Fortia 障害とゲーム

リアルタイム修正字幕をゲーム実況に出してみたらデメリットがなかったというお話-Deaf Fortia「Dead by Daylight」座談会-

こんにちは。Deaf Fortiaのしあんです。
昨今大盛況なゲーム配信界隈ですが、私は聴覚情報処理障害(LiD/APD)があり、時々何を言っているのか聞き取れないことがあります。アーカイブでは字幕のあるものも多いですが、ライブ配信ではなかなか見かけません。
そんななか、UDトークを使ってリアルタイムで修正を入れながらゲーム大会のライブ配信をされた、KKさんとすけさんにお話を聞きました。

座談会参加者

けけさんのアイコン。上が紫、下がシルバーの肩上ほどのセミロングヘアで、目は水色。黒のパーカーを着ていて、パーカーと頬に赤字で「DbD」のロゴが入っている。

KKさん
DBDSTREAMERでありDCK主催者。通称けけさん。
Dead by Daylight(マルチプレイアクションのサバイバルホラーゲーム。通称「DbD」)」の配信で活躍するYouTuber。軽快でジェットコースターのようなトークが特徴。
KK - YouTube
KK(@KKch24004877)さん / X

すけさんのアイコン。ライトブラウンの髪にグリーン調の目。モスグリーンの猫の顔がモチーフのベレー帽をかぶっている。顔周りに2匹の黒猫や顔のある雲の絵が描かれている。

すけさん
KKさんの彼女兼相方兼DCK主催者。
同じくDbD配信で活躍するTwitch配信者。落ち着いたトーンでわかりやすい語り口ながら、エキサイトしてくると滑空するようなスピード感を出してくるトークが特徴。すっけすけのすけ - Twitch
すけ(@sukesuke_0421)さん / X

マイカさんのアイコン。「Sky星を紡ぐ子どもたち」のキャラクターをデフォルメしたもので、茶色の顔にこげ茶色の服をまとい、ピンクのマントを羽織っている。虹色のスカーフ、星のスティック、白いモヒカンヘア。

maycaさん
ePARAのバリアフリープロジェクトの一つ「Deaf Fortia」リーダー。DbDプレーヤーでもある。
大会の字幕導入の仕掛け人兼コーディネーターとして参加。
Mayca🌸🎭_gaming(@MaycaDeafFortia)さん / X

しあんさんのアイコン。湖に浮かぶひよこボートのアップ写真。

しあん
ePARA、Deaf Fortiaメンバー。
配信サポートとしてシフト作成など雑務で参加。今回のインタビュアー。
汐鈴@慢性五月病(@cio_lunacy)さん / X

「DbD」「DCK」とは何でしょう?

しあん:早速よろしくお願いします。

KK:いや新鮮だね。普段は聞く側だからさ。逆に聞かれるとなったらちょっと新鮮。

すけ:たしかにね、どっちかっていうとインタビューするほうだから、立場上は。

しあん:お二人は「DCK」の運営をなさっているということですが、「DCK」とは何かというところからお聞きしてもいいですか?

KK:「Dead by Daylight(以降「DbD」)」というゲームの大会配信です。DbDというのはキラー1人とサバイバー4人が対決するゲームです。ルールは色々あるけれど、簡単に言うと、サバイバー全員捕まえればキラーの勝ち、発電機を動かすなどして逃げられればサバイバーの勝ち。

すけ:それぞれのプレイヤーが集まってね、みんなでやるゲームなので。

KK:その参加者を募って大会を開いてます。

すけ:毎月一回のペースで開催してるのかな。

KK:多分トップクラスに多いと思う。

しあん:そんなに!一番多いのでは?

KK:一番じゃないけどね。別の大会は月2回とかありますね。

しあん:ゲーム自体が賑わってるんですね。

KK:それで毎月、違うルールや趣旨の大会を開いていて、字幕がついたのはそのひとつ「シークレットカップ」です。なんか普通の、海外の最高決定戦みたいな感じじゃなくて、どっちかっていうと未経験者とか、最近はじめましたとか、他のゲームに参加しづらい人、大会経験したことない人向けの大会をやってます。

すけ:エンジョイ勢って言うのかな、プロゲーマーとかじゃなくて、一般層に向けた大会っていうイメージじゃないかな。

KK:ガチ勢が参加できる大会も開きますけど、シークレットカップは、大会に出てみたいけどなかなか勇気が出ない方とか耳が聞こえない方向けの配慮した大会。時間があわなくて練習ができない方、コミュニケーションを取るのが苦手な方とかに合わせた大会なので、「まず挑戦してみて!」っていう大会です。

すけ:他にも女性だけの大会とかもやってます。

KK:シークレットカップは何もかもシークレットです。チームもシークレットで、3日前発表だから事前練習もできないし、だから仕事とかでチーム練習に合わせられないっていう人も参加しやすい。
だからこそ新しい出会いがあって。
シークレットは、大会が終わったらはじめてVC(チャットルーム)を開放するんですよ。そこで「はじめまして」って感じで写真撮ったりとか、仲良くなってるみたいな。

しあん:じゃあ特に「聴覚障害者向け」というわけでもない感じですね?

