こんにちは。ePARA編集局のYukkoです。
今回は、バリアフリープロジェクトチーム「Fortia(フォルティア)」の「Fortiaメンバーとしての自分を見つめ直すワークショップ」のレポート後編をお送りいたします。
このワークショップは、ePARA公式ユニフォームを着用するにあたり、ePARA顧問である東京都立大学人間健康科学研究科ヘルスプロモーションサイエンス学域准教授の西島壮氏をファシリテーターにお招きし、「バリアフリーeスポーツのプレイヤーとしてのあり方を考え、意見交換する場」として開催されました。
ワークショップ第二章のテーマは「応援してもらう存在になるためには?」。
選手たちの真剣な思いと覚悟を感じさせる第二章の様子をご覧ください。

「こういう存在になります」宣言
まずは、「One Team」をコンセプトに同じユニフォームを着てさまざまな挑戦をしていく際に、「人に見られている自覚を持ち、応援される存在となる」ことは非常に重要だという前提を共有しました。それからグループディスカッションに移り、「憧れのスポーツ選手とその理由」を発表し合い、ユニットごとに「こういうことを大切にして、応援される存在を目指す」という方向性を決めてもらいました。

グループディスカッションでは、ボクシングやバスケットボール、野球、フィギュアスケートなどさまざまな競技から選手の名前が挙がり、憧れる理由に皆共感しながらその共通項を探りました。
ディスカッションを終え、各ユニットの発表した内容を紹介します。
・Racing Fortia
人柄、人間性が大切で、そこに実力が伴っていたり、その人にしか出せない魅力があったりすれば応援してもらえるのではないか?まず人間性を大事にして、実力や魅力を上げる研鑽が必要。

・ePARAユナイテッド
イベントを共創した川崎フロンターレの小林悠選手から感じられる「チーム愛」「ストイックさ」「何かを乗り越える」と言った姿勢が大切。一緒に楽しめるチームを目指し、いろいろなキャラクターのメンバー、困難に打ち勝つ力を持つチームメイトとチームプレイの楽しさを伝えていきたい。

・Fighting Fortia
限界を超えて金字塔を打ち立てている人たち、突出した技術や実力のある面白い人たちに憧れる。目指すのは、己の鍛錬を欠かさず、その場にいる人たちが親しみやすいパフォーマンスができること。例えば、お客さんとの一体感を作ることができたり、子どもたちを楽しませたりできる選手でありたい。

選手たちの意見交換の様子を見ていた西島先生は、「皆さんのチームへの愛と、皆さんが障害を持ちながらePARA、そしてeスポーツを通じて繋がれているんだということを感じられ、この活動の意義と魅力を感じた」と述べ、チームの一員としての自覚と目指すべき方向性をそれぞれが考える良いきっかけとなっていることを実感していました。
応援してもらう存在になるためには?
続いて、西島先生より、第二章のテーマ「応援してもらう存在になるためには?」についての講義がありました。
テーマをひも解く鍵として、
・eスポーツも文武両道を目指せないか?
・eスポーツプレイヤーはeスポーツ愛好家(ゲーマー)で良いのか?
の2点について考察を伺いました。
そもそも文武両道とは?
西島先生は、「文武両道とは何か?」を考えるにあたって、例として、ノーベル生理学・医学賞受賞の山中伸弥氏がラグビー経験者であったり、化学賞受賞の吉野彰氏がテニス愛好家であったりと、ノーベル賞受賞者の多くがスポーツ経験者であることや、オリンピック出場選手が医学部に入学したり、東大医学部在籍中に三段跳びで大学日本一となった選手がいたりすることを挙げ、「文武両道」が同時でなくても良い、キャリアが終わってから別のキャリアがスタートする場合もあるという見解を述べました。
そして、「文武両道」とは、「どちらも極めること」でも「大人になったら関係ないこと」でもなく、「文も武も、どちらもがんばること」で良いのではないかとの考えを示しました。
また、第1章で「スポーツとは非日常の遊び」と定義したことを振り返り、日常が「文」で非日常が「武」として共存し、「文武不岐」、つまり「文」と「武」は分かつことができないもので、日常が非日常のためになり、非日常があることによって日常が豊かになるような「文武」のあり方こそ、現代の「文武両道」ではないかと説明しました。

