2026年9月16日(水)、筑波大学で開催された、eスポーツに関する国際的な学術・産業カンファレンス「Esports Research Network Conference 2026(ERNC2026)」に、株式会社ePARAの社員で全盲のeスポーツプレイヤー・NAOYAが登壇しました。
登壇した「Business Session 2」では、eスポーツを通じた社会参加や国際交流、政府・自治体と民間企業の連携について議論。当事者の経験とePARAの実践から、人と社会をつなぐ可能性を紹介しました。


国際的な外交・政策の観点からeスポーツを考える
セッションでは、eスポーツを、さまざまな用途を持つ「スイスアーミーナイフ」にたとえ、競技の枠を超えた活用について意見が交わされました。Cloud9によるファンとの交流や大学との連携、FITGMRによる健康・人材育成の取り組みなどを通じ、行政と民間が互いの知識や強みを持ち寄る重要性が示されました。
また、大会への投資だけでなく、地域や既存のコミュニティとの信頼関係、明確な目的、継続的な協力が必要であることを確認。質疑では、国際的な事業展開に伴う倫理的な課題や、スポンサーへの依存を抑えた事業の持続可能性にも議論が広がりました。
国際的な学会における登壇はNAOYAにとって初挑戦となり、知見・経験の豊富な3名の方と情報共有・意見交換ができる貴重なディスカッションの場となりました。会場のモニターにはAI翻訳・通訳サービス「ポケトーク」による日本語・英語の字幕が流れ、NAOYAも「ポケトーク」の音声を聞きながら議論へ参加しました。

ERNC2026「Business Session 2」登壇者情報
| 登壇者氏名 | 所属 | 肩書 | 紹介文 |
|---|---|---|---|
| Jordan Whitaker | The College of William & Mary(米国ウィリアム&メアリー大学) | Director of Esports(eスポーツ部門責任者) | eスポーツ教育と学生のキャリア形成、国際交流を推進。国家安全保障分野での経験と公共政策の知見を生かし、大学と産業界をつなぎながら異文化理解や官民連携に取り組む。本セッションではモデレーターを務め、eスポーツの国内政策・外交政策への活用と社会的価値を多角的に掘り下げた。 |
| Emily Gonzalez-Holland | Cloud9 Esports | Senior Director of Operations(運営部門シニアディレクター) | 米海軍の訓練・シミュレーションに関わる心理学研究を経て、eスポーツ業界へ。10年以上の業界経験を持ち、Cloud9で事業運営や長期戦略、パートナーとの連携を担う。東京を拠点に日本市場の発展にも注力し、本セッションでは官民連携、ファンとの関係づくり、文化交流の重要性を語った。 |
| Kristin Anderson | FITGMR | CEO & Co-Founder(最高経営責任者・共同創業者) | 投資銀行業務を経て健康・ウェルネス分野へ転身。科学的知見に基づくトレーニングを通じ、eスポーツ選手の心身の健康と競技力向上を支援する。各国政府や教育機関、競技団体との連携による選手・指導者の育成にも取り組み、本セッションでは官民の信頼関係と継続的な支援の重要性を語った。 |
| NAOYA | ePARA | eスポーツプレイヤー・ナレーター・声優・エンジニア | 先天性全盲のeスポーツプレイヤー。音を頼りに『ストリートファイター6』をプレイし、ナレーター・声優・エンジニアとしても活動。障害当事者の経験を生かし、ゲームのアクセシビリティ向上と、障害の有無を超えた交流の場づくりに取り組む。 |