KK:はい、募集するときに「理由」っていうのを書いていただいてるので、例えば「声が出ません(吃音症)」って人も前回いましたね。「耳が聞こえづらいです」とか、「対人恐怖症です」とか。「でも大会には出たいです」「友達が欲しいです」っていう人がいるので、なるべくそういう人は入れてます。

すけ:落とさないようにしてます。

KK:基本的には全員通してますね。そういう方向けの大会なんで。

しあん:毎回応募者は多いんですか?

KK:多いですね。他の大会より。シークレットは応募者100人を余裕で超えるから。

すけ:こんなになると思わなかったよね。

KK:そうだね。だけど、みんながそれだけこういう入りやすい環境っていうのを望んでいたんじゃないかなと思いますね。

すけ:それまでこういうのはなかったからね。

※リアルタイム字幕をつけたゲーム大会配信アーカイブ

リアルタイム字幕導入のきっかけ

しあん:どうして字幕を導入しようと思ったんですか?

KK:もともと、シークレットカップをやろうと思ったのって、大会の視聴者さんの意見とかをXで見てたら、聴覚障害者さんとかの意見で「私も出たいけど、こういう事情で出られない」みたいなツイートがあって。そういう周りの反応を見て「だったら俺がやるかー!」みたいな感じの。

すけ:そう思うきっかけになったリスナーさんが聴覚障害なんですよ。

※きっかけになった方とプレイした時のツイート

KK:すごいと思ったしね、聴覚障害でDbDやるのって。DbDにとって一番大事なのは音なんですよ。それが聞こえない状態でやるとなると、パークっていう、自分でつけられる能力で音を視覚で見えるようにするものがあるんですけど、それをつけながらやってらっしゃって。その人、救助はすごくうまいんですよ。発電機を回すことはできなくても、救助がうまければ行ける、大丈夫、やろうよって誘いまくって。

mayca:聞こえない人って視野が広いですよね。よくそんなことに気がつくな!?っていうか。

KK:それに、絶対あきらめないから。難しいところでも何度も挑戦してやり遂げてくれるから、すごい。そんな時に、maycaさんに字幕のお話をいただいて。

すけ:やってみようかって。

mayca:そのころ、もう字幕の仕事やめようかなって思ってる時期で、KKさんに連絡するのは一回寝かせて保留したんですよ。でも、もうそんな、6回もやって脱出させてあげるようなゲームをするKKさんなら、いけるんじゃないかって思って。
その時丁度DCKのスタッフ募集があったんですよ。で、まずはスタッフで参加させてもらってから声をかけさせてもらいました。

しあん:スパイみたいですね(笑)

mayca:はい、乗りこんで、侵略作戦を始めました(笑)

字幕を入れるにあたっての準備

しあん:字幕付き配信をするにあたって、何か導入したりしましたか?

KK:普段はPCとOBSで配信してまして。

すけ:私はPS5なので、ブロードキャストを使って配信してますね。

KK:大会はPCの方で全部OBSでやっているので、新たに何かっていうのはないですね。

しあん:認識の方はmaycaさんが全部?

mayca:そうです。(maycaさんの作業環境についてはまた後日お伝えできればと思います。)

しあん:では、特に新機材を導入などはいらないんですね。設定はどうでしたか?

KK・なかなかに難しくて。最初はすごい苦戦しました(笑)必要な機材を慌てて買いに走ったら、実はいらなかったとか(笑)いろんな失敗もあり、開催できるか心配だったけど、無事に開催決定できてよかったなって。

すけ:一緒にやってくれたからね、maycaさんが。

mayca:聞こえない人と聞こえる人、みんなが見るって考えると文字の配置ってすごく難しくて。聞こえない人ターゲットだったらもうゲーム画面はもっと小さくして字幕を大きめにして、とか考えるんですけど、聞こえる人も見るので、その間を取るのがとても難しいです。でも最初の設定の時に、他のスタッフの人が頑張ってくれて、OBSの設定を教えてくれたっていうのも大きかったですね。

聴覚障害を持つスタッフとボイスチャットで調整する様子
字幕設定には聴覚障害当事者参加して見やすい配置や色合い模索しました

スタッフの反応

しあん:スタッフのみなさんはどんな反応でしたか?