加えて、「文武両道」は難しいことではなく、「そう教育されているからそう思うようになってしまう」ものであり、「両方がんばるのが当たり前」という、子ども・親・社会のマインドセット(常識・当たり前)を変えることが必要だと解説しました。
eスポーツ選手にとっての文武両道とは?
その上で、西島先生は、今eスポーツプレイヤーとしてユニフォームを着用する、それはある種、非日常の「武」を日常(生業)とすることと捉えられると述べ、その場合に必要な考え方の一つとして、「ノブレス・オブリージュ(Noblesse Oblige)」を紹介しました。
「ノブレス・オブリージュ(Noblesse Oblige)」とは、「騎士道精神」「高い社会的地位には義務が伴う」という考え方です。つまり、Fortiaのメンバー一人一人が、ePARA公式ユニフォームを着ることにどんな義務・責任が伴うのか?を考え、考え続けなければならないという覚悟を持つことが大切だと、結論付けました。
そして、「社会のマインドセットとの衝突を乗り越える、ぶっ壊す、変えていく姿に期待しています」とメンバーを鼓舞しました。

メンバーからの感想
講義を受け、メンバーから以下のような感想が聞かれました。
・日常と非日常は地続きなので、両者ともやれることだということに共感
・障害当事者としてもeスポーツプレイヤーとしても模範となるように振る舞うべき
・好きでやっていたゲームが仕事となり義務や責任が伴ったときに、自分は本当にそうしたいのかを自分に問い続けることも大切
・重みや怖さを感じることにも、それを乗り越えることにも意味がある
・所属や名前の入ったものを着用したときに背筋を伸ばす感覚を持つのが大切
・100積み上げても1で崩れる可能性があることを一人一人が自覚する
・仲間を傷つけないように振る舞う意識を持っていたい
ここで、ユニフォーム着用にあたりFortiaマネージャーの細貝輝夫より、改めてePARAとしての願いが語られました。
・責任や義務感を持って重く感じるようなアプローチではなく、ユニフォームを着たときには「挑む」マインドを持ってほしい。
・ユニフォームを着ることが、願わくば特別な力が宿るような、いつもよりも20パーセント増しの力が出せるような「おまもり」のような存在になってほしい。
・ユニフォームを着用し、舞台でキラキラ輝いてほしい。それが、応援してくれている企業のキラキラも増してくれるような循環をもたらしてほしい。
このメッセージを受けたメンバーたちは、前向きに取り組む以下の気持ちを語りました。
・今後もらう人たちがそれを着てうれしいと思えるような選手でありたい ・「勝たねばならぬ」よりも「勝ちたい」と思うこと ・「強くありたい」と思う精神を持っていたら大丈夫 ・重さに縮こまるのではなく、仲間がいるからこそ頑張れるという意識でいたい
その言葉を受けて細貝は、「Fortiaはプレイの質や実力だけでなく、障害当事者の方々の生き様や魅力、笑顔なども含めて応援してもらえる存在になってほしい」との思いを改めて伝えました。
そして、西島先生は、「勝負と遊びのバランスを考える上でも、『スポーツとは何なのか』を共有しておくことが大切。定期的に意識を共有し、Fortiaメンバーである自覚を持つ機会を作ると、より結束のあるチームとなっていくのでは?」と述べ、今日のワークショップをまとめました。
おわりに
ワークショップを終えた感想として、西島先生は、
・ePARAを通してeスポーツを本気でやっていて、この集団を愛しているゆえの熱意を感じられてうれしかった。
・eスポーツはゲームを正当化している言葉のように思っていたが、スポーツである価値を知らせる、そういう社会の目を覚まさせるようなことが皆さんだからこそできると思う
とおっしゃっていました。
その言葉の通り、ワークショップでは、メンバーの誰もが自分事として考え、チームを思い、発言する姿が印象的でした。
「挑戦」を体現するツールとしての「ePARA公式ユニフォーム」。
纏った応援の声を、重みではなく、力に変えることで、笑顔に変えることで、また応援される存在になる。
今回の学びを胸に、これからもFortiaは挑み続けます。選手たちの輝きにご期待ください!

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