eスポーツ大会 イベントレポート

「一緒に遊んで、笑って、楽しむ」ことが人をつなぐ‐杉並区「ふれあい スポ・レク体験会」参加レポート

こんにちは!筑波大学国際総合学類4年生のかのこです。
2025年3月16日、杉並区で開催された「ふれあいスポ・レク体験会」に参加してきました。
私は、2月に受けた「人類学特講」で学んだePARAの取り組みにとても興味が湧いたので、授業後に同社に連絡を取り、その際にご紹介いただいた、ユニバーサルスポーツ体験ができるというこのイベントに足を運んでみることにしました。
今回は、その魅力や意義を伝えるべく、実際に体験させていただいた内容を、ひとりの大学生の視点からレポートします。

このイベントは、高齢者から子どもまで、障がいの有無を問わず、誰もが楽しめるユニバーサルなスポーツ体験の場として企画されていました。私が体験したeスポーツも、そのコンセプトを象徴するプログラムのひとつです。会場には、小学生のお子さんから私と同じ大学生、さらには社会人やご年配の方まで、実に幅広い年代の参加者が集まっていました。年齢、性別、障がいの有無といった違いを超え、アクティビティを通じて、自然と交流が生まれていたのがとても印象的でした。

◆関連情報
ePARA活動記録 杉並区「ふれあいスポ・レク体験会」でeスポーツ体験会を行いました
杉並区公式情報サイト すぎなみ学倶楽部 「ふれあいスポ・レク体験会」

杉並区主催「ふれあいスポ・レク」のパンフレット1
杉並区主催「ふれあいスポ・レク」のパンフレット2

eスポーツとは?「誰もが楽しめる、新しいスポーツのかたち」

eスポーツとは、「エレクトロニック・スポーツ」の略で、コンピューターゲーム・ビデオゲームで対戦する次世代の競技です。年齢・性別・障がいを問わない性質から、社会課題の解決に貢献できる「新しいスポーツ競技」として、世界で注目されています。

「ふれあいスポ・レク体験会 eスポーツ体験」では、eスポーツブースが設置されており、様々なタイトルを体験させていただきました。

体験会に参加して得た、たくさんの気づき

画面越しでも生まれる絆   eサッカー「FC24」体験

ここでは、eスポーツチーム「ePARAユナイテッド」のメンバーの方々と一緒に「FC24」をプレイしました。「ePARAユナイテッド」は、メンバーが企画・運営と並行しながら、eサッカープレイヤーとしても躍動するeサッカーチームで、所属メンバーは全員車椅子ユーザーだそうです。

「ふれあいスポ・レク」のeスポーツコーナーでePARAユナイテッドと「FC24」をプレイする様子。車椅子ユーザーのプレイヤーと一般参加者が一緒にプレイしている。
ePARAユナイテッド椅子メンバーと「FC24」をプレイ

ゲームが得意とは言えない私にとって、はじめはボールをパスするのも一苦労。しかし、メンバーの方々にやさしく操作のコツを教えていただくうちに、徐々に感覚をつかみ、ついに1点を決めることができました。その瞬間、周囲の参加者やプレイヤーたちが一緒に喜び、自然と笑顔と歓声があふれる場面となりました。

その場ではじめて出会った方と、即席のチームを組んでの対戦でしたが、ゴールが決まれば自然とハイタッチが生まれ、「やった!」と声をかけ合い、ゲームを終える頃にはすっかり打ち解けていました。画面越しのプレイでありながらも、まるで実際のスポーツと同じように、人と人の距離が一気に縮まる瞬間を感じることができました。

また、eサッカーのエリアには運営協力として、「杉並スポーツ・カルチャー共同事業体」(J1の強豪チーム・FC東京が共同事業体を組み、指定管理者として、杉並区内にあるスポーツ施設の運営を行っています)が参加されていました。FC東京のユニフォームを着た佐々木さんがJリーグの情報を補足してくれることで、サッカーに詳しくない人でも楽しみ方が増える空間になっていました。

eスポーツには「スポーツ」が本来持つ、人と人をつなぎ、絆を生み、心の壁を取り払うというポジティブな力があります。加えて性別・体格・身体的特徴といったフィジカルな条件にとらわれず、誰もが同じフィールドで競い合える特有の魅力があることを、改めて体感できました。この多様性と包容力こそが、eスポーツが「次世代のスポーツ」として、世界的に注目されている理由なのだと、体験を通して深く実感できました!