すけ:反対意見、ないよね。

KK:何でもプラスに考えてくれますね。こっちで何も言わなくても、シークレットの募集要項に「情報保障が必要な人」とかの項目を入れて対応してくれてたり。

すけ:ですね。

mayca:私はすごく説明が下手なので、字幕の事や聴覚障害の事をうまく説明できないのに、自分たちで考えてやってくれてて。積極的に動いてくれます。

しあん:すごいですね。

字幕を入れるメリットとデメリット

しあん:字幕を入れてよかったことって何ですか?

KK:いろんな人に届けられる、いろんな人と一緒にやれるのがわかったのが一番かな。

すけ:実際、どれぐらい、その障害を持った人が見てくれるのかはわからないですけど、見てくれると信じて、多くの人に届くように続けていれば、イメージもついてくるかな。

KK:あとは、maycaさんと出会えたことがよかった(笑)

mayca:こちらこそありがとう(笑)

KK:こういう字幕をつけることができるんだって知れたことがよかったですよ。

しあん:ではデメリットは?

KK:デメリット…

すけ:ないんじゃない?

KK:設定はちょっと苦戦する所があるかもしれないけど。

すけ:色合いとかね。

KK:文字と画面のバランスとかね。でもそこまでデメリットとも思ってなかったり。

mayca:遅延とかは?

KK:配信と字幕の遅延?全然わからない。リアルタイムで修正しながらやってもらってるからこれが普通なんだろうと思ってるから。

すけ:そこは気にしたことなかった。
画面の配置の話でいくと、YouTubeだと、限界値が今のあれですけど、Twitchの字幕だとすごくいい感じに出る仕様で。

mayca:あれは個別に設定でやれるんだったかな。

すけ:ああいう感じにできればいいと思うんですけど。

mayca:ただ、アプリ(プラットフォーム)の設定で出す字幕では、修正ができないから、そこはまた用途が違ってくるのかなと私は思います。UDトークは専門用語の辞書登録ができるから。「Dead by Daylight」とかパーク名とか、キャラ名もちゃんと出てくるっていうのが最大のメリットなんですよね。それを登録するまでが大変かな。
UDトークはね、準備が70%なんです。そこさえ乗り切ってしまえば後は、慣れてしまうだけなので。

しあん:予算面などはお聞きしてもいいのかな?

KK:そこは、あー。

すけ:KKのポケットマネーです。

mayca:外部に応援をお願いしている以上、無料でというわけにはいかなくて。ボランティアでできるお仕事だとは思って欲しくない(笑)なのでそこはお二人が納得いただける金額で、落ち合いました。

KK:特にYouTubeの収益があるわけでもないので、全部ポケットマネーで(笑)

しあん:じゃあもっとDCKが広まって、収益化できるようになってもらって、お給料上げてもらわなきゃなりませんね(笑)

KK:登録者が増えてくれればいずれは…(笑)

最後に

しあん:最後に、今後の展望などをお聞かせ下さい。

KK:今後も今まで通りどんどん大会を開いていきます。字幕を付ける大会も少しずつ増やして行きたいなと。

すけ:無理せず、続けて行きたいですね。

KK:字幕はまだね、準備段階といいますか、立ち上げ段階なのでね。

すけ:いろんな場面でね、ゲームだけじゃなくて。

しあん:みんなうかつに字幕つけてくれていいのにね(笑)

すけ:知らないんだと思います。

KK:本当に。知ってたら何かやってくれそうな感じするもんね。芸能人とか声優さんとか。

すけ:広まっていけばいいね。

KK:DCK運営はちょっと無理しなきゃいけない来月になりそうで頭を悩ませてますけどね(笑)

※インタビュー当時は、コラボ企画などの大きな大会を4つも控えてらっしゃる状態でした。

しあん:お忙しい中、ありがとうございました!

KK・すけ:こちらこそ貴重な機会をありがとうございました。

まとめ

この後、最近もリアルタイム字幕をつけた大会が開かれました。こちらのアーカイブもあわせてお楽しみ下さい。

インタビュアー(しあん)としては、すべてのエンタメ配信に当然のようにリアルタイム字幕がつけばいいと願っています。

リアルタイム字幕に興味を持たれた方はぜひ、ご連絡くださいね!

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しあん

不安障害・うつ・内蔵虚弱・高校の時に捻挫したのを悪化させてから右足首があまり曲がらず近年膝も悪くなってきたものの、どれもこれも手帳が取れるような状態ではないとほったらかされて、気がつけば引きこもりになってしまってた専業主婦。岡山の片隅在住。

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