ゲームが交流の入り口となり、挑戦を後押しする
NAOYAは、幼少期から音を頼りにゲームを楽しみ、現在は『ストリートファイター6』で活動する経験を紹介。当日はポケトークを活用しながら、海外の登壇者や参加者に日本語で思いを伝えました。
障害のある人との交流に戸惑いがあっても、まず一緒にゲームを楽しむことで、自然に会話が生まれる。日々の実践を通じて、人と人の間にある壁を低くする可能性を語りました。
さらに、身体の状態に合わせたコントローラーを自ら開発し、海外大会への挑戦を実現した仲間などの事例を紹介。夢に再び挑戦する機会を生み出す力があることを伝えました。
一方で、参加しやすい環境を整えるには、障害特性に応じた機材やサポート人材が必要です。自治体や政策に関わる方々にも体験の場へ足を運んでいただき、当事者の姿や声から理解を深めていく大切さを共有しました。
Hawk Gaming Group社との共創で、世界に向けた挑戦へ
国際連携の事例として、サウジアラビアのゲーム・eスポーツ企業、Hawk Gaming Group社との取り組みも紹介しました。
ePARAは2025年9月24日、大阪・関西万博会場内の「日・サウジEXPO投資フォーラム」で同社とMOU(覚書)を締結。
バリアフリーeスポーツを通じ、日本とサウジアラビアをつなぐ連携を進めています。
今回のセッションでは、「産油国石油精製技術等対策事業費補助金」(経済産業省資源エネルギー庁)を活用した「ePARA × Saudi Vision 2030」に触れつつ、Hawk Gaming Group社との戦略的パートナーシップやEVO 2026内での共創、今後の相互交流への展望を紹介しました。
また、ディスカッション内では、ePARA社員・細貝輝夫がePARA社としての取り組み内容の一部をご紹介しました。
ePARAは、障害当事者を主役とした事例づくりと発信を積極的に行っています。その事例が世界に少しずつ伝播していくことで、将来的にEsports World CupやEsports Nations Cupなどの国際的な舞台がバリアフリーに近づいていく可能性なども補足しました。
ePARAはこれからも、当事者の経験と現場の実践を国内外へ届け、研究者、企業、行政の皆さまとともに、一人ひとりの可能性が広がる社会づくりに取り組んでまいります。
研究と実践をつなぐ国際会議「ERNC2026」とは?
ERNC2026は、2026年9月15日(火)から17日(木)まで、筑波大学大学会館で開催されたeスポーツの国際会議です。
大会テーマは「Bridging Gaming Heritage and Esports Futures: Transformations, Traditions, and Tomorrow」。ゲーム文化の蓄積とeスポーツの未来をつなぐことを掲げ、今回は日本を含めた30か国から163名の研究者や教育関係者、企業関係者が参加し、eスポーツに関する知見を共有しました。
3日間のプログラム概要は以下のとおりです。
| 日程 | 主なプログラム |
|---|---|
| 9月15日(火) | 開会挨拶、ゲーム企業・公的機関の役割を考える討論、日本のeスポーツの歩みと未来に関する基調講演。健康、心理、競技パフォーマンスなどの学術発表。 |
| 9月16日(水) | 国内・外交政策への活用、学術界の役割を考える討論。ゲーム文化とデジタル社会に関する基調講演。法律・倫理、コミュニティ、メディア、事業などの学術発表。 |
| 9月17日(木) | 草の根の教育活動と選手のキャリアに関する討論、コミュニティを中心とする発展についての基調講演。教育、AI、多様性、国際交流、持続可能性などの学術発表、閉会挨拶。 |
NAOYAが登壇したセッション
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 日時 | 2026年9月16日(水)11:00~12:30 |
| 会場・区分 | 筑波大学大学会館 Main Hall/Business Session 2 |
| テーマ | eスポーツの多面的な可能性――国内政策・外交政策への活用(原題:Esports – A Swiss Army Knife: Government Use for Domestic & Foreign Policy Objectives) |
| モデレーター | Jordan Whitaker氏(The College of William & Mary, Director of Esports) |
| 登壇者 | Emily Gonzalez-Holland氏(Cloud9 Esports)、Kristin Anderson氏(FITGMR)、NAOYA(ePARA) |
| 主な論点 | 官民連携、教育・健康、アクセシビリティ、国際交流、地域コミュニティ、持続可能な事業づくり |
謝辞
今回、対話を導いてくださったJordan Whitaker氏(The College of William & Mary, Director of eSports)、本会議と登壇の機会を支えてくださった篠原翼氏(筑波大学、西岡 佑氏(ポケトーク)をはじめ、ご尽力いただいた皆さまに心より御礼申し上げます。
GAKU社の岡本紗代氏とは、会期中の面会でHawk Gaming Group社との連携も含めた話題をできたことが光栄でした。今後の連携が楽しみです。
講演の準備段階では、ポケトークを活用しながら、篠原翼先生・Jorden氏・西岡氏と協議を重ね、無事に本番を迎えることができました。
とくに篠原翼先生には、登壇にあたりまして多大なご配慮と調整の労をとっていただきました。
この貴重な機会のご提供に心より御礼申し上げます。