音だけでプレーする「音戦宅球」体験!視覚に頼らないeスポーツの可能性

eスポーツ体験のなかでも、特に印象に残ったのが、サウンドスポーツゲーム「音戦宅球」の体験です。
(音だけを感じてプレーする新感覚のサウンドスポーツアプリ▶︎https://tanys.or.jp/app/

このゲームは、スマートフォンアプリと首にかける専用の音響デバイスを使って、音だけを頼りに、卓球のような対戦を楽しむというユニークな仕組みが特徴です。

音だけで卓球のようなスポーツを楽しめるアプリゲーム「音戦宅球」のスマホ画面と、パンフレット、首にかける専用の音響デバイスの写真
音を頼りにプレイする「音戦宅球」

ゲーム中は、左右のスピーカーからランダムに音が発せられ、その音の大小によって「ボールが左右どちらにあるのか、どれくらい近づいてきているか」を把握します。音は小さくはじまり、徐々に大きくなっていくことで、まるでボールが遠くから自分に向かって飛んでくるようなリアルな感覚が味わえます。

難しいのが、タイミング。音を頼りに「今だ!」と思った瞬間に、ボタンを押してボールを打ち返しますが、早すぎても遅すぎても空振りしてしまいます。私は一番やさしいレベルで何度も挑戦し、ようやく1勝できました。

このゲームは、視覚障がいのある方も楽しめるように設計されたものです。しかし、視覚障がいがない方にとっても、「音だけを頼りに動く」という新鮮な体験ができ、非常に興味深いゲームでした。見える/見えないにかかわらず、誰もが同じルールのもとで対等に楽しめるという点で、まさに“共生社会”のあり方を感じさせるゲームだと感じました!

デフスポーツ体験で感じた、音のない世界の奥深さ

今回の「ふれあいスポ・レク体験会」では、デフリンピック東京開催にちなみ、デフスポーツ体験ブースも数多く設けられていました。
「デフリンピック」とは、デフ(Deaf=耳がきこえない)+オリンピックを組み合わせた名称で、聴覚障がいのあるアスリートのための国際的なスポーツ大会です。オリンピックと同様に4年に1度開催されます。なんと、初開催から100周年となる第25回デフリンピックは、2025年11月に東京で開催されることが決定しています。日本での開催は今回が初となり、大きな注目が集まっています。

そのデフリンピックを間近に控えるなか、体験ブースには、デフリンピック日本代表の卓球選手である亀澤理穂(かめざわりほ)選手・亀澤史憲(かめざわふみのり)選手と一緒にデフ卓球を体験できる、貴重な機会が設けられていました!

体験では、外部の音を遮断するヘッドフォンを装着し、“音が聞こえない状態での卓球”を実際にプレイしました。普段なら頼りにしているピンポン玉の弾む音や相手の足音が聞こえないなかでのプレイは、感覚が少しずれるような不思議な体験でした。視覚や反射神経だけを頼りにする難しさと、それを乗り越える集中力の高さに驚かされました。

そんななかで、理穂選手から「うまいね!卓球やってたの?」と笑顔で声をかけていただき、とても嬉しく、緊張が一気にほぐれました。選手との直接の交流を通じて、競技としてのレベルの高さだけでなく、人としてのあたたかさにも触れられた、心に残る体験となりました。

11月の東京2025デフリンピックには、お二人とも出場されるとのこと。ぜひみなさんも、テレビや現地で応援しましょう!

現役のデフリンピック卓球選手である亀澤理穂選手と亀澤史憲選手のツーショット写真
亀澤史憲選手(左)・亀澤理穂選手(右)
亀澤理穂選手と亀澤史憲選手を紹介するボードの写真。プロフィールや写真、獲得したメダルが展示されている。
獲得したメダルも展示されていました!

デフリンピック仕様のスタートランプで陸上競技を体験!

