったときに使ってみてください。

こんなことも考えてました

応援歌を設定してみた

「アレンジ」モードで応援歌設定ができます。
ブラインドeスポーツ部の座談会での、「BGMの変化でゲーム内の場面の変化が分かる」という意見をヒントに、チャンス時に特定の応援歌を流すことによって得点圏(2塁または3塁)にランナーがいるのが分かるかもしれないと思って、試してみました。
残念ながら、応援歌によって捕球する際の音が消えてしまうので、この案はボツにしました。

登録メンバーの変更、ボール球多投への対策 etc

全盲の僕でもパワプロをやりたくて試したこと」で北村さんも触れられていましたが、視覚障害者には、チェンジアップやカーブ系統の遅い変化球を打つのが難しいです。
そこでこれらを持つ投手を1軍メンバーから外そうと考えたのですが、それをしてしまうと深刻な投手不足になってしまうので止めました。

また、人対人の試合の場合、ボール球ばかり多投されると全く打つことが出来なくなってしまうなあとも考えてます。
しかしこの作戦への対策は、設定では対処が困難です。
これに関しては各々のスポーツマンシップでどうにかするしかないのかもしれません。
(eスポーツにおいてもスポーツマンシップは大切です)

選手の調子を均一にできる設定もあるので、平等性を上げるためこれを使うのもありかもなあとも考えています。

視覚障害の方のパワプロについて考えてみて思ったこと

設定が難しい

まず設定がとにかく難しいということに尽きます。

もっと設定での読み上げを充実させてほしいと思います。
たとえば、こころアナウンサーや熱盛アナウンサーなどゲーム内の架空のアナウンサーに読ませるなどして、遊びやすさの向上に繋げていってほしい思いました。

また、試合前などスターティングラインナップを決める際にも、もっと音声情報が欲しいです。
いずれかのボタンを押すとその選手の音声情報が流れるようにするだけでも、スターティングラインナップを決める楽しみを味わうことができると思います。
おそらく、試合中の代打や投手の交代もしやすくなると思います。

掛け声機能があると良い

筆者は昔野球部だったのですが、スポーツには掛け声が付き物だと今でも思っています。
もし掛け声を試合中に流せたら状況判断もしやすくなり遊びやすさの向上に繋がる気がします。
例 
・サードに打球が飛んだら「サード!前!」みたいなボイスが出る。
・2塁打になりそうな打球を打ったら「2ついける!」というボイスが出る。

このようなモードを搭載をしたら実際のフィールドの雰囲気に近づけるし、視覚障害の方にも優しいゲームになっていくと思います。

終わりに

私は、視覚障害者の方とお話ししたうえでゲームの遊び方を考えることで、ゲームに関する視野が広がりました。

自分の知らない価値観を知るのが好きなので、本当にいい経験になっています。

しかし、この考察の記事はまだ初歩の段階。よりよい物にするには、視覚障害者の方の協力が欠かせません。

いつか、視覚障害者を含めた障害者と健常者が一緒にパワプロをプレイする大会ができたらいいなと思います

ここまで読んでくださりありがとうございました。

最後に、貴重な意見を聞かせてくれたブラインドeスポーツ部の方々と、本記事のきっかけになる「全盲の僕でもパワプロをやりたくて試したこと」の著者・北村さん、記事を書かせて下さったePARAさんへ心からの感謝をします。

ありがとうございました。

-プレイレポート
-, , ,

© 2024 ePARA