体験会では、デフリンピックで実際に使用されているスタートランプ(視覚信号装置)を用いた、陸上競技のスタート体験にも参加しました。

これは、音の代わりにランプの色変化によって、スタートの合図を伝えるもので、聴覚に頼ることなく競技が行えるよう設計されています。足元に設置されたランプの光が変化する瞬間に、スタートの反応をするという仕組みです。

私は水泳部だったこともあり、スタート時のリアクションタイム(反応速度)には強い関心があります。今回の体験では、あのレース直前のピリッと張り詰めた緊張感を思い出しながら、スタートランプを凝視。視覚だけに集中する状況は、想像以上に緊迫感があり、体験しながらも思わず呼吸を忘れるほどでした。

デフ陸上体験ブースの様子
変化するスタートランプ
デフリンピックのポスター
デフリンピックポスター

改めて実感したのは、極限の緊張状態で、ひとつの感覚を最大限に研ぎ澄まし、正確な動作を行うということの凄さです。すべてのデフアスリートの方々に、心から尊敬の念を抱きました。

ちなみに、同じく障がい者スポーツの国際大会であるパラリンピックは今年で75周年を迎えることから、デフリンピックの方が25年も歴史が長いことがわかりますね!
しかしその一方で、日本国内でのデフリンピックの認知度はわずか16.3%(日本財団パラスポーツサポートセンターによる調査、2021年)で、まだまだ広くは知られていません。

私自身も、この体験会を通して初めて触れた世界が多くありました。だからこそ、この記事をきっかけに、一人でも多くの方にデフリンピックという大会の存在と、その意義を知っていただけたら嬉しいです。
デフリンピック公式サイト https://deaflympics2025-games.jp/main-info/about-deaflympics/

多様なスポーツ体験を通して感じた“インクルーシブ”の本質

デフリンピックやeスポーツのほかにも、今回のイベントでは、さまざまなアクティビティに挑戦できました。たとえば、フィンランド発の競技モルック、卓球バレー、ふわふわのボールを”マジックテープつきポンチョ”を着た鬼に投げてくっつけるペガーボール、手話ダンスなどのバラエティ豊かなプログラムが用意されており、どれもが「楽しさ」と「誰でもできる工夫」にあふれていました。

卓球台を囲んで卓球バレーをしている様子
木の板のラケットを持ってピンポン玉を打ち返す卓球バレー

なかでも印象に残っているのが、「ePARAユナイテッド」のメンバーであるアフロ選手ともえ選手と一緒に参加したモルック体験です。モルックは、木のピンに向かって木の棒(モルック)を投げ、得点を競う競技で、私は今回が初挑戦でした。

実際にやってみると、狙ったピンに当てるのは予想以上に難しかったです。ピンの数字を考えながら、倒していくので思考力と集中力が試される“頭脳戦”のような一面もあり、まるでパズルを解くような感覚で楽しめました。

一緒にプレイしたお二人は車椅子ユーザーでしたが、投げる際のコントロールが難しい場面もありつつ、それを補って余りある見事なスコアを何度も出しておられ、本当に驚かされました。
何より印象的だったのは、プレイ中、”障がいがあるかどうか”という意識が自然と薄れていたことです。ただ純粋に、「一緒に遊んで、笑って、楽しむ」という、スポーツが本来持っている「人をつなぐ力」を改めて実感できた瞬間でした

モルックをプレイするイーパラユナイテッドのメンバー
モルックをプレイするアフロ選手ともえ選手 

最後に

今回の「ふれあいスポ・レク体験会」を通じて、eスポーツやデフスポーツが持つ可能性に感動を覚えました。

eスポーツやデフリンピックのような場では、すべての人が自分らしくオープンにいられ、たとえ困難があっても、最高の結果を出すことができる、そんな力強さを感じます。

障がいの有無、ジェンダー、年齢、体格差といったあらゆる要素をフラットにし、誰もが同じスタートラインで全力で楽しむことができるeスポーツは、これからの社会で大きな影響力を持っていくこととなると思います。

この記事を通じて、少しでも多くの方にeスポーツやデフリンピックの魅力が届き、関心を持っていただけたら嬉しいです。

そして、2025年11月に東京で開催される第25回デフリンピックでは、選手皆さんのご活躍を、心から応援しています。
これからも、“誰もが楽しめるスポーツのかたち”を、自分なりに応援し続けていきたいと思います。

イーパラのメンバーを中心とする約10人の集合写真
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かのこ

筑波大学・現役4年生。大学の特別授業で知ったePARAの活動に惹かれ、自ら連絡をとってイベントに参加。興味を持ったことには積極的に関わり、心が動いた場所にはフットワーク軽く出向くことを大切にしている。

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